マツダの「モノづくり革新」を推し進めるTPM活動の神髄とは:いまさら聞けないTPM(7)(1/3 ページ)
本連載「いまさら聞けないTPM」では、TPM(Total Productive Maintenance)とは何か、そして実際に成果を得るためにどういうことに取り組めばいいかという点を解説する。最終回の第7回は、TPM活動の実践事例として、2015年3月末までマツダの常務執行役員を務め、「モノづくり革新」の推進に貢献した中野雅文氏の寄稿をお届けする。
マツダは、世界の自動車業界でスモールプレーヤーとして生き残るため、『魂動デザイン』『人馬一体』『燃費』にこだわり、「モノづくり革新」による新世代技術「SKYACTIV」を搭載したクルマづくりを進めています。そのこだわりをサポートする製造では、ロスのないストレート生産を目指し、ラインづくりにTPM活動を活用してきました。本連載の最終回として、その活動の一端をご紹介します。
マツダは、世界中のお客さま1人1人に笑顔でカーライフを楽しんで頂くために、「退屈なクルマはつくらない」を合言葉に、走る歓びと優れた環境・安全性能を磨いたクルマで新しい価値を創造しています。
お客さまの期待を超えるクルマに導入されるSKYACTIV技術の開発・製造には、クルマの構造・機能を根本的に見直すと同時に、クルマのつくり方そのものを革新していくために、開発、生産、購買、そしてサプライヤ様までが一体となり、マツダの「モノづくり革新」を推進しています。
その中では、商品競争力を高める多様性と量産効率を高める共通性の2つを高次元で両立させるブレークスルーのための着眼点として、「5〜10年先の将来を見通した商品・技術」を全車種対象に企画する「一括企画」を行い、「コモンアーキテクチャー(基本骨格)構想」で具体的な性能・機能・技術・部品開発を熟成させる商品づくりを進めています。一方、設計構造や生産プロセスの技術革新で単独車種生産に近い量産効率を生み出す「フレキシブル生産構想」により生産方式も革新しています。
「世界のベンチマークになるような革新的なベース技術を搭載したクルマ」を実現するため、生産部門も数多くの挑戦をしています。『魂動デザイン』では、クルマに命を与え、その生命感をカタチにする哲学に基づくデザイン意匠を忠実に再現するプレス成型技術、デザインをさらに引き立てる鮮やかさと陰影を両立させたボディカラー「ソウルレッド」で塗膜設計と塗布技術を大きく進化させました。
『人馬一体』では、軽量化、静粛性に貢献する業界最小肉厚をバラツキなく実現する超高速/高真空のアルミ鋳造技術の開発による軽量化と、剛性・衝突安全性を両立させた軽量化ボディー&シャシーの実用化を実現しました。
『燃費』では、燃費改善に寄与するエンジンの各部品間の抵抗値低減や燃費に影響する品質特性のバラツキを最小化する良品条件管理、およびそれらを製品構造と工程設計へフィードバックする品質改善プロセスを整備してきました。これらのように、開発だけでなく生産現場もお客さまにマツダらしい価値を提供して、ドライバーの皆さまに運転を楽しんで頂くことに貢献してきており、現在も、さらに今後も、モノづくりの革新に挑戦し続けています。
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