製造業のビジネス変革が加速、「工場外」をどう取り込むのか:MONOist IoT Forum 福岡2018(前編)(1/2 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2018年6月28日、福岡市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 福岡」を開催した。福岡での同セミナー開催は初となる。
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2018年6月28日、福岡市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 福岡」を開催した。福岡での「MONOist IoT Forum」の開催は初めてで、経済産業省 九州経済産業局の後援を受け「ものづくり白書 2018年版」の紹介も行っている。
本稿では前編で「製造業のビジネスモデル変革」をテーマとした2講演の内容を紹介する。基調講演であるパナソニック スマートファクトリーソリューションズ 常務取締役でコネクティッドイノベーション ストラテジックビジネスユニット長の足立秀人氏の講演「パナソニックの自動化ソリューションを工場外へ」と特別講演である経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室課長補佐である安藤尚貴氏の「2018年版ものづくり白書の概要」である。
後編では、「工場と製品のIoT活用」をテーマに、安川電機 技術部 技術企画部部長の園原吉光氏の講演と、組込みシステム技術協会(JASA)技術本部 IoT技術高度化委員会 委員長の竹田彰彦氏の講演、その他の講演内容について紹介する。
パナソニックが取り組む工場外の自動化
パナソニック スマートファクトリーソリューションズは実装機や溶接ロボットシステムなど、製造業の工場内の業務の自動化に貢献するソリューションを展開し、豊富な導入実績を保有している。同社が現在、これらをベースとしながら取り組むのが、「工場外での自動化」の提案である。
パナソニック スマートファクトリーソリューションズの足立氏は「従来の取り組みは工場内での現場プロセスイノベーションがポイントとなっていた。これにパナソニックグループが保有しているメカトロニクス技術や精密加工技術、AI技術、画像処理技術、センシング技術、通信技術などを組み合わせて工場外でも現場プロセスの革新を実現できると考えた」と述べる。
これらの方向性から“工場外”として同社が取り組むのが、流通業界、物流業界、食品加工業界の3つである。
特にさまざまな取り組みが広がるのが、流通業界向けの取り組みだ。足立氏は「労働人口減少により、あらゆる業界で人手不足が深刻化しているが、その中でも特に深刻なのが流通業界である。さらにeコマースの拡大など業界の大きな変化も生まれている。ただ、流通業界の運用の中身を見ていくと、情報がつながっておらず、個々の業務がバラバラになっている状況がある。製造業内のシステムのように、これらを一元化し運用の最適化を図ることで、抜本的な改善が可能だと考えている。そのための製品やソリューションの提案を進めていく」と述べている。
具体的な取り組みの例として、完全自動セルフレジ機「レジロボ」がある。レジロボは、利用客がバーコードをスキャンした商品を専用の「スマートバスケット」に入れ、バスケットごと専用レジに設置するだけで自動的に精算と袋詰めをするというものだ。店員がレジで商品のスキャン登録や袋詰めをする必要がないため、店舗オペレーションの省力化に貢献する。既にコンビニエンスストアなどで実証実験を進めているという※)。
※)関連記事:レジ作業時間を短縮する完全自動セルフレジ機の実証実験を開始
さらにウォークスルー型RFID会計ソリューションなども展開。これは、店舗内の各商品にRFIDチップを付与したバーコードシールを貼付し、このRFIDをウォークスルー型のレジが読み取ることで、袋にいれたままで通り抜けるだけで決済が可能な仕組みである。レジの省力化だけでなく、製造工程からRFIDを貼付することで個体管理とトレーサビリティー確保を実現する。RFIDとBIツールを組み合わせることでサプライチェーン全体の可視化を実現する考えである。こちらもホームセンターなどを展開するトライアルカンパニーと実証実験を進めている※)。
※)関連記事:越える業種の壁、トライアルが目指す流通革命とパナソニックが目指す工場外自動化
足立氏は「店舗運用や製造工程など単独の業務の効率化だけでなく、サプライチェーン全体の効率化を実現できる」と考えを述べる。
物流や食品加工業界での取り組み
物流業界向けでは、低床型の自動搬送ロボットの事例を紹介した。これは物流関連企業の要望に応えたものだという。「重たいものを運びたいが、レトロフィットが条件だとする要望に応えて開発したものだ。高さ10数cmの低床型で台車の下に潜り込んで移動を支援する。物流現場などではこのロボットが100台規模で自律的に動く。柔軟性を実現するには、こうした自律型デバイスが必須となる」と足立氏は述べている。
食品加工業界向けでは、京都のスキューズと協業し、弁当におかずなどを詰める「異載検品装置」を展開。食品工場向けの自動化ソリューションを提案する。特徴は1時間3600食に対応する高速性や省スペース性などに加え、さまざまなおかずなどに対応するためのハンド部分の交換容易性などがある。足立氏は「製造業の工場にあるようなシステムなどが食品工場ではまだまだ未整備だ。ロボットなどだけでなく食品工場向けのMESなど一気通貫でつなぐことで得られる価値を追求していきたい」と足立氏は述べている。
将来的には「製造と物流、店舗が連動する新たなサプライチェーンの仕組みを構築できることが理想だ。RFIDにより製造工程から個体管理を実現し、それが物流でどのような位置にあるかが把握できるようになる。個別の製品をいつでも好みのタイミングで受け取れるようになる。そういう世界を実現していきたい」と足立氏は抱負を述べている。
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