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グーグルからパナソニックへ、松岡陽子氏の原動力は「人の生活を助けたい」製造マネジメント インタビュー(2/3 ページ)

パナソニックのフェローに、グーグル(Google)米国本社のバイスプレジデントで、スマートホーム製品「Google Nest」のCTOを務めた松岡陽子氏が就任する。松岡氏はパナソニックにどのような影響を与えるのだろうか。同社が開催した会見で松岡氏は、期待される役割など報道陣からの質問に答えた。

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Google Xの共同創設者を経て、Nestに参画

 そして2009年、松岡氏にさらなる転機が訪れる。グーグルが、現在の事業の延長線上にはないムーンショット(Moon Shot)を目指すための組織であるGoogle Xの共同創設者の1人として声をかけたのだ。Google Xに在籍した1年間で、自動運転技術のWaymoやスマートグラス「Google Glass」などの新規プロジェクトの立ち上げに関わった。松岡氏は「全て面白いことだったが、せっかく大学での研究をやめたにもかかわらず、まだ研究を続けているとの同じだった。もっと、人の生活を助けるためのことに携わりたいと考えているときに、大学時代の教え子が立ち上げたNest Labs(以下、Nest)に加わることになった」と語る。

2012年のCESで発表した「Nest Learning Thermostat」
2012年のCESで発表した「Nest Learning Thermostat」。居住者の行動パターンを学習することにより、居住者に対し快適な環境を自動的に提供する学習機能付きAI搭載サーモスタットだ(クリックで拡大)

 IoT(モノのインターネット)活用の先駆けともなったNestでは、住宅の空調設備を管理するサーモスタットを開発した。さまざまなセンサーを搭載するとともに、インターネットにつながるNestのサーモスタットは、基本的にはエネルギー節約が目的となる。

「一見サーモスタットとロボットやAIは何の関係もないように感じるだろう。例えば、腕を失った人にロボットの腕を作るとしても、そのロボットの腕が何でもやってしまうと、その人にとっては嫌なもになってしまう。サーモスタットも同じで、何でも自動的にやるのではなく、少しやってくれたり、使う人の気持ちを聞いてくれたりすると、より良いものになる。Nestでも、最初に開発したサーモスタットでエネルギー節約を極限まで行うAIを入れたが、それだと使う人に気に入られず、逆にどんどんエネルギーを消費するようになることが分かった。これが製品出荷の2カ月前のことだったが夜も寝ずに対応を進めて、ユーザーそれぞれの使い方に寄り添う製品に仕上げることができた。そして、実際にユーザー全体のエネルギー使用量の傾向を見ると、他のサーモスタット製品と比べてしっかりと省エネが実現できていた。これからも、その思いを持ってやっていきたい」(松岡氏)

 Nestは2014年にグーグルに買収されたが、その高いブランド価値が認められ、2019年10月から同社のスマートホーム製品は全てNestブランドに統一されることになった。

 松岡氏は、その後2015年にヘルスデータを扱うカンタス(Quanttus)のCEOを務め、2016年からはアップル(Apple)でヘルスケア製品開発に従事するも、2017年にはグーグルに戻ってNest事業に携わるようになり、現在に至っている。

 そんな経歴を持つ松岡氏はなぜパナソニックに入社するのだろうか。松岡氏は「大学院を卒業したころから、私のミッションは人の生活をより良くすることだった。私自身を例にとれば、会社では先進的なことをやっているものの、プライベートの生活では4人の子供、高齢の両親、そして夫の面倒をみなければならずとても大変。この状況を変えて行かなくてはと思い、家の中に付けたセンサーで自分のことを分かってくれるような環境を作り出すためのハードウェアをがそろっていて、実際にビジネスとして推進できる企業は、あまりない。パナソニックであれば、この思いを実現できると考え入社することにした」と説明する。

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