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パナソニックが挑むデザインによる変革、カギは「日本らしさ」と失敗の量デザインの力(2/4 ページ)

家電の会社から「暮らしアップデート業」へと変革を進めるパナソニック。その中で新たな価値づくりの1つの重要な切り口と位置付けているのが「デザイン」である。新たにパナソニック全社のデザイン部門を統括するパナソニック デザイン戦略室 室長に就任した臼井重雄氏に、パナソニックが取り組むデザインによる変革のついて聞いた。

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アプライアンス社が取り組んだデザインによる変革

MONOist パナソニック アプライアンス社 デザインセンター所長としての立場ではさまざまなデザイン変革を行ってきましたね。

臼井氏 アプライアンス社の中ではさまざまな取り組みを行ってきました。具体的には人(People)、業務手順(Process)、製品(Product)の変化に取り組んできた。

 例えば、新たにデザインを経営戦略に取り込むようにデザインストラテジストとして元シーモアパウエルの池田武央氏を招いた他、従来は年に1回の開催だったデザインコンテストを3カ月に1回にし、アジャイル型でとにかくアイデアや発想を早く世に出し、素早くブラッシュアップを進めるようにした。また、アイデアを生み出したり、さらにそれをカタチにしたりする過程では場所の持つ力が非常に大きいことを考え、デザインセンター拠点を京都に集約した。

 とにかく、取り組んだのはデザイン部門の役割を、事業部からの委託でモノの色や形を作るという“狭義のデザイン”の枠に留めないようにするにはどうするかということだった。これらの取り組みを重ねていくことで、少なくともアプライアンス社の中ではデザインの位置付けは大きく変わってきた。例えば、従来は「次の製品の色や形はどうするか」ということばかりを考えていたが、今は「2019年度の事業ビジョンはどうするか」や「将来の生活の変化に対してあるべき製品やサービスの形はどういうものか」など、より幅広い領域の仕事に取り組むようになっている。

 本来のデザイナーの役割は「最適なカタチで可視化させる」ということだと考えている。そういう意味では「未来を形にし、可視化する」ということを考えるとビジョン作成などにも参画してもおかしくはない。こうした変化を全社で生み出していけるようにしていきたい。

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家電製品と京都の伝統工芸を組み合わせてデザインを起点に新たな家電の姿を模索する「Kyoto KADEN Lab.(京都家電ラボ)」の第2弾作品の1つ「Kasa」。強い刺激を与えると消えるので、どう扱うのかという人の振る舞いを変える明かりをコンセプトとしている(クリックで拡大)

B2Bにおけるデザインの意義

MONOist パナソニックの中でも、家電を中心としたアプライアンス社の領域と、B2Bなどを中心としたその他のカンパニーの領域では、デザインの位置付けや考え方なども変わってくるようにも見えますが、その点についてはどう考えますか。

臼井氏 B2CもB2Bも発想の根本にある思想や考え方は同じだと考えている。B2B製品も突き詰めて考えると、どこかでB2Cにつながっている。こうしたエンドユーザーの思考や生活の変化からバックキャストして、最適なサービスやソリューションの在り方、それに伴うモノのカタチなどを考えていくとすれば、アプライアンス社での取り組みと大きくは違わない。

 逆にB2Bのさまざまな領域でのデザイン活用を考えたときに、家電で取り組んできた「暮らしに寄り添う」という点でのノウハウを生かせることのほうが多い。ある自動車メーカーとのコラボレーションなどを行った案件などもあるが、その時も家電でのデザインノウハウを評価されてのものだった。

MONOist 全社としての取り組みで変化する点はありますか

臼井氏 基本的にはアプライアンス社での取り組みと変わらない。現状ではそれぞれのカンパニーのデザインセンターをベースとし、人の流動性と多様性を実現していくことで、デザイン主導の価値を作り出していく。

 デザインを経営戦略に織り込むストラテジストなどを加えていく他、逆に経営企画部などにデザイナーを送り込む取り組みを進めている。カンパニー間のデザインセンターにおける人の流動性も高め、さまざまな価値を組み合わせて新たな価値を作りイノベーションを生んでいく。ただ技術や機能などを組み合わせるだけではなく、デザイン軸で包括的に統合しながら実現することで、顧客に最適な体験価値の在り方を実現する。

 例えば、炊飯器を作る場合、以前のデザイナーの仕事は「次の新製品のデザインをどうしようか」と考えることだった。しかし、今は「炊飯器はそもそも何の価値をもたらすものなのか」というバリューチェーンを考えるのが仕事となる。炊飯器1つを見ても「お米を炊く」という役割は変わらなくても、価値は「家族を健康にするためのもの」であったり、「一家の団らんを生み出すもの」であったり、さまざまなものを内包している。これらの価値に対して「今の炊飯器はふさわしいのか」や「異なるカタチだったらどうか」と考えることが必要になる。そういう人材を生み出していく。

中国でのデザイン実証への期待

MONOist 海外での取り組みはどう考えていますか。

臼井氏 英国のロンドンにパナソニックデザインセンターヨーロッパがある他、米国ではCNS社のパナソニックCNS社デザインセンターアメリカがある。アジアでは、マレーシアにAPアジアデザインセンター、香港に香港デザインセンター、中国の上海に中国デザインセンターがある。

 売りを伸ばすデザインを行うデザインセンターもあれば、日本と同様にデザインの新たな挑戦を進めるデザインセンターもある。現状でもデザインセンター間の連携はあったが、さらに役割が広がる中で、人材交流など連携強化を進めていく。

 特に期待しているのは中国での取り組みだ。パナソニックでは2019年4月から中国を管轄する社内カンパニーができる。それに伴い、デザインセンターもアプライアンス社の領域を対象としていたのを、全社領域を担当するようになる。さまざまな領域での挑戦ができるようになる。動きが早い市場であるので、日本での取り組みの成果を中国デザインセンターに共有する一方で、中国社で先行した実証などを進め、その成果をグローバルのデザインセンターに展開するような取り組みも行っていきたい。

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