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製造業にとっての「ニューノーマル」は何か、8つの特徴ポストコロナの製造業IT戦略(1)(1/2 ページ)

COVID-19は個人の活動だけでなく、あらゆる業種の企業に規模を問わず影響を与えています。本連載では、「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考えていきたいと思います。第1回の今回は、まずCOVID-19が製造業に何をもたらしたかについてみてい行きます。

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 2020年は、世界中の人々の行動や価値観を大きく変えてしまった大きな“転換点”の年として記憶されそうです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は個人の活動だけでなく、あらゆる業種の企業に規模を問わず影響を与えています。これまで当たり前に続けていたビジネスの在り方を見直さざるを得ない状況がさまざまな領域で生まれています。直接的に大きな影響を受け続けているサービス業や交通機関などだけでなく、製造業も今後を見据えるとどういう形に変化していく必要があるのかを考えなければならない局面に立たされています。

 本連載では、「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考えていきたいと思います。第1回の今回は、まずCOVID-19が製造業に何をもたらしたかについてみていきます。

COVID-19が製造業にもたらす影響

 COVID-19により、ロックダウンなど世界各地で経済活動を止めて感染拡大を抑える動きが本格化した2020年4〜6月期の国内総生産(GDP)は前期(1〜3月)比7.9%減、年率換算では28.1%減となりました。これは事実上、戦後最悪の落ち込みとなります。

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COVID-19では4〜6月期のGDP28.1%減と「戦後最悪」の結果となった(クリックで拡大)出典:内閣府資料を基に筆者が作成

 一方で、企業の業績を見てみると、COVID-19の影響で大きなマイナス影響は出ているところが多いものの、プラスになっている部分もあり、コロナ禍で全てがマイナスになっているとはいいがたい状況が生まれています。そこで、コロナ禍が製造業のビジネスにどういう影響を与えているかという点について、米国に本社のある消費財グローバルメーカーの決算結果から読み解いていきたいと思います。全世界でビジネスを展開しているこの企業の業績はある意味ではグローバル景気状況を推測できる指標となると考えます。

 その中で、コロナ禍の影響が大きく反映された業績から、あらゆる製造業に当てはまるのではないかと考えられる重要な8つのポイントを見つけることができましたので、それをまとめてみます。

1.売上高への打撃は予測を大きく上回る

 この企業の業績は、事前に悪化することが予想されていたものの、その実績は当初予測をはるかに下回るものとなりました。売上高は前年同期比38%減少しましたが、これはアナリストが厳しめに予測した数値よりもさらに下回る数字となっていました。各国のロックダウン(緊急事態宣言)により、消費が予測よりも大幅に減少しました。

 これは自粛により一時的に控えたために減少したことに加え、世界中で屋外の活動が大きく制限されたことで、本来さまざまな活動により使われる予定だったモノが使われないということになり、こうした需要が減少した影響を受けたものです。これらが売上高に多大な影響を及ぼした要因として分析されています。

2.オンライン売上高の急増

 ただ、ロックダウンによるさまざまな活動が制限された影響が全てにおいてマイナスだったわけではありません。オンラインでの販売は大きく伸びました。この企業のケースでもオンラインでの販売の伸びがトレンドとして際立っていることが見て取れます。オンライン販売が75%も急増し、オンライン販売が全体売り上げの3割を占めるまでに至ったといいます。

 当初、この企業では2023年までにオンライン売上高比率を3割まで上げる目標を立てていましたが、COVID-19のおかげで、3年も早くその目標を達成できました。こうした状況を踏まえて、この企業ではオンライン売上高比率を半分以上とするという新たな目標を発表しています。

3.オンライン販売のコストは高い

 このように、オンラインでの販売比率が上がるのは良いことに見えますが、こうした状況になったからこそ、見えてきたものがありました。「オンライン販売のコストが高い」ということです。例として挙げている企業では、コロナ禍期間を含む決算では、想定以上の赤字に転落しました。これにはロックダウンにより販売網が8週間稼働しなかった他受注キャンセルなどの影響があった点が大きかったといいますが、これらの結果は事前に予測できていたといいます。

 では「何が予想外だったのか」というと、オンライン販売のコストが想定外だったというのです。特に、輸送コストと返品のコストが大きく上振れした結果、売上高総利益率は前年の45.5%から、37.3%になり、実に8.2%減少することになりました。オンライン販売は売上高には貢献しましたが、利益には貢献しなかったといえるのです。

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