NTNが社長交代、新社長の鵜飼氏は“しゃべる軸受”の開発を目指す:製造マネジメントニュース
NTNは2021年年4月1日付で実施する代表執行役交代について発表。現在、同社 取締役 代表執行役 執行役社長 CEOを務める大久保博司氏が退任し、取締役 代表執行役 執行役常務の鵜飼英一氏が新たな代表執行役 執行役社長 CEOに就任する。
NTNは2021年2月5日、同年4月1日付で実施する代表執行役交代について発表した。現在、同社 取締役 代表執行役 執行役社長 CEOを務める大久保博司氏が退任し、取締役 代表執行役 執行役常務の鵜飼英一氏が新たな代表執行役 執行役社長 CEOに就任する。同日開いたオンライン会見で、鵜飼氏は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に向けた今期(2020年度)の危機対応期間で、財務体質改善の方向性が見えてきた。2021年4月から始まる新たな中期経営計画を着実に進めるとともに、グローバル化に柔軟に対応する若手経営陣の育成や組織体制の強化を行うなどして、『NTNは変革した』と言ってもらえるように取り組みたい」と述べた。
鵜飼氏は1957年生まれの64歳。1980年にNTNに入社した後、約30年間は製造や品質保証といったモノづくり関連の業務に従事してきた。その後2011年からの10年間は、役員として、製作所長、海外事業の総支配人、産機事業、アフターマーケット事業の担当などを歴任。「特にAESANでは、シンガポール、タイを拠点にオーストラリアからインド、中東に至るまでの地域で販売と生産を担当し、ベアリングメーカーの経営そのものを最前線で経験することができた」(鵜飼氏)という。また、台湾の東培工業や、インドネシアのアストラグループ傘下のIGP(PT. Inti Ganda Perdana)などとの海外合弁事業の立ち上げにも携わっている。
マインドセットは「SQCCD」、研究開発は「軽高低」+「DX」
NTNは2018〜2020年度にかけて中期経営計画「DRIVE NTN100」を進めているが、最終年度の2020年度はCOVID-19の影響に対応するため危機対応期間と定め、事業継続と損益分岐点の引き下げを目的とした施策を展開している。
現社長の大久保氏は「業績的には大変厳しい状況だが、危機対応期間にさまざまな施策を進めることで財務体質改善の方向性は見えてきた。2021年4月から新中期経営計画を始めるとともに、2018年に創業100周年を迎えたNTNの次の100年に向けてさらなる変革を進められるよう、新たな体制が必要になると考え社長交代を決めた」と説明する。なお、大久保氏は、社長退任後は執行役から外れるものの取締役にとどまり、鵜飼氏をトップとするNTNの執行体制を監査する立場になるという。
鵜飼氏は社長就任に向け、製造業であるNTNの従業員が持つべきマインドセットとして「SQCCD」を掲げた。Sは安全(Safety)を意味しており、従業員、顧客、協力会社の安全を守っていく。Qは質(Quality)のことで、アウトプットを次のアクションにつなげていくような仕事の質や、製品の品質、教育や訓練によって向上する人の質を指す。2つのCはコンプライアンスとコストであり、「コストは企業活動や社会貢献の源泉であり、従業員一人一人がコスト意識を持つ必要がある」(鵜飼氏)という。そしてDは納期(Delivery)になる。
また、研究開発では、キーワードとして「軽高低」+「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を重視した生産技術や製品技術の開発を推進する。軽高低は、軽量、高剛性、低トルク、低振動、低コストを示し、そこにDXを組み合わせていく。具体的には5つのテーマがあり、軸受や等速ジョイントなどの基盤製品のさらなるエネルギーロスの低減と極小化、自動車や産業機械の電動化に伴う最適商品の提供、自然エネルギーや水素など環境負荷低減エネルギー関連商品の開発加速、サプライチェーンを含めたモノづくりにおけるCO2排出の大幅な削減、センサーを用いた設備状態監視やビッグデータによる予防保全サービスの提供が挙がっている。
製造業の基本的な業務の流れである「買う」「作る」「売る」についても、それぞれで見直しを進めていく。「買う」では調達改革、「作る」では生産改革を進め、「売る」については「モノ売り」加えた「コト売り」が可能になる状態監視サービスを進化させるセンサーの開発に注力する考えを示した。鵜飼氏は「例えば“しゃべる軸受”“考える軸受”を実現していきたい。今の軸受と同じ体積の中に、センサーや発電の機能などを持つマイクロチップを組み込んでさまざまな情報を発信できるようになれば、既存顧客は軸受を置き換えるだけで状態監視サービスを利用できるようになるだろう」と強調する。
仕事の取り組み姿勢としては「ポジティブ」「ロジカル」「着眼大局、着手小局」を挙げた。課題解決である仕事を行う上で、起こったファクトをポジティブな方向から見て解決していき、ロジカルであるために数値化を図り定量的に物事を進める。着眼大局は状況を俯瞰するため、着手小局は小さな問題をおろそかにしないため、どんな大きな組織も小さな組織の集合体であると考えるためだという。
インホイールモーターの事業化は凍結
なお、会見の質疑応答の中で、NTNがEV(電気自動車)向けに注力してきたインホイールモーターについて、開発は継続するものの事業化は凍結する方針であることが明らかになった。鵜飼氏は「これまで開発と提案を続けてきたが時期尚早だったかとみている。現在のEVの主流は、車体にモーターを搭載しジョイントなどを使って車両を駆動する方式であり、インホイールモーターは競合メーカーも含めてなかなか進展しない状況にある。ただし、将来的には必要となる技術なので開発は続けていく」と述べている。
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