パナソニックが挑むデザインによる変革、カギは「日本らしさ」と失敗の量:デザインの力(1/4 ページ)
家電の会社から「暮らしアップデート業」へと変革を進めるパナソニック。その中で新たな価値づくりの1つの重要な切り口と位置付けているのが「デザイン」である。新たにパナソニック全社のデザイン部門を統括するパナソニック デザイン戦略室 室長に就任した臼井重雄氏に、パナソニックが取り組むデザインによる変革のついて聞いた。
モノがあふれるようになり、モノの価値だけで新たな価値を生み出すことができなくなる時代にどのようにイノベーションを起こすのか――。
この中で「デザイン」を基軸とした変革に、今新たに取り組んでいるのが101年目を迎えたパナソニックだ。パナソニックは100周年に際し「家電の会社から、暮らしアップデート業の会社になる」(パナソニック 代表取締役社長 津賀一宏氏)としており、新たな価値創出に取り組む。しかし、従来の家電など「モノづくり」を中心とした考え方から、「アップデートできる」ことをベースとしたソリューションを中心とした「コトづくり」へ変化するには大きな労力が必要になる。
そこで考え方を変える1つの切り口と位置付けたのが「デザイン」である。色や形などの“狭義のデザイン”ではなく「デザイン思考」や「デザインマネジメント」と呼ばれる、デザイナーの発想で物事を見ることで、新たなモノづくりや企業運営の仕組みを構築しようという動きである。
こうした「デザイン」を基軸とした新たな動きを推進するのがデザイン戦略室だ。パナソニック デザイン戦略室室長に新たに就任した臼井重雄氏に、パナソニックの新たなデザインへの動きについて話を聞いた。
デザイン部門を企業のクリエイティブハブに
MONOist デザインを取り巻く環境の変化についてどう感じていますか。
臼井氏 大きく分けて社外の環境的な面と、社内的な環境の両面で、デザインを重要視する動きが強くなってきている。社外の環境としては、デザイン思考やデザイン経営が大きく注目され「デザイナーの発想」に関心が集まる機会が増えたという点がある※)。
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パナソニック デザイン戦略室 室長 臼井重雄氏。コンシューマー向け製品のプロダクトデザイナーを経て2007年から中国のデザインセンターを立ち上げた。2017年にはパナソニック アプライアンス社 デザインセンター所長に就任。2019年1月から現職を兼任(クリックで拡大)
社内的な環境としては100周年で発表した「暮らしアップデート業」への進化がある※)。既存のモノづくりの延長ではなく、暮らし全体を支え続けるソリューションビジネスやサービスビジネスを構築していく中で、どういう発想でサービスや製品を作り出していけばよいのか、というのはパナソニック全体の大きな課題となっている。こうした課題解決の1つの手段として「デザイン思考」などが注目されているという流れだ。
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デザイン部門としては、こうした流れを一過性のものとするのではなく、デザインの発想でさまざまな製品やサービス、組織運営をより良いものにできるということを定着させていきたいと考えている。デザイン部門が全社のクリエイティブハブとなり、事業の成長を加速させる存在となりたい。
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