協働ロボットの安全評価をどう考えるか、「安全」で売るロボットSIの取り組み:協働ロボット(2/2 ページ)
労働人口減少やCOVID-19の影響から製造現場の人作業の置き換えで注目を集めているのが協働ロボットである。しかし、協働ロボットの導入にはさまざまな課題があり普及拡大は容易ではない状況だ。協働ロボットの動向と課題点について、協働ロボット専門のシステムインテグレーションを展開しているIDECファクトリーソリューションズ 取締役でロボットシステム部部長の鈴木正敏氏に話を聞いた。
協働ロボットの使いどころは「人の拡張」
協働ロボットの市場は着実に広がっているものの用途を見いだせずに本格導入に二の足を踏むケースも多いのも現実だ。鈴木氏は「単純な人の置き換えで使う場合は、ユーザーの満足を得られないことが多い。完全に置き換えるのではなく、協働ロボットと人手の作業を組み合わせることによって、より多くの作業を人が行えるようにするという発想で取り組めば満足度が高いと感じている」と使いどころについて語る。
基本的には協働ロボットは最低限の安全性を確保するために、速度など性能的に制限が加えられている。そのため「複雑な動作を高速、高精度で行う」というような従来の産業用ロボットが得意な領域でも力を発揮しにくい。「安全柵を含め、従来型の産業用ロボットが設置できるようなところでは、協働ロボットではなく通常の産業用ロボットを使った方がよい場合もある。従来では設置できなかった工程間のつなぎ目のような場所で、人が行うしかなかった単純作業などで協働ロボットを使ってみるというのが最初の一歩としてはよいかもしれない。梱包や材料供給、AGVにワークを載せるというような作業だ」と鈴木氏は考えを述べる。
これらに対しIDECファクトリーソリューションズでは「協働ロボット.com」というWebサイトを立ち上げ、協働ロボットの知識の訴求や、導入のポイントなどを発信。また、アプリケーションパッケージなど、導入を容易にするパッケージの訴求を行い、導入への障壁を低減する取り組みを進めている。
協働ロボットで、低い「安全」への認識
また、協働ロボットの活用において、懸念しているのが同社が推進する「安全」についての意識の低さだ。IDECファクトリーソリューションズは、FA・ロボットシステムインテグレータ協会の幹事会社として、ロボット導入における安全についての講習会なども行っているが「そういうセミナーを受けている人でも、リスクアセスメントを理解していない人の割合が非常に多い。協働ロボットは新しい用途の開拓ということで従来ロボットを使っていないところでの導入も広がっているが、従来ロボットを扱っていなかった販売元なども増えてきている。そうした中で、従来リスクアセスメントを行っていた生産技術部門などに話が伝わらず、システムインテグレーターは作るだけという状況で、リスクアセスメントができていないまま現場で導入されているケースも散見される」と鈴木氏は警鐘を鳴らす。
一口に安全といっても、環境によって求められる基準は大きく異なっており、これらの整理や定義などが必要となる。「協働ロボットに関する安全だけで考えても『当たったら止まる』というのが本当に安全なのかという点については、それぞれの環境で異なる。衝突した時点で『安全ではない』とする環境もある。どこまでを許容しどこまでを『安全』と定義するのかというのは、それぞれの環境で作っていく必要がある。協働ロボットは特に人と一緒に動くケースも多い上、新しい製品分野で進歩の過程でもあるので、こうした基準作りが普及には重要だ」と鈴木氏は語る。
先述した通り、IDECファクトリーソリューションズではこうした中で「安全」を特徴として、協働ロボットのシステムインテグレーションを進めている。安全コンサルティングなどの加え、これらを容易に行えるようにリスクアセスメントを簡単に行えるシミュレーションソフトやリスクアセスメントシートを用意。リスクアセスメントを支援するサービスを立ち上げている。「クラウド経由で情報を共有できるプラットフォームなども準備を進めている」(鈴木氏)。
今後に向けては「新しい協働ロボットメーカーが増えてきていることで市場としても選択肢としても広がってきている。これから導入が進みやすくなる。こうした中で、安全も含めて実際に導入して価値を生み出せるように、提案を進めていく」と鈴木氏は抱負を述べている。
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