「モノ売り強者」が「コト売り」に挑戦する理由、村田製作所の場合:MONOist IoT Forum 名古屋2018(後編)(3/3 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2018年7月12日、名古屋市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋」を開催した。名古屋での同セミナー開催は2度目となる。
IoTやAIの具体的な事例を紹介
「MONOist IoT Forum in 名古屋」では、ここまで紹介してきた基調講演、特別講演、ランチセッションに加え、4本のセッション講演も実施した。その様子をダイジェストで紹介する。
IoTやAIによるビジネス変革を訴えた日立システムズ
日立システムズは「日立システムズ IoT・AIビジネスの取り組み」をテーマとし、スマートファクトリー化におけるIoT、AI活用のポイントと具体的な成果について紹介した。
日立システムズ 産業・流通フィールドサービス事業グループ 産業・流通インフラサービス事業部 事業部長の前田貴嗣氏は「スマートファクトリーに向けた案件は増えている。スマートファクトリーは(データを)つないで、集めて、見える化し、課題に気付き、改善するという流れである。先進企業では『改善』に入るところ。ただ、『つなぐ』段階でもかなり難しく、できていない企業が多いのも現実だ」と述べている。
また、これらの障壁になるものとして「システム環境の壁」「データ定義の壁」「データ連携の壁」「会社組織の壁」「技術スキルの壁」「運用上の壁」という6つの壁があることを紹介した。
製造現場のデータ活用のポイントを紹介したSAS Institute Japan
SAS Institute Japanは、データ分析専門企業としての知見を生かし「データ活用のポイント」の観点から、データ活用を成果に結び付けるポイントを訴えた。
SAS Institute Japan ソリューション統括本部 プラットフォームソリューション統括部 IoT&Advanced Analyticsグループ マネージャーの松園和久氏は「データ活用に向けては3つの大きな問題がある」と強調する。
「1つ目はデータそのものだ。どういうデータがあるのかという点や新たに取得すべきものは何かという点だ。2つ目はデータ分析である。データ分析の知見がないということやデータサイエンティストがいるのかどうかという点である。3つ目がシステム化だ。データ分析の結果を実際の業務に反映させるために既存システムに組み込む必要があるが、その準備が大丈夫かという点である」(松園氏)
さらにこれらを実現するための前提として「組織作り」の重要性も強調した。「データ分析で成果を出すには非常に多くの人が関わらなければならない。分析する人、システムを運用する人、活用する人など、最低でも3部門が連携しなければならない。この組織作りがポイントである」と松園氏は述べている。
サイバー攻撃への対応の重要性を強調したテナブル
テナブル・ネットワーク・セキュリティ・ジャパンは「IT/IOT環境で実施する継続的脆弱性管理」をテーマとし、サイバーエクスポージャーの重要性を訴えた。
スマートファクトリーなどIoTの活用が広がりを見せる中、工場もいつでもサイバー攻撃に狙われるようになる。
テナブル・ネットワーク・セキュリティ・ジャパン セールスエンジニアの梅原鉄己氏は工場や発電所などに対するサイバー攻撃の被害事例などを紹介。「サイバー攻撃に常に狙われる状況になる中、サイバーリスクを影響度とリスクの許容度で視覚化し対策の優先順位付けをする必要がある。さらにこれらをリアルタイムで把握することが重要だ」(梅原氏)と強調した。
製造業のIoT変革の価値を訴えたマイクロソフト
マイクロソフトは「マイクロソフトが推進する製造業のためのIoT」をテーマとし、同社のクラウドサービス「Azure」などの取り組みで実現するデジタル変革の価値を訴えた。
マイクロソフトでは「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」をキーワードに、エッジ領域からクラウド領域までをシームレスにつなぎ、データ連携を進めるとともに分析の価値などを提供できるようにしている。
日本マイクロソフト コンシューマー&デバイス事業本部 IoTデバイス本部 プリンシパルソリューションスペシャリストの尾形徹氏は「IoTは、モノからつながることでデータを取得、蓄積し、その後分析して洞察を得る。そして最終的にアクションにつなげることで価値を生む。ここまでの一連の流れが必要だが、マイクロソフトはその全域をシームレスで実現する。誰でも簡単にIoTで成果が出せるようにしていきたい」と述べている。
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