「センシングできなければIoTは機能しない」ソニーのイメージセンサー戦略:画像認識(2/2 ページ)
「電子機器トータルソリューション展」(2018年6月6〜8日、東京ビッグサイト)の基調講演に、ソニー 執行役員 コーポレートエグゼクティブの上田康弘氏が登壇し、イメージセンサー戦略について語った。
IoTのカギを握るセンサーの意味
今後人類には、突き当たる2つのメガトレンドがある。1つは社会課題の深刻化(人工増加、高齢化、都市部集中)だ。これにより、社会インフラの破綻(交通渋滞、治安悪化、医療渋滞)や深刻な労働不足(産業の維持、発展が困難)などの発生が予想される。もう1つは生活が豊かになったことに伴う個人要求の追求(より快適に、より心地よく、自分らしく)であり、これは豊かで保証された高齢者生活、サービスのパーソナライズ化、潜在欲求地の発見などにつながる。
ソニーでは、これらの課題を解決するために、交通のスマート化(自動化、効率化)、安心安全のスマート化(エビデンス取得、犯罪や事故の未然防止)、産業のスマート化(自働化、自律化、人とロボットの住み分けと共存)、サービスのスマート化(個人に寄り添うサービスへ)、医療のスマート化(難病・生活習慣病克服、治療から未病へ)など、各種のスマート化へ向けて、商品開発を進めていく方針だ。
同社がコアとしているイメージセンサーの位置付けだが「IoTでも得られるデータの始まりはセンシングである。モノがセンシングできないとそのデータをAIに判断させることができない。結局センシングできなければCPSは機能することはない。実社会の詳細をいかにして切り取るか、感情や心をいかにセンシングするかが、ポイントとなる」と上田氏は重要性を強調する。
さらに、上田氏は「今後は人の目を越えた画像センサーがIoTの進化を支えることになる」と指摘した。また、ソニーのイメージセンサーには、構造的差異化ポイントとして「裏面照射構造で明るいセンサー」である点、「積層構造で機能を追加できる」という点の2つの特徴があるとし、これらを強化していく方針を示している。
イメージセンサーでスマートファクトリーへ
第4次産業革命の中、CPSのベースとして、産業革新を促す共通基盤を構築するビジネスや、既存ビジネスモデルの変革、基盤上での新たなビジネスモデル(シェアリングエコノミーなどもこのモデル)の3つのビジネス変革について考える必要があるという。
この内、既存ビジネスモデルの変革という面で、ソニーは工場のスマート化を図るスマートファクトリーに取り組んでいるという。CPSのもう1つの主役がAI(人工知能)である。AIが特に力を発揮できる領域は属人的な「暗黙知」の世界だ。すり合わせ技術などをAIを活用することで自動化やシステム化でき、これによりモノづくりマネジメントの標準化が進む。
ただ、AIの普及が進めば、従来の日本製造業の付加価値が低下することも予想される。熟練ノウハウの価値低下や技術伝承の容易化により、技術流通は促進される。付加価値を低下させないためには「複雑な因子をすり合わせて、開発や生産の効果と効率の最大化を実現する、新機軸のモノづくりに取り組むことが不可欠だ」(上田氏)とする。
ソニーは、こうした中でスマートファクトリー化を進めてきた。ソニーのスマートファクトリーは、バリューチェーン、サプライチェーンをスマート化することであり、一般的な工場の自動化とは一線を画すという。ソニーのAIには、S-DeePという深層学習のシステムがある。S-DeePはGUIにより簡単にプログラムできるという特徴があり、製造現場などさまざまな領域で簡単に利用可能だ。上田氏は工場でAIに需要予測をさせたところ、人の予想よりも誤差の範囲が小さくなり、これにより生産効率を大幅に上げたという例を紹介した。この事例のように「スマートファクトリーを導入する、AIを使うということは、工場の自動化、コスト低減ということが目的ではない。重要なのは先頭で、先にある風景を見に行こうとすること。これが全てだ」と述べている。
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