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グーグルからパナソニックへ、松岡陽子氏の原動力は「人の生活を助けたい」製造マネジメント インタビュー(1/3 ページ)

パナソニックのフェローに、グーグル(Google)米国本社のバイスプレジデントで、スマートホーム製品「Google Nest」のCTOを務めた松岡陽子氏が就任する。松岡氏はパナソニックにどのような影響を与えるのだろうか。同社が開催した会見で松岡氏は、期待される役割など報道陣からの質問に答えた。

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 パナソニックは2019年10月17日、「フェローの人事について」というニュースリリースを発表した。それは、グーグル(Google)米国本社のバイスプレジデントで、スマートホーム製品「Google Nest」のCTOを務める松岡陽子氏を、パナソニックのフェローとして招聘するという内容だった。

 同社は松岡氏を招聘する理由として「当社が『くらしアップデート業』として社会にお役立ちをし続けるに当たり、経営体質の強化や新たなビジネスモデルづくりが必要であり、その中の1つに、グループ新中期戦略発表会で説明したソフトウェアを起点としたビジネスモデルの変革がある。この取り組みを進めるに当たり、世界トップレベルの技術専門性と従来にない製品やサービスを創出してきた経験を生かし、既存の事業や組織の枠を超えて本取り組みを全社で展開するリーダーの1人として松岡氏をフェローとして招聘する」(ニュースリリースから抜粋)としている。

 10月17日より前の時点でパナソニックのフェローは、2017年3月にエナジー技術担当として就任した生駒宗久氏1人だけだった。生駒氏は、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社のエナジー技術担当CTOからフェローに就任しており、これまでも社内人材をフェローとして登用する事例が一般的だった。

 パナソニックは、今回の松岡氏と同様に社外人材の招聘による社内改革を進めてきた。2017年4月には、元日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がコネクティッドソリューションズ(CNS)社の新社長に、SAPジャパンでバイスプレジデント チーフイノベーションオフィサーを務めた馬場渉氏がビジネスイノベーション本部 副本部長 兼 パナソニックノースアメリカ副社長に就任。これまでのパナソニックでは難しかった、さまざまな取り組みを推進している。

 グーグルを筆頭に、米国でさまざまなキャリアを積んできた松岡氏はパナソニックにどのような影響を与えるのだろうか。同社は2019年10月31日、東京都内で松岡氏の会見を開催。今後の同社で期待される役割など、報道陣からの質問に答えた。

パナソニックの馬場渉氏と松岡陽子氏
パナソニックのフェローに就任した松岡陽子氏(右)。会見には松岡氏にパナソニックへの入社を薦めた馬場渉氏(左)も同席した

「ロボットやAIなどの技術で人の生活を助けたい」

 松岡氏は、中学生まで日本で暮らしていたもののその後米国に留学し、1993年にカリフォルニア大学バークレー校で科学学士、1995年にマサチューセッツ工科大学(MIT)でAI(人工知能)とコンピュータサイエンスの修士号、1998年にMITの電気工学とコンピュータサイエンスの博士号を取得。1998〜2000年にハーバート大学 工学・応用科学部の博士研究員を務めた後、2001年にカーネギー・メロン大学の教授に就任。2006年には、ワシントン大学に移籍し、2011年まで教授を務めている。

報道陣の質問に答える松岡氏
報道陣の質問に答える松岡氏

「テニスのために留学したがケガに泣かされ、何か他のことをやらなければならないと思ったときロボットに興味を持った。大学に入ってからどんどんロボットのことが好きになって大学院に進んで、ロボットをたくさん作った。ヒューマノイドロボットも作り、AI(人工知能)を組み込むようなこともやった。しかし、そのころのAI技術は満足がいくものではなかったこともあり、よりAI技術を進めるために人間の脳の研究をするようになった。それでも自分の思うようなロボットは作れないと感じた時に、これまで自分が学んできたロボットやAIなどの技術を人の生活を助けるために活用できるのではと考えた。これが人生の1つの岐路になった」(松岡氏)

 MITからハーバード大学に移って専攻したのは、ロボットやAI、そして脳を含めた医療関連の技術を生かした、ロボットによる人体・脳のリハビリ機器の開発だった。その成果により、カーネギー・メロン大学やワシントン大学の教授に選ばれたのだ。

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