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化粧品製造ラインで広がる人とロボットの協力の輪、資生堂の場合ロボデックス(1/2 ページ)

ロボット開発や活用についての展示会「ロボデックス」で「三品産業で活躍する協働ロボット」をテーマとしたセミナーが開催。その中で資生堂 生産部 生産基盤強化グループ 那須工場設立準備室 製造部準備グループ グループマネジャーの小林毅久氏が「資生堂における協働型ロボットの導入と背景」と題して講演し、ロボット導入の背景からシステム構築のポイントなどを紹介した。

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 ロボット開発や活用についての展示会「ロボデックス」(2019年1月16日〜18日、東京ビッグサイト)で「三品産業で活躍する協働ロボット」をテーマとしたセミナーが開催された。その中で資生堂 生産部 生産基盤強化グループ 那須工場設立準備室 製造部準備グループ グループマネジャーの小林毅久氏が「資生堂における協働型ロボットの導入と背景」と題して講演し、ロボット導入の背景からシステム構築のポイントなどを紹介した。

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人型ロボットが作業を行う様子(クリックで拡大)出典:資生堂

好業績から生産体制を強化する資生堂

 大手化粧品メーカーの資生堂は好調な業績を背景に、国内で大阪新拠点(大阪府茨木市)と那須(栃木県大田原市)の2工場を建設中である。さらに、2019年2月4日には福岡県久留米市に「資生堂九州福岡工場(仮称)」の建設も発表している。

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「資生堂九州福岡工場(仮称)」のイメージ(クリックで拡大)出典:資生堂

 このうち2020年12月に完成予定の大阪新拠点では最高級品の生産を行う低中速ラインを導入する。2019年12月完成予定の那須工場には中高速ラインを導入する計画だ。一方、現在稼働している掛川工場(静岡県掛川市)ではメーキャップ製品の生産などを行っている。講演ではロボット導入を進めた、メーキャップ製品マザー工場である掛川工場の状況を説明した。

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資生堂 生産部 生産基盤強化グループ 那須工場設立準備室 製造部準備グループ グループマネジャーの小林毅久氏

 同社の協働型ロボットの導入背景には「労働環境の変化が大きい」(小林氏)とする。人口減少局面に入った日本において、予想される労働人口の減少に対して、その対応策としてこの取り組みを開始した。

 同時に化粧品市場のニーズの変化も大きかったという。「嗜好の多様化で、大半の生産ロットは2000個以下となり、旧来の生産方式からの転換が必要に迫られた。さらに、発売後の製品の多くが、数カ月でリピートオーダーの数量が激減するなどの状況がメーキャップ製品に見られる。そのため、専用設備の開発や導入が大きなリスクとなると考え、フレキシブルに対応できる設備の採用を選んだ」と小林氏は語る。

 従来はさまざまなメーカーの充填機などを導入し、これに知恵と工夫による改善を加えて多品種生産に対応をしていたが、現在では自ら設計した生産量にあった設備(使いやすく、製品切り替えが容易)を構築するようにシフトしている。「この取り組みは多品種対応で生産性向上を実現し、一定の成果を上げたため、以後活動を拡大し続けている」と小林氏は述べている。

失敗の連続だった資生堂のロボット導入

 同社では国内工場へのロボット導入の範囲を「ロボット(産業用ロボット)を人手作業と専用機の中間に位置付けている」(小林氏)。産業用ロボット導入の一例を見ると、久喜工場(埼玉県久喜市)では、以前は人が行っていたラベル検品と区分け作業を、パラレルリンクロボットを用いて行えるようなシステムを構築している。

 ただ「こうしたロボット導入が最初からうまくいったわけではない」と小林氏は強調する。同社ではこれまで、ロボットや自動化設備の採用について、挫折を繰り返した経緯があるという。

 「製品、オペレーター、生産数量などの変化に柔軟に対応できなかった」(小林氏)。そのため、これらの変化にも対応できるよう、ロボットと設備との組み合わせをリアレンジする生産技術力の向上およびロボットを柔軟に使いこなす現場力の充実に力を注いだ。脱労働集約型を目指したモノづくりへの対応を目指し、再度ロボット導入プロジェクトの検討を開始したのが2014年となる。翌年には開発チームを結成し、実験機を購入するなど開発を本格的にスタートさせた。2016年から生産現場に導入を開始している。

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