いまさら聞けない「エッジコンピューティング」:5分で読める簡単解説(2/2 ページ)
IoT活用やCPS進展の中で、あらためて脚光を浴びている「エッジコンピューティング」。このエッジコンピューティングはどういうことで、製造業にとってどういう意味があるのかを5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。
エッジコンピューティングに求められるもの
では「エッジコンピューティング」には何が求められているのでしょうか。クラウドコンピューティングでの運用では「リアルタイム性」「コストの問題」「データセキュリティの考え方」という3つの課題が指摘されています。その隙間を埋めることが期待されているのです。
リアルタイム性の問題
「リアルタイム性」の問題では、クラウドコンピューティングにおける「通信遅延」がポイントになっています。クラウドコンピューティングでは通信での情報のやりとりが必須となりますので、必ずある程度の遅延が発生します。この点が、リアルタイム性が要求される「現場」で大きな問題となる場合があります。
あえて分かりやすく数字を当てはめて説明すると、クラウドとの通信の行きと戻りにそれぞれ1秒の遅延が発生するとします。そしてクラウド経由で制御する自動運転車が時速30kmで走っているとします。その際に、前方に障害物が飛び出してきたとすると、センサーがそれを感知しクラウドに送って処理をし、緊急停止の指示をクルマにフィードバックするという作業を行うと、その時には既に16m以上進んでしまっているという計算になります。それに制動までの距離が加わるとすると、事故は避けられません。
このリアルタイム性をもう少し掘り下げると、遅延が発生すると問題になるのは「同期性」が確保できない点になります。通信の遅延は常に一定時間で発生するわけではありませんので、受け取り手によっては情報の授受の時間が異なってきます。こうなると、それぞれの受け手が同期して動くことが難しくなります。製造現場では、複数の製造機械が高精度に同期することで、複雑な作業を高速で行います。5Gなどの通信の高容量化が進んだとしても、こうした状況への対応が難しいため、通信を使うクラウドではなく、エッジで処理することが求められています。
コストの問題
クラウドコンピューティングで全ての情報を収集し、その中で選別するというやり方では、無駄なデータの収集と蓄積に多くの時間やお金を費やすことになるます。これが「コストの問題」です。
IoTでは、従来のITが対象としていた人の作業だけでなく、機械が自動的に生み出す膨大な情報を集めることになります。しかしデータは、活用の意図などに合わせて意味付けやすり合わせなどを行わなければ使えません。活用できない状態のデータは全て無駄なデータといっても過言ではありません。しかし、クラウドコンピューティングでは、そうしたデータでも収集するための通信コストやストレージなどの費用は発生し、全く使わないものに膨大な費用が発生してしまいます。
そこで、エッジ側で意味のあるデータを選別して収集し、不要なデータを除く作業を行えば、これらのコストを抑えることができます。クラウドコンピューティングの課題をエッジコンピューティングで解決するという考え方です。
データセキュリティについての考え方の問題
3つ目が「データセキュリティの考え方」の問題です。スマート工場化が進む現在の状況では、必ずしも個々にデータを管理することが安全だとは言い切れない面がありますが、製造業では特にデータを社外に出したがらない企業も数多く存在します。そうした場合にはクラウド環境にデータを収集したり処理を行ったりするのが難しいため、エッジ側で処理をすることが求められるというわけです。またエッジ側で情報処理を行う機能を持つことで、データを外に出してもよい形に変換し、クラウドに集約するという形をとることもできます。
ここまで見てきたように「エッジコンピューティング」の必要性は、IoTやスマート工場化の進展があるからこそ、注目を集めてきたといえます。しかし、「クラウドかエッジか」の二元論的な形ではなく、両方を適材適所で活用していく「ハイブリッド型」の姿に今後収斂(しゅうれん)されていくと考えます。クラウドには「場所や環境を超えた情報共有」や「果てしない拡張性」などさまざまな利点があります。これにエッジの利点を組み合わせて、最適なデータ活用システムの構築を進めることが重要だといえます。
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