ニューノーマルを「くらしアップデート」の追い風に、パナソニックの技術戦略:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
パナソニックは、技術セミナーとして研究開発戦略について、パナソニック 専務執行役員でCTOとCMOを務める宮部義幸氏がオンラインで説明を行った。「くらしアップデート業」を掲げる中で、これらに最適な技術基盤の構築を進める一方で、技術の活用先として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を進めていく方針を示した。
パナソニックは2020年7月15日、技術セミナーとして研究開発戦略について、パナソニック 専務執行役員でCTOとCMOを務める宮部義幸氏がオンラインで説明を行った。「くらしアップデート業」を掲げる中で、これらに最適な技術基盤の構築を進める一方で、技術の活用先として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を進めていく方針を示した。
「くらしと世界をアップデート」を支える技術基盤
パナソニックでは100周年を迎えた2018年度に従来の「家電の会社」から「くらしアップデートの会社」へと変革する方向性を示した。宮部氏が率いるイノベーション推進部門としても、これらを支える技術開発や基盤整備への取り組みを進めている。
技術ビジョンとして「くらしと世界をアップデート」と掲げ、主に「モビリティ」「ホーム」「ビジネス」の3つの領域での変化を支える技術開発を進めている。宮部氏は「製造業として培ったキーデバイスを開発する力やエネルギー関連技術などを基盤とし、AIやIoTなどの技術、センシング技術、ロボティクス技術とこれらを結び付けるデジタル技術などを組み合わせて、世界の変革を支えていく」と語る。
モビリティ領域では、自動運転やそれに伴う新たなソリューションをターゲットとし、障害物検知や人状態認識、外観認識、配車システムなどを開発。また、電動化などに合わせ、次世代パワーデバイスやリチウムイオン電池システム、非接触給電システムなどの開発も進めていく。ホーム領域では、顔認証システムや顔決済セルフレジ、不審者検知システム、くらしデータ分析、感情推定などを開発。ビジネス領域では無人サービスロボットや無人配送システム、自動棚卸しや補充、自律移動ロボットや搬送ロボットなどを開発しているという。
宮部氏は「やりたいことは主に2つだ。1つは、全ての人に対する最高ではなく、一人一人に対して最高の価値提供を行えるようにするということだ。もう1つが、製品を販売した時が最も製品価値が高く、その後は価値が減っていくだけという状況ではなく、スマートフォンのように買った後も価値を高めることができるような環境を作るということだ。これらに必要な技術基盤や体制を作るのが役割だ」と語っている。
「困難こそ発展の好機」
しかし、2020年2月以降、COVID-19の世界的まん延により、状況は大きく変化している。感染抑制のために、リアルからバーチャルへの動きが進み、新たな生活様式への変化が進んでいる。宮部氏は「パナソニックの中でも2020年1〜3月に話し合っていた事業環境と今とでは大きく状況が変わってきている。R&D部門としても、在宅勤務でできることは在宅で行うようにしており、出勤率が最も低い部署では10%程度となっている。実験や試作など会社の設備が必要な部署では出勤が必要になるが、その場合でも出勤率は40%程度となっている。こうした新しい働き方への対応が必要になっている」と語る。
今のところ、パナソニック社内の調査で「在宅勤務でできなかったこと」を確認したところ、今のところは「特にない」とする回答が大部分で、問題なく進められていることが分かる。ただ「これらは従来の人間関係などコミュニケーション基盤ができているからできたことで、今後ボディーブローのようにじわじわと影響を及ぼすかもしれない。そういう状況にいち早く気付いて修正する力を身に付けることが必要となる。一方でそこはあらゆる企業が悩むポイントでもあるので、社内でこれらを解決するテクノロジーや製品を作ることができれば、外部にも展開できる可能性がある」と宮部氏は方向性について語っている。
パナソニック創業者の松下幸之助氏は1958年の経営方針発表会で「困難こそ発展の好機」とし「松下電器の過去においては、困難に直面したときに必ず何ものかを生み出してきているのであります」という言葉を残したとされている。宮部氏は「この言葉はそっくりそのまま今の状況にも当てはまる。困難な状況だからこそ必要になるものに目を向け、新しいパナソニックの価値を作り出していく」と述べる。
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