検索
特集

化粧品製造ラインで広がる人とロボットの協力の輪、資生堂の場合ロボデックス(2/2 ページ)

ロボット開発や活用についての展示会「ロボデックス」で「三品産業で活躍する協働ロボット」をテーマとしたセミナーが開催。その中で資生堂 生産部 生産基盤強化グループ 那須工場設立準備室 製造部準備グループ グループマネジャーの小林毅久氏が「資生堂における協働型ロボットの導入と背景」と題して講演し、ロボット導入の背景からシステム構築のポイントなどを紹介した。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

人とロボットの共存をベースに

 資生堂のロボット導入および自動化の考え方は「人とロボットの共存」に置いているという。その中で人がやるべき作業、ロボットに置き換えるべき作業を切り分けていった。例えば、化粧品はそのものが人の感性に訴えるべきものであるため「検査では人の感性が最も重要だ」とし、検査を人にしかできない作業と位置付けた。

 一方、生産課題であった、人に頼りすぎる生産方式(単純作業の繰り返し作業)については、ロボットに置き換えるべき作業とした。このように自動化作業の対象は、繰り返し工程、重労働作業、複雑繊細工程と置き、判断のいる作業、人の五感に頼る作業、管理作業は人固有のものとした。「人がより付加価値の高い作業に専念させることで、作業者が落ち着いて作業できる環境を構築できる。これにより生産ラインの安定化と品質の向上を目指した」と小林氏は語る。

 同社が取り入れたロボットはカワダロボティクスの双腕多関節ロボット「NEXTAGE」で「何かを加工させたり、検査以外の判断を伴う作業をさせたりするなど、より付加価値を高めるという目標に応えられるロボットとして選定した」と小林氏は選んだ理由を語った。

 国内工場でのロボット導入事例ではまず、口紅生産作業について紹介した。以前は、口紅のキャップをはめる作業は人間が行っていた。ただ、それを長時間行っていると、口紅の表面にキズが付くケースがあった。その製品は不良品となるため、現場からの声もあり、双椀型多関節ロボットと補助装置を導入した。

 導入に向けてはハンドも独自で開発。また、1個ずつの切り出し装置を内製化している。併せて、工程検索と設計の組み換えについて検討した他、類似の作業デモが行える場所を設けて、人材育成にも取り組んだ。

photo
資生堂 掛川工場における人とロボットの協働作業の様子(クリックで拡大)出典:資生堂

ハンド製作では3Dプリンタも活用

 ハンド開発では3Dプリンタも活用した。これにより、複数のデザイン候補を短時間でテストすることができたという。また、予期しない衝突などでハンドが破損してもすぐに再製作できるメリットがある。部品の供給機についても独自で開発。これらの口紅生産でのベルト作業のノウハウは、さまざまな小ロット対応に生かしている。

 ロボットはより複雑な工程を持つ粉末化粧品仕上げ作業にも導入した。仕様書とスポンジ、ファンデーション(仕掛け品)をワンセットとして製品箱(ケース)に収めるというものだが、この作業は構成材料が多く、材質やサイズが異なり規格化されていないことから機械化が進んでいなかった。

 従来の作業工程は仕掛品の粉末表面などを目視で検査し、透明容器を被せる工程を経て、スポンジや仕様書、仕掛け品の3点セット一式を挿入する。さらにこれらの完成品を3個ずつ輸送箱に挿入し、物流レーベルを2種貼付後、オリコンに収めるという工程内容だった。

 これらの作業をロボットにより自動化した。このうち目視の検査は作業者で行うこととし、続く2つの工程をロボットが担うこととした。この粉末仕上げ工程では、資生堂独自のセル生産方式と「NEXTAGE」の組み合わせにより、人とロボットが協力する生産の姿を構築し、多品種変量生産、複雑で繊細な作業へのロボット適応といった最新の姿を描くことを目指した。

 ロボット導入後、引き続いてロボット動作の見直し、ハンドや周辺装置の改良、検査項目の絞り込みなどを継続。当初の目標には達していないものの、2018年度の労働生産性は導入前と比べて1.4倍にまで伸びてきているという。今後はさらに群管理などの取り組みを強めることで、労働生産性を2倍近くに引き上げる計画だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る