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センサーが向かうべき将来とは、走り以上に求められる環境と安心安全車載半導体(2/2 ページ)

「電子機器トータルソリューション展」(2018年6月6〜8日、東京ビッグサイト)の基調講演に、デンソー デバイス事業部 常務役員の鶴田真徳氏が登壇。「デンソーの車載向け半導体/センサーの向かうべき将来について」をテーマに、車載半導体メーカーとして独自の技術開発を進めてきた事例にとともに、今後の展望を語った。

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人間の目や脳と同等以上のカーエレクトロニクスを目指して

 デンソーでは安心安全のコンセプトとして、緊急時の危険回避で被害を軽減する「もしもの安全」と、「認知」「判断」「操作」を支援することによる安心を提供する。このように安心安全を実現することによって、安心してクルマを使えるようにする世界をデンソーは目指しているという。

 これらを実現するシステムとして、走行環境認識や車両運動制御などクルマを運転するのに必要な技術と、人とクルマをつなぐHMI(ヒューマンマシンインタフェース)、社会やインフラとクルマをつなぐ情報通信などの技術全般にデンソーは取り組み、総合的な開発を実践してきた。

 安心安全なシステムを実現する製品とその役割は、クルマからの距離によって変わるという。例えば100m先までは、走行環境認識関連の製品である画像センサーやミリ波レーダー、ソナー、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)などが担当する。それ以上の距離では、情報通信の製品でロケーターやV2X、ETC2.0、DCM(データコミュニケーションモジュール、車載通信機)などが担う。車室内ではHMIの製品(コックピットシステム、メーターやHUD(ヘッドアップディスプレイ)、DSM(ドライバーステータスモニター)などがドライバーとクルマをつなげる。

 これらに対して、デンソーの取り組みとしては、カメラでは、車載用画像センサーの高性能化を実現し、夜間歩行者の認識に対応している。ミリ波レーダーでは信号処理技術(MUSIC、Multiple Signal Classification)、分解能を向上し、認識精度を改善した。これらの技術は、トヨタ自動車の運転支援システム「Toyota Safety Sense」の第2世代版に採用されている。

 ドライバー主体の運転から自動運転に代わる中でのカーエレクトロニクスの全体像をみると、いずれも人間の目や脳と同等以上の能力が要求されるという。歩行者などを認識する知覚には、ドライバーの目以上の検出力がある環境認識センサーが必要だ。また、人の脳と同等以上に周辺環境を把握できるAI(人工知能)技術も不可欠になる。とっさの判断に向けては、最適な経路を決定できる超高性能プロセッサ「DFP(Dataflow Processor)」の開発に取り組んでいる。

 また、AI技術の応用として、次世代画像認識システムに向けてDNN(Deep Neural Network)を使うための開発体制を整えている。アルゴリズムについてはパートナー企業や大学と画像認識技術の共同開発を推進中だ。学習データは海外拠点やベンチャーとの協力により、大量のデータを効率よく収集している。さらに、最適な計算環境の構築を目指し、グループ会社のデンソーアイティーラボラトリや大学とも連携。そして、画像センサーへの搭載のため半導体メーカーとハードウェアIPの開発にも取り組んでいる。

 現在、自動車業界は100年に一度といわれる変革が起こっている。自動運転、電動化、コネクティッド、シェアリングなど大きなイノベーションが押し寄せ、モビリティとしての価値創造も求められる。デンソーでは、こうした変化をいち早く捉えて、技術革新を急スピードで進めてきた。そして、鶴田氏は「クルマには今、ドライバーにも歩行者も安心する交通事故のない世界、移動する時間や空間の快適さや便利性、環境負荷が限りなくゼロに近いことなどの価値が、走り以上に求められている」と指摘した。

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