パナソニックが「Let's note」でサプライチェーン革新、在庫ロス1割削減目指す:サプライチェーン改革
パナソニックとBlue Yonderジャパンは、ノートPC「Let's note」などを手掛けるパナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社傘下のモバイルソリューションズ事業部(MSBD)において、Blue Yonderのサプライチェーン計画系ソフトウェア「S&OP」を導入したことを発表した。
パナソニックとBlue Yonderジャパンは2020年11月10日、ノートPC「Let's note(レッツノート)」などを手掛けるパナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社傘下のモバイルソリューションズ事業部(MSBD)において、Blue Yonder(ブルーヨンダー)のサプライチェーン計画系ソフトウェア「S&OP」を導入したことを発表した。同年10月から一部モジュールが順次稼働を開始しており、12月には全面的に本格稼働する計画である。
MSBDは、レッツノートの他、警察や建設工事など現場で活躍する頑丈ノートPCやハンドヘルドデバイス、頑丈タブレット「TOUGHBOOK」など多種多様な製品を製造、販売している。これまでもグローバル製造と販売のオペレーションの改革を進めてきたが、Blue YonderのS&OPを導入し、従来の地域別の計画管理ツールや属人的なオペレーション中心の生産から、グローバルでのサプライチェーン計画の高度化に向けて取り組むことを決めた。
これらの取り組みの主な目的は3つある。1つ目は「顧客満足度の向上」で、グローバルでのリードタイムの短縮や納期回答の迅速化を図る。2つ目の「在庫・廃棄ロスの削減」では、2017年度比で10%以上の在庫ロス削減を目標としている。そして3つ目は、納期順守による「販売増」だ。
MSBDのノートPC事業は、法人顧客向けの一品一様の商品づくりによって、優れた品質と顧客密着度の高いサービスを提供することで高い評価を得てきた。特に、カスタマイズ製品が多く、製造工場である神戸工場(神戸市西区)などでさまざまな取り組みを進めて対応してきたが、リードタイムの長さや納期即答の困難さは常なる課題だった。また、顧客の要望やニーズの変更に伴って、在庫の増大や、廃棄ロスも発生するようになっている。
さらに、地域別で計画管理ツールが異なり、生産管理作業に人手をかけ、きめ細かにマニュアル作業で対応するため、膨大な工数がかかり、従業員にとって大きな負担になっていたという。これまでも継続的に現場改善を進めてきたが、今回は顧客視点、経営視点、従業員視点から抜本的なオペレーション改革を行うことを決めた。
この抜本的なオペレーション改革に向けて、Blue Yonderによる戦略的な業務アセスメント(SOA:Strategic Operations Assessment)を実施。国内外の拠点におけるビジネス課題を分析し、事業のビジョンと方向性を把握した上で、潜在的なビジネス上の導入効果および期待されるROI(投資対効果)を設定し、これらSOAの結果を受けて「サプライチェーンの効率性」「俊敏性」「自動化」の実現可能性の3点にフォーカスすることとなった。
次に、Blue Yonderのソリューションを導入するために業務プロセスデザインを開始し、現状分析の深堀、エンドツーエンドの計画系プロセスのあるべき姿のデザイン、改革ロードマップの設計を行った。導入したソフトウェアパッケージは、デマンド管理、グローバルサプライ管理、統合的なPSIシステム(Production:生産、Sales:販売計画、Inventory:在庫)、安全在庫計算、サプライチェーン柔軟性・リスク管理などとなっている。
パナソニックは2020年5月、Blue Yonderへの戦略的投資(20%)を発表。2019年4月に発表した日本での合弁事業を含めて、2社間の戦略的パートナーシップを拡大するとともに、CNS社傘下のパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)がブルーヨンダーのSCM(サプライチェーンマネジメント)ソリューション「Luminate」を国内で販売していく方針を示していた。
パナソニック 代表取締役専務執行役員でCNS社 社長の樋口泰行氏は「まず、われわれ自身のSCMの変化を示し、Blue Yonderのソリューションの社内導入を開始した。MSBDを皮切りに、今後は複数事業部に展開する予定で、SCM先進企業への進化を加速する。われわれ自身がサプライチェーンの変革や最適化を確実に実現し、それを実際の取り組み事例として製造業の顧客に示したいと考えている」と述べている。
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