熱流束を検知して工作機械主軸の焼き付き防止、NTNのセンサー内蔵軸受ユニット:JIMTOF2018
NTNは、「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」において、マシニングセンタなど工作機械主軸用のセンサー内蔵軸受ユニットを参考出品するとともに、独自開発のパラレルリンク構造を用いた手首間接モジュール「i-WRIST(アイリスト)」のデモを披露した。
NTNは、「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」(2018年11月1〜6日、東京ビッグサイト)において、マシニングセンタなど工作機械主軸用のセンサー内蔵軸受ユニットを参考出品するとともに、独自開発のパラレルリンク構造を用いた手首間接モジュール「i-WRIST(アイリスト)」のデモを披露した。
同社は工作機械におけるIoT(モノのインターネット)活用に向け、重要部品である軸受の状態をより素早く的確に検知できるセンサーを内蔵した軸受製品の開発を進めている。今回出品した工作機械主軸用センサー内蔵軸受ユニットもその1つで、2つの軸受の間にある外輪間座に、温度、振動に加えて熱流束を検知できるセンサーを内蔵した。
熱流束は、熱の移動量と方向を示すもので、温度センサーよりも熱による変化をより高い感度で検知できる。従来の工作機械主軸の状態監視は、主軸外径面に外付けしたセンサーで行っていたが、今回展示した軸受ユニットであれば、センサーの内蔵と熱流束の検知により従来比約40倍の感度で主軸内部の温度上昇率を検知できる。「外付けセンサーで温度上昇を検知したときには、既に主軸は焼き付いてしまっており交換を余儀なくされる。しかし新開発の軸受ユニットを使えば、焼き付きを未然に防止できる」(NTNの説明員)という。
この他に、センサー内蔵軸受ユニットの性能向上に向けた取り組みとして、荷重を検知できる技術も展示していた。
人間が手首を曲げるように動くパラレルリンクロボット
一方、i-WRISTは、NTNが自動車部品のドライブシャフトで培った技術を応用した製品だ※)。パラレルリンク構造を応用し、縦331×横286×高さ202mmのコンパクトなサイズで折れ角90度、旋回角360度を実現している。これにより、i-WRISTの先端に付けたカメラやディスペンサーなどを使って、人間が手首を曲げるような動きで精密な作業ができるとする。2018年6月から量産を開始した。
※)関連記事:NTNがパラレルリンクロボットに参入! 独自機構による高速性・広可動角度を訴求
展示では、外観検査用カメラを装着して、XYZステージ上の回転台に載ったミニチュアカーの全周を撮影するデモを披露した。「一般的な多関節の産業用ロボットでは難しい作業が行える。最大可搬質量は1kgなので重量物は持てないが、繰り返し位置決め精度は±0.5度なので精密な組み立て作業にも適している」(同社の説明員)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- センサーの導入コストを抑える、消耗品劣化検知技術を開発
日立製作所は、工作機械の内蔵モーターをセンサーとして活用した、消耗品の劣化検知技術を開発した。センサーの導入コストを抑え、機器の保守コスト削減に貢献する。 - その名も「スシセンサー」、横河電機がLoRaWAN対応のIIoT用センサーを発売
横河電機は通信機能とセンサー機能が一体となった小型無線センサー「Sushi Sensor」を発売する。プラント設備の振動と表面温度をオンライン監視することで保全に貢献する。 - 木材の“暖かみ”や金属の“冷たさ”が分かる、デンソーの熱流センサー
デンソーは、「MEDTEC Japan 2016」において、熱流センサー「ラフェスパ」を展示した。他社の熱流センサーと比較して4倍以上の感度で熱流を測定でき、同社の多層プリント基板技術「PALAP」により柔軟性も有している。 - NTNがパラレルリンクロボットに参入! 独自機構による高速性・広可動角度を訴求
NTNは「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)」において、独自機構を採用したパラレルリンクロボットを公開した。同社では既に同機構の販売を行っているが、今後はパラレルリンクロボットのシステムとしての販売も進めていく方針だ。 - NTNが能登地区における産業機械用軸受の一貫生産体制を確立
NTNは、石川県羽咋郡のNTN能登製作所に熱処理工場を増設した。産業機械用軸受の旋削工程後、三重県の工場で行われていた熱処理加工が能登地区で可能になり、鍛造から組み立てまで一貫した生産体制が確立する。 - ドライブシャフト用部品の生産能力増強に向け、米国に第2工場を新設
NTNは、同社と高雄工業、高周波熱錬3社の合弁会社であるNTKの第2工場を、米国インディアナ州アンダーソンに新設する。