センサーが向かうべき将来とは、走り以上に求められる環境と安心安全:車載半導体(1/2 ページ)
「電子機器トータルソリューション展」(2018年6月6〜8日、東京ビッグサイト)の基調講演に、デンソー デバイス事業部 常務役員の鶴田真徳氏が登壇。「デンソーの車載向け半導体/センサーの向かうべき将来について」をテーマに、車載半導体メーカーとして独自の技術開発を進めてきた事例にとともに、今後の展望を語った。
「電子機器トータルソリューション展」(2018年6月6〜8日、東京ビッグサイト)の基調講演に、デンソー デバイス事業部 常務役員の鶴田真徳氏が登壇。「デンソーの車載向け半導体/センサーの向かうべき将来について」をテーマに、車載半導体メーカーとして独自の技術開発を進めてきた事例とともに、今後の展望を語った。
デンソーは自動車関連分野を中心に、生活や産業関連機器などに自動車技術を応用した事業も展開している。同社の半導体事業は来るべき自動車のエレクトロニクス化を見据え、高品質な半導体の開発、生産を手掛けたのが始まりだ。
現在、同社のデバイス事業部で扱う製品は、ASIC、パワーモジュール、半導体センサーの3分野に大きく分かれており、これらの製品は社内で開発している回路や実装、ウエハープロセスといった技術に支えられている。パワーモジュールでは駆動用モーターを動作させるパワーデバイスである「パワーカード」やモーターコントローラー、ICレギュレーターを展開している。半導体センサーとしては、加速度・圧力・光・湿度向けのセンサーなどを、ASICではエンジンECU用、電池監視ICなどを扱う。「当事業製品の市場での故障率は1PPM(100万分の1)以下であり、車載品質の確保を最優先に製品拡大を図っている」(鶴田氏)と、品質の高さに対して自信をみせた。
エレクトロニクス部品は自動車の機能において重要な役割を担っており、半導体は自動車の電子化を支える重要部品となった。カーエレクトロニクスの歴史を見ると、最初は内燃機関をはじめとする機械部品の技術進化に貢献した。トランジスタやマイコンの発明により、1970年代以降は半導体が機械部品を制御することで、特に環境分野で性能向上が進んだ。エンジン制御の電子化や、モーターを動力としたハイブリッド車(HV)の登場はその象徴的な事例である。
HVシステムをコンポーネント別にみると、基幹部品が半導体に支えられていることが分かる。HVは、電池パックの電力をインバーターが変換し、モータージェネレータに伝達することで、駆動力の創出やエンジンのアシストを行う。電池は駆動用バッテリーの他、12Vの補機バッテリーも搭載され双方のバッテリー間の電圧変換をDC-DCコンバーターが担う構成だ。電池パックにはリチウムイオン電池の状態をマネジメントするための電池監視ユニットが搭載されている。
この中にある電池監視ICに使われるアナログICは、より多くのバッテリーセルを高精度に監視するために高耐圧化が進んでいる。DC-DCコンバーターは小型化と高効率化のため、磁気部品を小型化できる高周波駆動の半導体が求められているという。インバーターも同じく小型化と高効率化が要求されており、より低損失なパワーデバイスの実現がカギを握る。
講演では、この中から、インバーター用パワーデバイスについて説明した。車載用インバーターの出力はエアコンや鉄道向けなど他の用途に比べて大変高いレベルにあるという。こうした出力密度の向上はIGBTの進化で実現したが、近い将来、IGBTの限界レベルに到達すると予想される。このため、SiC(シリコンカーバイド)などワイドバンドギャップ半導体の採用が検討されている。
しかし、SiCはウエハーの基になる結晶を作製する時に結晶内に欠陥が含まれてしまい、デバイスとしての歩留まりに影響を与えているという課題がある。そのため、価格低減と品質向上のためウエハーの結晶欠陥の低減が必要不可欠となっている。デンソーでは、この課題を克服するため、欠陥の少ないSiCの単結晶をつくる「RAF(Repeated-a-face)法」とい技術の確立に取り組んでいる。「RAF法により結晶欠陥は約100分の1の低減できることが実証できている」(鶴田氏)という。
温暖化防止や大気汚染対策のため、世界中でCO2や排ガスなど排出規制が強化されており、その中で自動車メーカーは電動化の取り組みに積極的だ。Volvo Cars(ボルボ)は2019年から全モデルに電動パワートレインを設定し、2021年までに電気自動車(EV)を5車種販売すると発表した。鶴田氏はパワートレイン別の車両販売台数の予測グラフを示して「2025年には約65%が何らかの電動化車両になることが見込まれている」と述べた。
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