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紙切れ1枚からの起業、ソニーがスタートアップ創出ノウハウを外部提供へイノベーションのレシピ(4/4 ページ)

ソニーは、2014年から取り組んできた社内スタートアップの創出支援制度で得たノウハウを外部提供し、スタートアップ支援に本格的に乗り出すことを発表した。

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新入社員が生み出した「wena wrist」

 「wena」は「wear electronics naturally」のコンセプトのもと、自然に身に付けられるウェアラブルシリーズを提案するテクノロジーブランドとして生まれ、その腕時計タイプのものが「wena wrist」である。時計部分とバンド部分に分かれ、バンド部分にスマートウォッチの機能を組み込んでいることが特徴だ。

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「wena wrist」と「wena wrist」のベルト内の構造(クリックで拡大)

 事業化を進めたのは当時ソニーの新入社員だったというソニー Startup Acceleration部wena事業室統括課長の對馬哲平氏だ。對馬氏は「学生時代からウェアラブルデバイスが大好きで、複数のデバイスを身に付けていた。そこで何個も身に付ける必要がなく最高に自然なものができないかと考えていた」と発想の原点について語る。

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ソニー Startup Acceleration部wena事業室統括課長の對馬哲平氏

 ソニーでは新入社員に対し「好きなものを作って良い」という研修があり、對馬氏はその期間を生かして「wena wrist」につながるプロトタイプを作成したという。しかし、「新入社員のアイデアをどこに持っていけば事業化できるのか分からなかった」(對馬氏)とする。そこで行き着いたのがSSAPだったという。

 2015年3月に新入社員の同期3人と事業化の検討を開始し、2015年8月にはクラウドファンディングを実施。当時としてのクラウドファンディングでの調達額の最高記録を達成した後2016年6月から一般販売を開始した。2017年2月には第2弾製品を発表した他、さまざまなブランドとコラボレーションを推進。2019年2月には英国での販売も開始するなどグローバル展開に乗り出している。

 對馬氏は「学生時代から抱えていたアイデアをSSAPを通じて事業とすることができた。アイデアはあるけれど、どうしたらよいのか分からないとする人は多いと思うが、SSAPのような支援の仕組みを使うことで、事業のプレーヤーとして乗り出せる人がもっと増えていけばよい」と考えを述べている。

放課後活動から生まれた「toio」

 一方で、技術者が自由に開発を行える「放課後活動」の中から生まれたのがロボットトイプラットフォームの「toio」である。

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「toio」で遊ぶイメージ。キューブロボットやリング型コントローラーなどは共通だが、プラットフォームとしてさまざまなアプリケーションで遊べる(クリックで拡大)

 「toio」は、「toioコンソール」とリング型コントローラー「toioリング」、キューブ型ロボット「toioコア キューブ」で構成され、さまざまなジャンルの専用タイトルと組み合わせて、アクションゲームやパズルゲーム、プログラミングや動きのある工作などを行える新たなプラットフォームである。直接おもちゃを作り、操作することで、枠にとらわれない自由な遊びを楽しむことができる。

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ソニー・インタラクティブエンタテインメント T事業企画室 課長の田中章愛氏

 事業化を行ったのは、当時ロボットの開発者だったソニー・インタラクティブエンタテインメント T事業企画室 課長の田中章愛氏と、デジタルカメラのソフトウェアエンジニア、ソニー・コンピュータサイエンス研究所のゲーム技術者のチームだという。当時は「リアルな世界で、子どもたちが主人公として没入して、ゲームやさまざまな遊びが行えるようなものを作りたいというのが最初の発想だった」と田中氏は語る。その後、ロボットの形で紆余曲折があり、最終的にキューブ型の小さなロボットという形で落ち着いたという。

 これらの取り組みの中で「実際に子どもたちに使って遊んでもらいたい」(田中氏)という思いから事業化を検討。2016年にSSAPのオーディションを突破し、事業化を本格化した。2017年に製品発表を行い、クラウドファンディングで先行予約を行った。そして、これらのフィードバックを集めた上で、2019年3月20日から日本国内向けに一般販売を開始する。SSAP発だが、toioはチームごとソニー・インタラクティブエンタテインメントに移管。プラットフォームビジネスで先行するPSの知見などを生かし、事業を拡大していく方針だという。

新たに圧電デバイスでB2Cに挑戦する京セラ

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京セラ 研究開発本部 システム研究開発統括部 ソフトウェア研究所副所長の横山敦氏

 社外からのSSAPに参加し、常駐第1号となったのが京セラである。京セラでは独自開発の圧電デバイスの可能性を感じ、その事業化に向けてSSAPに参加した。

 オープンイノベーションなど社外協業自体は京セラでもさまざまな取り組みを行っているが、今回SSAPに参加した理由について、京セラ 研究開発本部 システム研究開発統括部 ソフトウェア研究所副所長の横山敦氏は「社内に圧電デバイスを使ったB2Cの新規事業のアイデアを持っている社員がいた。しかし、京セラではデバイスのノウハウはあってもB2C製品のノウハウはない。B2Cでさまざまなノウハウを持つソニーのリソースを活用できるという点にSSAPの魅力を感じた」と語っている。

 2018年10月から開始し「Ideation」のフェーズを経て、現在は「Incubation」のフェーズに入ったところだという。「活動を開始して5カ月となったが、参加して本当によかったと感じている。2019年4月をめどに事業検証を行う」(横山氏)としている。

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