キーワードは「専鋭化」、持ち株会社制に移行するパナソニックの事業強化策:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニックは2020年11月17日、経営方針説明を開催し持ち株会社制への移行や新体制での方針などについて説明した。
「人」「現場課題」「電気・電子」の3つの方向性
新体制により、「人」「現場課題」「電気・電子」の3つの軸で成長を目指す。「人」は人の暮らしをよりよくするということを目指すもので「『くらしアップデート』としていたコンセプトも多くはこの領域が担う」(津賀氏)という。主に新たなパナソニック株式会社が担う形となる。また、「現場」は現場プロセスイノベーションとして推進するもので「現場プロセス」を担う子会社でこれらをさらに伸ばす。「電子・電子」は「デバイス」および「エナジー」を担う子会社で担い、社会発展の基礎となるデバイスなどを展開する。
津賀氏は「目指すのは、競争力を高め、高収益を得られる4つの柱事業を確立し『パナソニック』を社会から共感されるブランドとすることだ」と語っている。
ここからは楠見氏の新体制への考えについて、書き起こしで紹介する。
「勝てない事業はやめる」新社長就任予定の楠見氏
今回新しい会社の形に変える目的は、事業の専鋭化と競争力の強化にあるということで、まさに「我が意を得たり」というところです。
私自身はテレビの事業部長時には、プラズマテレビ事業の終息や、三洋ブランドテレビ事業の方向付けを行いました。またその後、白物家電を担当していた時には欧州市場からの撤退を決めました。そして現在は低収益となった車載事業の再建に取り組んでいるところです。
こうした経験から結局は「競合他社に比べて社会や顧客に貢献する力やスピードなどで劣後に回った事業の収益性は悪くなる」と理解をするようになりました。しかし一方で、顧客に貢献する力やスピード、あるいはお金の回し方は、事業特性によってそれぞれ異なるものです。そのため、それぞれの事業の特性を考慮しなければ、こうしたものを改善できません。そう考えると、事業会社には徹底して、自主責任経営をしてもらい、競争力強化のスピードを最大化することが必要になるわけです。新たな会社の形が、創業者時代の会社の形に近いものになるのは必然だと考えます。
私は直近の3年近くは、トヨタ自動車をはじめカーメーカーと仕事をさせていただいています。特に競争力強化の観点では、トヨタ自動車の徹底した無駄の排除、正味付加価値に徹底してこだわる考え方により、現場で改善が加速度的に進む様子を見てきました。また、トヨタ自動車の強みというとコミュニケーションを含むマーケティング力や圧倒的な販売力などが大きな販売規模の源泉だといえます。一方で、収益力の源泉は無駄の排除と正味付加価値に徹底的にこだわる現場の改善力だと学びました。振り返ってみると、現場の改善力、あるいはそのスピードというものが、パナソニックでは進化していないのではないかと考えます。
そのため、ホールディングス会社の役割は、もちろんポートフォリオマネジメントを通じて事業ポートフォリオそのものを専鋭化は進めますが、それ以前に各事業会社の競争力を現場視点に立ち返って見極めて、徹底して現場の改善力を向上する支援を行っていくことだと考えます。こうしたケイパビリティを身に付けることで、事業会社の現場に寄り添って共に収益を伴う成長シナリオを作っていきたいと考えています。
今後コアと位置付ける事業については、こうしたことをやり切った上でさらに競合他社が簡単には追い付けないような強みを1つか2つは持っていけるようにしたいと思っています。一方で、事業環境や競争環境から、どう考えてもそういう状態になり得ない事業というものも出てきます。そういう場合は冷徹および迅速な判断でポートフォリオから外していくなどやり方を考えていきます。そういうステップでポートフォリオを専鋭化することで、結果としてグループ全体の企業価値というものを向上させることができると考えています。
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