ニューノーマルを「くらしアップデート」の追い風に、パナソニックの技術戦略:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニックは、技術セミナーとして研究開発戦略について、パナソニック 専務執行役員でCTOとCMOを務める宮部義幸氏がオンラインで説明を行った。「くらしアップデート業」を掲げる中で、これらに最適な技術基盤の構築を進める一方で、技術の活用先として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を進めていく方針を示した。
新たな生活様式に貢献する技術と支える基盤
これらの変化に対し技術開発の方向性にも少し変化が生まれているという。「技術開発そのものは中長期視点で取り組むものなので大きな方向性は変わらない。ただ、技術のアウトプットとしては、在宅勤務の増加や、非接触でできることの拡大など、新たな生活様式に合わせたものを作り出す取り組みを増やしている」と宮部氏は語っている。
これらの例として、AIカメラ「Vieureka(ビューレカ)」を軸としたソリューション展開を進める「Vieurekaプラットフォーム」や、業務支援サービス「ライフレンズ」などのスマートエイジングケア、歩行訓練ロボットなどの展開を紹介する。
また、これらを支える基盤として、部門横ぐしの情報基盤「パナソニックデジタルプラットフォーム」や、電灯線を使った通信技術「IoT PLC」、IoTサイバーセキュリティシステムなどの技術開発を強化する方向性を示している。
体制の整備も
研究開発体制の整備も進めている。従来は、デジタル系技術と材料やデバイス系技術を開発する本部は別だったが「テクノロジー本部」として1つにまとめた。また、生産技術を担う「マニュファクチャリングイノベーション本部」を、イノベーション推進部門内に組み込み、横ぐしでの研究開発が行えるようにした。またデザイン部門も「デザイン本部」として格上げし、技術とデザインで連携した動きができるようにしている(※)。
(※)関連記事:パナソニックが挑むデザインによる変革、カギは「日本らしさ」と失敗の量
一方で2020年4月から「HomeX」など「くらしアップデート」と体現するサービスや基盤を開発してきた「くらしアップデート推進本部」は、同年7月からサービス開発と技術基盤開発の役割に分けた。技術基盤の開発は「くらし基盤技術センター」としてイノベーション推進部門内に残したが、サービス展開を行う「くらし事業戦略本部」はイノベーション推進部門から独立し、本社直轄組織として独自の「くらしサービス」の開発を進める。くらし事業戦略本部は元Googleの松岡陽子氏が担っている(※)。
(※)関連記事:パナソニックのくらしアップデート事業、元グーグルの松岡氏が推進担当に
「くらしアップデート推進本部」を分割した理由について宮部氏は「事業体としてモノづくり主体の経営管理と、サービスビジネス主体の経営管理では異なってくる。サービスビジネスを中心とした事業を組み立てるには、独立した事業体として管理手法から異なる形で進める必要があると考えて独立させた」と考えを述べている。
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