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「モノ+データ」の新たな製造業へ、成果創出のポイントは「データ専門会社」MONOist 2020年展望(1/3 ページ)

製造業のデジタル変革は加速する一方で2020年もさらに拍車が掛かることが予想される。その中で立ち遅れが目立っていたデジタル化による「モノからコトへ」の新たなサービスビジネス創出がいよいよ形になってきそうだ。ポイントは「専門の新会社設立」だ。

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 2019年はここ数年の流れに引き続いて、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などによるデジタル変革の動きが進んだ1年となった。MONOistでは製造業におけるIoTの変革について特集サイトなどを通じて、主に「つながる工場」「つながるサービス」の2つの方向から取り上げてきたが、スマートファクトリー化など「つながる工場」については、既に本格導入が進みつつあり、IoTやAIを駆使した新たな製造現場構築への取り組みが進みつつある。

 その中で、日本で遅れが指摘されてきたのが、IoTなどのデジタル技術を活用し「データ」を基軸とする新たなビジネスモデルの創出である。製造現場におけるデータ活用が進む一方で、自社のバリューチェーンの中で、データビジネスを組み込むような取り組みはなかなか成果が出ない状況が続いてきた。

 ただ、2020年はようやくこれらの「つながるサービス」の領域でも本格的に成果が生まれるフェーズに入りつつある。ポイントになるのは、データを中心に価値を生み出せるような体制がようやく見えてきたということだ。これらの体制の整理が進んだことで、2020年は新たなビジネス創出につながる動きが本格的に加速する見込みだ。

IoTの真価は効率化ではない

 製造業のデジタル変革やIoT活用などが当初から期待を集めていたのは、それが「売上高のトップラインを引き上げる」という可能性を持つからだ。

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製造業における生産ラインの収集データの活用状況(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

 製造業にとって従来のITツールは、「効率化」に特化したツールだった。特に日本では経営面での「効率化」に特化して使用され、「経営者は助けるが現場は苦しみが増えるだけ」というのが、多くの製造業にとっての「IT」であったといえる。

 ただ、IoTにより、従来とは異なる粒度でデータを取得し、活用できるようになった。これらを活用することで「効率化」ではなく「売上高拡大」への道が開けた。グローバルの多くの企業がこれらの可能性を生かそうと取り組みを加速させている状況である。しかし、日本の製造業の多くは実際には部分最適化された「製造の効率化」への取り組みについては進んでいるものの、肝心の「売上高拡大」に向けた活用が特に進んでいない状況である。

 経済産業省などが毎年公開している「ものづくり白書」では、ここ数年デジタル化による第4次産業革命をメインテーマとし、さまざまな切り口で「製造業の現状」を描いている。毎年4000社前後にアンケートを行っているが、この中で工場内の製造ラインにおけるデータ活用については、まだ比率は少ないものの着実に増加していることが示されている。

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収集データの活用状況(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

 一方で、製造ライン以外でのデータ活用はまだまだ限られているのが現実である。収集データを活用し、顧客とのやりとりやマーケティングの効率化につなげている企業の割合は全体のわずか3.9%にとどまっており、まだまだ製造現場以外での活用は限られている。

 2019年の新年展望(※)では、これらが進まない理由として「人材不足」「ビジネスリスクの大きさ」「ビジネスアイデアの欠如」「他社との協力体制の欠如」などを挙げたが、ようやくこれらを乗り越える兆しが見え始めてきた。

(※)関連記事:製造業のデジタル変革は第2幕へ、「モノ+サービス」ビジネスをどう始動させるか

 ポイントは「データビジネス」を中心とした「専門会社」の存在である。

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