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単なる下請けと組んでも「アップルらしいクルマ」は作れないのでは自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

おはようございます。土曜日です。1週間、お疲れ様でした。今週は月曜から花粉が飛び始めたような気がします。憂鬱な季節のスタートです。

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「後発だからこそぶっちぎり」をクルマでもやれるか

 ブランドとしてのアップルにはたくさんのファンがいて、ファン歴の長いユーザーも多いです。自社ブランドで自動車を持つならば、クルマならではのユーザー体験や車両としての品質、デザインの完成度などファンを裏切れない要素がたくさんあります。「細部は凝っているけど全体的に見ると普通じゃない?」「常識的な自動車のデザインの範囲だね」なんて絶対に思われてはいけないはず。大規模に投資したアップルカーが評価されず大ゴケすれば目も当てられません。

 アップルのノイズキャンセリングイヤフォン「AirPods Pro」が出たとき「ノイズキャンセリングでは後発だからこそ、ぶっちぎりで優れた製品を出してきた」と評価する記事を見かけた記憶があります。新旧さまざまな自動車メーカーがいるなかでクルマでも「後発だからこそぶっちぎり」を実践するのであれば、アップルの言う通りに作るだけの下請けが協力しても難しいように思います。

 「自動車メーカーがアップルの下請けになる日が近い」と煽る報道もありますが、アップルが自社ブランドの自動車を持つのであれば単なる下請け以上のパートナーが必要になるはずなので、提携する自動車メーカーが没落するとは思えません。受け身体質の下請けは問題ですが、開発や製造を受託する立場であっても絶対的に頼られる企業は複数ありますし、委託する側よりも受託側の方がノウハウを多く持っているという例もあると聞いたことがあります。そういう存在であれば、受託する立場でもいいのではないのでしょうか。

 「自動車メーカーが単なる下請けにはならない」というのは個人的な願いでもあります。上下関係ではない「対等な他流試合」にどこかの自動車メーカーが臨み、アップルならではのユーザー体験の考え方やソフトウェアを中心にしたビジネスの極意を直に見て、その知見を自動車メーカーとして取り入れていってほしいと思うのです。

 長くなりましたがもう1つ願望をば。アップルが全面的に設計・開発したインフォテインメントシステムを見てみたいですね。操作系もアップルのデザインで、オーディオまでアップルでそろっているとファン心理がくすぐられます。

 手持ちのiPhoneやApple Watchがクルマの鍵代わりになるのはもちろん、iPhoneとインフォテインメントシステムはオーナーが気付かぬうちに連携が完了し、乗員は普段利用している音楽配信やApple TVなど各種サービスを楽しむことができるのです。iPhoneで培ったカメラ技術をドライブレコーダーにするのもドライブの思い出にいいですね。自動車メーカーは自社製品にこうしたインフォテインメントシステムを搭載し、「アップルエディション」として販売するのはどうか……という妄想です。これを「アップルカー」と言えるのかは疑問ですが。

決算ラッシュ、車載半導体やコンテナ不足で不透明な環境続く

 さて、今週公開した記事についても触れていきたいと思います。今週も2020年4〜12月期の決算発表ラッシュでした。毎月発表されている乗用車の生産実績をみてみると、2020年下期の生産が好調な自動車メーカーが多かったです。そうした状況を反映するように、2020年10〜12月期の3カ月としては前年同期を上回る業績の自動車メーカーやサプライヤーも多いようです。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大以上に自動車関連の各社が気にかけていると思われるのが、輸送コンテナの不足や車載半導体の供給の問題です。影響が一様でない点も状況の不透明さを表しています。

 例えば、車載半導体の供給不足が生産に与える影響について、スバルは2021年1〜3月の生産台数が4万8000台のマイナスを見込んでおり、マツダは2月に国内外で7000台の減少に備えます。両社の年間生産台数の差から考えても大きな違いだといえます。また、デンソーは車載半導体について「BCPでリスク在庫を確保していたこともあり、この供給不足で直ちに在庫が切れることはない」としています。コンテナ不足についても、スバルは影響は解消したと言っていますが、デンソーは今もかなり不足しているとしています。地域や調達先によって影響の出方が異なるので今後の備え方も複雑になりそうです。

 スバルの電話会議での決算発表において、取締役専務執行役員 CFO 岡田稔明氏は「サプライヤーに在庫を持ってもらうにも、生産量が変動するしモデルチェンジもある。東日本大震災での部品供給の問題を受けてBCPは策定していたが、どのくらいの在庫を持つのがいいのか改めて考えなければならない」とコメントしました。BCPの見直しは難しい課題となりそうです。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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