協働ロボットはコロナ禍の人作業を補う手段となり得るか:MONOist 2021年展望(2/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による混乱は2021年も続きそうな兆しを見せている。製造現場でも人の密集や密閉空間による作業が制限される中、これらを回避するために人作業の一部を代替する用途で期待を集めているのが協働ロボットの活用だ。2021年はコロナ禍による働き方改革も含め、製造現場での協働ロボット活用がさらに加速する見込みだ。
協働ロボット普及における「安全」の課題
協働ロボット普及に向けたもう1つの課題として挙げられるのが「安全」の問題だ。先述した通り、協働ロボットは、人と同じ作業スペースで同時に作業を行う。そのため、ロボットが人に危害を加える可能性が生まれる。ただ、協働ロボットは新しい製品分野であるために、国際標準はあるものの、活用する製造業各社の安全基準の中で、これらの製品群の特徴が考慮されていない場合も多い。協働ロボットならではの安全基準を新たに定めていく必要がある。
例えば、「安全」にもさまざまなパターンがある。協働ロボットには接触した場合に動作を止める機能が採用されているが「当たったら止まるが安全だ」とする環境もあれば、「そもそも当たらないのが安全であるはず」とする環境もあり、環境によって安全への定義は変わってくる。それぞれの環境と協働ロボットの活用状況により、安全基準の再定義が必要になる。
さらに、協働ロボットは三品産業(食品、化粧品、医薬品)など従来ロボット活用がそれほど盛んではなかった産業でも活用が進んでいる。これらの業界への協働ロボット普及は市場拡大の大きなポイントになっているが、従来ロボットを活用していなかった企業では、ロボットに対する安全基準そのものがないところも多く、リスクアセスメントが行われないまま活用されるケースも散見されているという。
ただ、こうした安全基準を個々で一から作り上げる負荷も大きく、こうした「新たな安全基準」をどう作り上げていくのかという点も、協働ロボット普及の大きなポイントになっているといえる。業界や用途ごとのガイドラインなどが求められている領域だといえるだろう。
協働ロボットの設定の「容易さ」
「設定の容易さ」も協働ロボットに期待されている部分だ。協働ロボットは従来ロボットが活用できなかった領域での活用が期待されており、そのためには専門技術者ではなく現場の作業員が自由に設定変更をして活用できる柔軟性が求められている。多くの協働ロボットメーカーはダイレクトティーチングや、フロー型の設定などを含む、簡単セッティング機能を取り入れているが、まだまだ難しい場合も多い。今後は、画像などの活用やAI(人工知能)の活用などを組み合わせてさらに簡単に高精度のセッティングが行えることが期待されている。
例えば、NECと東京工業大学工学院システム制御系 准教授の山北昌毅氏らのグループとの共同研究では、ロボットのティーチング作業を自動化するAI技術「目標指向タスクプランニング」を2020年7月に発表。作業目標を指示するだけで、ロボットに目標を達成する動作を自動で実行させることが可能になるとしている。同様のティーチング負荷軽減の研究発表は数多く行われており、これらの活用が進むことでさらに容易なロボット設定が可能になるだろう。
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