「データを生かす力」は既に「現場力」の1つ、コニカミノルタのモノづくり革新:インターネプコン ジャパン2020(2/2 ページ)
エレクトロニクス製造および実装技術の展示会である「インターネプコン ジャパン2020」(2020年1月15〜17日、東京ビッグサイト)の特別講演に、コニカミノルタ執行役生産本部長の竹本充生氏が登壇し、「デジタル化と現場力の融合による新たなモノづくり革新への挑戦」をテーマに講演した。
「データを生かす力」も「現場力」の1つ
IoT技術の急速な進展により、製造業は大きな変革期にある。従来のデータ活用は点在する限られた範囲のものだった。現在はデータ活用範囲の拡大し、さらに効率化が進んでいる。「これが次の革新的なモノづくりにつながってくる。人のスキルとオペレーション力、コミュニケーション力などに加え、データを生かす力も現場力の1つに今後はなってくる」と竹本氏は語っている。IoT技術を活用できる領域が広がることは予想されているが、これに想像力の高い人材が加わることでさらに人間の能力を伸ばす領域が拡大していくチャンスであると期待する。
これらを実現した姿が「デジタルマニュファクチャリング」だ。これは、あらゆるデータを収集し、その分析や活用範囲を広げることで今までにないワークフローへと改革し、新たな価値創造により客のQCDEF(品質、コスト、納期、環境、財務)向上を実現していくものだ。地域、企業、ECM(Engineering Chain Management)、SCM(Supply Chain Management)の領域を超え、従来以上に幅広いデータ連携を進める。「単一拠点だけではなく、他の生産拠点との連動も必要であり、これらを一元的に把握できるような仕組みをコックピットと称している」(竹本氏)。
コックピット導入の目的は、現場データを自動で収集し、定型的な管理指標の可視化と損益影響を簡単に把握できるようにすることだ。これにより判断のスピードアップを図る。また、継続的に管理をすることで数字に基づく共通理解を推進するという点もポイントだ。「進化のためにすべきことを工場全体で常に考えられるようにすることがスマート化のポイントである」(竹本氏)。
また、コックピット設計時のポイントとして、現場力を確実に利益につなげるために「現場活動と経営数字のひも付けが重要だ」と竹本氏は語る。同社のマレーシア工場での事例をみると、経営指標を頂点に各現場の実力が継続的に測定できる指標を作り、それをコックピット化しそれぞれの現場でモニタリングできるようにしている。
一方、生産現場のありたい姿を実現する手段として位置付ける「データサイエンス」については、2019年1〜3月から取り組みを開始した。推進リーダー、分析の専門家、現場実践メンバーが三位一体となり活動を推進する。生産のあらゆる業務領域でテーマを掲げ、進め方を探っているいるところだという。
竹本氏は「一番大事なことはデータが蓄積されても、そのデータをどう活用するか考え、効果を生み出すことだ。AIが進化しても、どんなデータを取るべきか、その結果をどう解釈するかは人が決定を下すことが重要となる。そのため、現在もこれからも現場力を高めるには人づくりがベースとなる」とポイントについて強調した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コニカミノルタ、コマツ、東芝が取り組むそれぞれのデジタル変革
日本マイクロソフトは、製造業向けのデジタルトランスフォーメーションの取り組み事例を発表。新たにコニカミノルタとグローバルでの包括的提携を発表した他、工場向けでは小松製作所、エコシステムでは東芝との取り組みを紹介した。 - コニカミノルタがスマートファクトリー分野に参入、「デジタル製造」を事業化
コニカミノルタは、IoTをベースにしたモノづくりソリューション「デジタルマニュファクチュアリング」を事業化することを発表した。 - コアは画像でIoT基盤で支える、コニカミノルタが描く製造業の姿
コニカミノルタは、ハノーバーメッセ2017において、同社のコア技術である画像を核とした技術群と、2017年3月に発表したIoTビジネスプラットフォーム「Workplace Hub」を組み合わせたデジタル製造ソリューションをアピールした。 - 「2019年度 GOOD FACTORY賞」受賞企業を発表、オムロンなど
日本能率協会は、優良工場表彰制度「2019年度 GOOD FACTORY賞」の受賞企業として、オムロン、オリンパス、花王、コニカミノルタ、ダイキン工業、デンソー、東レの7社、7工場を発表した。 - 10年で10事業から撤退、イノベーションに活路を見いだすコニカミノルタの挑戦
日系製造業は事業環境の変化に悩まされ続けている。その中で新たなビジネスの芽を生み出し続けることは非常に重要な課題である。「10年で10事業から撤退した」というコニカミノルタでは、ロジックでイノベーションを生み出すため、組織的な取り組みに力を注ぐ。 - エッジは強く上位は緩く結ぶ、“真につながる”スマート工場への道筋が明確に
IoTやAIを活用したスマートファクトリー化への取り組みは広がりを見せている。ただ、スマート工場化の最初の一歩である「見える化」や、製造ラインの部分的な効率化に貢献する「部分最適」にとどまっており、「自律的に最適化した工場」などの実現はまだまだ遠い状況である。特にその前提となる「工場全体のつながる化」へのハードルは高く「道筋が見えない」と懸念する声も多い。そうした中で、2020年はようやく方向性が見えてきそうだ。キーワードは「下は強く、上は緩く結ぶ」である。 - 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。