越える業種の壁、トライアルが目指す流通革命とパナソニックが目指す工場外自動化:第4次産業革命の現在地(1/4 ページ)
人手不足に悩む流通業界だが、改革を実現するには何が必要だろうか。トライアルカンパニーは、ITとオートメーションの活用に活路を求めた。トライアルカンパニーがパナソニックと組んで取り組む、流通改革の現場を追う。
国内の流通環境は大きな転換期を迎えている。高齢化と人口減少により全体的な市場が縮小している一方で、米国Amazon.comに代表されるインターネット通販が急速に拡大しており、従来の流通構造が大きく変わろうとしているのだ。その中で、IT(情報技術)とAI(人工知能)関連技術を軸に、自社ビジネスを大きく変革しようとしているのが、トライアルカンパニーである。
「時代の変化に対応できないと生き残れない」
トライアルカンパニーは福岡県に本社を構える小売企業である。大型のスーパーマーケットである「スーパーセンタートライアル」などを中心に店舗の拡大を進め、現在は全国に212店舗、年間の売上高は3719億円(2017年3月期)を稼ぎ出しているという。
ただ、流通構造の変化は加速するばかりである。トライアルカンパニーグループにおいてソフトウェア開発を担うティー・アール・イーの代表取締役である西川晋二氏は「流通構造の変化には危機感が必要。時代の変化についていかなければ生き残れない。寡占化を進めていくとともにオペレーションの効率化を進めていくことが重要だ」と述べている。
トライアルカンパニーが特徴的なのが、自らを流通企業ではなく「IT企業だ」としている点である。同社は30年前から流通小売りのバックヤードを支えるITの強化を積極的に進めてきた。独自システムの構築の他、中国に専用の技術者を抱えるなど、さまざまな領域で大きなIT投資を行っている。トライアルカンパニーで情報システム部門が独立して誕生したティー・アール・イーの代表取締役 西川晋二氏は「もともとトライアルカンパニーでは『流通を科学する』ということを目指して、商品戦略や店舗戦略、顧客満足への向上に取り組んできている」と述べる。
こうした中で、同社が新たに取り組んでいるのが、ITやAIを駆使した流通オペレーションのスマート化に向けた数々の実証実験である。
西川氏は「市場が大きく減少する中で、流通小売業として何を行うのかということを研究していかなければならない。インターネット通販では全ての顧客行動がデータ化されておりその蓄積を戦略に生かしているが、同様のことをリアル店舗でも実現する。実店舗でもデータ化領域を増やすことで、データによるイノベーションを実現したい」と今後の方向性について述べている。
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