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製造業にとっての「ニューノーマル」は何か、8つの特徴ポストコロナの製造業IT戦略(1)(2/2 ページ)

COVID-19は個人の活動だけでなく、あらゆる業種の企業に規模を問わず影響を与えています。本連載では、「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考えていきたいと思います。第1回の今回は、まずCOVID-19が製造業に何をもたらしたかについてみてい行きます。

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4.サプライチェーンが破壊された

 COVID-19の影響で、物流やサプライチェーンは壊滅的な状況になりました。卸や小売り店は一部で業務が止まり、物流網も大混乱に陥りました。こうした状況が何をもたらしたかというと、メーカー側の在庫量の大幅な拡大です。例とした企業でも、卸への出荷量も50%ほど減少し、その結果、在庫が31%も急増(74億ドル)するに至ったとしています。

5.オフライン販売はまだ回復していない

 最近では再びCOVID-19の感染再拡大によりグローバルで再びロックダウンするような動きが出ていますが、ロックダウンが一時的に解除された6〜8月の状況を見ても、オフラインでの販売が中心の小売店の売上高は前年レベルに達していない状況が続いていました。当時は、全世界のオフラインショップは90%が営業を再開できており、北米は85%、ヨーロッパ、アフリカは90%、南米・アジアは65%のショップが営業を再開した状態であるにもかかわらずです。一方、同時期のオンライン売上高は前年同期比で2倍以上になっているところがほとんどです。オフラインの販売が今後どうなるのかは見ていかなければならない点だと考えます。

6.未来の予測は難しい

 例として挙げたこの企業では決算発表時に業績予測を出すのを諦めました。未来の不確実性がますます高まる中、CEOからは「おそらく売上高は前年度並みか少し上回る程度になるだろう」ということだけが述べられました。今なお状況が動く中で、正確な数字は出すことができなかったのです。こうした予測不能な状況下で企業としてどのようにふるまうのかが求められるようになっているといえます。

7.企業は大量のキャッシュをため込んでいる

 米国の多くの企業は債券発行、銀行からの借り入れ、資産償却などで数千億のキャッシュを確保しています。しかしながら、先の見通せない状況の中で、そのキャッシュを活用するのではなく、握りしめている状況が続いているのです。例とする企業では、2020年5月末時点で前年同期に比べ、41億ドルも多い125億ドルのキャッシュあるいは流動性資産を確保しています。先述した通り、先行きが不透明な中で、企業としてさまざまな危機がどのような規模で訪れるかが読めない中、まずは手元資金を潤沢にしたいという意思が働いているように見えます。

8.株価は底値から60%急上昇

 例として挙げた企業の株価は、底値となった2020年3月には62ドルまで下がりましたが、同年9月中旬には115ドルレベルまで回復しました。業績は前年をはるかに下回る状況でありながら、株価は前年同期比22%上昇したレベルになったのです。こうした理由の1つとして、米国中央銀行からCOVID-19対策として資金投入が行われたことがあるとされています。

変化に素早く対応できなければ生きていけない時代

 ここまで、米国の大手製造業を例に、コロナ禍の影響とそれが製造業に何をもたらしたかについて、紹介してきました。日本の製造業にもこうした影響を肌で感じている人は多いのではないでしょうか。

 まとめますと、売上高への打撃は想定よりも大きく、一方で顧客のオンライン化は急速に進んでいます。顧客が商品を購入する際のマーケットへのアプローチは大きく変わったといえるでしょう。営業のコンタクトなしで購入することが増え、オンライン化やマルチチャンネルに対応が一気に必須になりました。

 皮肉にも、COVID-19がデジタルトランスフォーメーションを推進したともいえるのです。そもそもコロナ禍自体が予測できなかったもので、ニューノーマルはどのように変わるのかを予測するのはさらに難しいでしょう。しかし、何かが起こればマーケットの状況はいとも簡単に変わるということが今回証明されました。こうした変わる環境に合わせて迅速、柔軟に対応することができなければ、生きていけない時代になってきたということだけは確かでしょう。

 次回は危機に対しての対応について、製造業の企業にとって短期・中長期的にどのようなアプローチになるかを説明します。

≫「ポストコロナの製造業IT戦略」のバックナンバー

筆者紹介

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島田祥元(しまだ あきもと)
NTTデータ グローバルソリューションズ
ビジネスイノベーション推進部 世界戦略室 室長

 欧米の先進国での経験を生かし、先端トレンドソリューションを日本で活用可能な視点で実践的に適応、支援を進めている。米国(7年)、英国(2年)でコンサルタントとして活動。外資系コンサルティング企業を経て、現職。米国、欧州、アジア、南米など多数の地域で、プログラムマネジメント、海外システム導入、オフショアチームマネジメント、グローバルAMO、買収フィージビリティスタディー・買収後業務・システムインテグレーション、ソフトウェアソリューション製品開発など、幅広い案件を手掛ける。


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