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マツダのコモンアーキテクチャとフレキシブルライン生産を支えるデジタル変革DMS2019(2/2 ページ)

モノづくりの専門展「日本ものづくりワールド 2019」(2019年2月6日〜8日、東京ビッグサイト)の基調講演に、マツダ 常務執行役員 グローバル生産・グローバル物流担当の圓山雅俊氏が登壇。「マツダのモノ造り〜モノ造りの志と挑戦〜」をテーマに、同社の基盤となるモノづくりにかける志と挑戦の歴史などを紹介した。

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コモンアーキテクチャとフレキシブルライン生産

 その後もマツダではモノづくり革新の取り組みを積極的に推進しており、同社の製品購入者に走る歓びと環境・安全性能を提供することを2007年に「サステイナブルZoom-Zoom宣言」として発表。その中で、新技術「SKYACTIYテクノロジー」を打ち出し、エンジン、トランスミッション、車体、足回りなど全てを見直し、ゼロから理想的なクルマづくりを目指した※)

※)関連記事:ロータリー、Zoom-ZoomからSKYACTIVへ、世界シェア2%のマツダが選んだ道

 その際にクルマの生産方針を抜本から変えていくことを決断している。商品競争力を高める多様性(FLEXIBILITY)とボリューム効率を高める共通性(COMMONALITY)の相反する2つの特性のトレードオフを打破し、技術革新を伴うさまざまな商品を開発と生産をしながら単独車種に近いビジネス効率を目指している。

 この戦略の軸になっているのが理想構造を追求するコモンアーキテクチャと理想工程追求のフレキシブルライン生産だ。この2つの取り組みを両立させるため一括企画というやり方で、開発と生産の徹底的な整合を進めてきた。一括企画とはスコープ全体を捉え、同一思想のもと全体最適を目指すプロセスである。

 また、コモンアーキテクチャは、固定(機能、構造、基準)と変動(寸法)を定義し、エンジン開発でも固定と変動を定めて開発に取り組んでいる。フレキシブル生産は、コモンアーキテクチャの考え方で設計した製品を高効率かつ柔軟に生産するもので、この技術に沿ってフレキシブルラインを構築している。このフレキシブル生産により、シリンダブロックの生産で1つのラインで45工程あったものを、SKYACTIVでは4工程に集約するなどの効果が生まれており、これによりリードタイムと設備投資を大きく削減した※)

※)関連記事:先手を打ったマツダの製造業革命――真の“コンカレントエンジニアリング”がもたらす新しい価値

モノづくりのデジタル変革が実現した価値

 こうしたモノづくりを開発部門や生産部門だけでなく、購買部門や取引先を加えた三位一体活動で行う。さらに物流部門や品質部門を加えてグローバルなモノづくり全体を捉えた一気通貫の五位一体活動に進化させている。この一気通貫とは部門ごとに目標追求するのではなく、全体最適視点から共通の目標を設定し、その実現に向けて関連部門が一体となり取り組むことだ。そこで導入を進めているのが、モノづくりのデジタル変革である。

 従来の開発では、各工程で開発したものを次工程に送るバトンタッチ型の手法を取っていたが、これでは最終的な製品の評価は実物を作ってみて初めて分かることになり、そこから修正するためには手戻りが大きくなるなど、期間的にもリソースの面でもロスを生んでいた。これではコモンアーキテクチャやフレキシブル生産は実現できない。

 そこでマツダでは1990年からモノづくりのデジタル変革を開始し、生産工程のデータ化、仮想環境での検証を先行的に進めてきた。現物の作成前にモデルによる事前検証を行い、生産技術と製品開発をコンカレント(並行)に行うことで手戻りを減らした。ここで重要な役割を果たすのがモデルベース開発(MBD)だ※)。これにより「現実の世界でのモノづくりでは、MBDの答え合わせをするという形で、作業効率を大幅に高めることができる」(圓山氏)。

※)関連記事:モデルベース開発は単なる手法でなくモノの考え方、マツダ流の取り組みとは

 さらに、現在では、デザイン面でもマツダらしい独自性を強めるという目的で、「魂動デザイン」への取り組みを行っている※)。「クルマは芸術作品であるという思いから、デザイナーから製造現場のスタッフも含めてCar as ARTとしてのモノづくりに向き合っている」(圓山氏)。デザイン意匠を忠実に実現する他、色も造形と考えて鮮やかさと陰影を両立させるアクアテック塗装などにも取り組んでいる。

※)関連記事:「魂動デザイン」は足し算ではなく引き算



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