デンソーが2018年度の研究開発費を5000億円規模に、国内工場への投資も:製造マネジメントニュース
デンソーは、2018年3月期(2017年度)の連結決算を発表した。売上高は車両生産の増加や拡販により前期比12.8%増の5兆1083億円、操業度差益や合理化努力などにより営業利益は同24.8%増の4127億円、当期純利益が同24.4%増の3206億円だった。
デンソーは2018年4月27日、東京都内で会見を開き、2018年3月期(2017年度)の連結決算を発表した。売上高は車両生産の増加や拡販により前期比12.8%増の5兆1083億円、操業度差益や合理化努力などにより営業利益は同24.8%増の4127億円、当期純利益が同24.4%増の3206億円だった。営業利益は、銅やアルミニウムなどの材料費や将来投資の経費が増加したが、操業度差益や合理化、為替差益もあり増益を達成した。
2019年3月期(2018年度)の業績は、売上高が前年比4.1%増の5兆3200億円、営業利益は同8.9%減の3760億円、当期純利益は同9.5%減の2900億円を見込む。生産増加や合理化努力を進める一方で、円高による為替影響や材料費の増加、成長投資の加速により、増収減益となる見通しだ。
安城工場と岩手工場に投資
2018年度は設備投資と研究開発費を拡大する計画だ。設備投資は2017年度の3472億円から4000億円に、研究開発費は2017年度の4474億円から4950億円に増やす。研究開発費は、パワーエレクトロニクスの要素技術や人工知能(AI)や画像認識技術、パワートレインの電動化などに充てる。
5000億円規模の研究開発投資はしばらく続く見通し。同時に基幹事業の“稼ぐ力”の強化や固定費の削減にも取り組んでいく。「グローバルで絞り上げる1年にする。やめるべきことはやめるということも徹底的に進める」(デンソー 社長の有馬浩二氏)。
国内の生産拠点への投資も予定している。安城工場は電動化の開発拠点としての機能を持たせるとともに、試作品向けの生産ラインも設ける。エレクトロニクス部品を手掛ける岩手工場の増強も行う。
国内外のベンチャー企業への投資も継続して実施する。従来は10億円規模だった投資額を現在は100億円規模に増やしている。大型のM&Aではなく、機動力重視で広く網を張っていく。
ADASの普及が売り上げに貢献
取引先別の売上高は、トヨタグループ向けが前年比8.9%増の2兆3006億円、トヨタグループ以外が同8.3%増の2兆2208億円だった。トヨタグループ向けの売り上げ比率は45.0%となる。
トヨタグループは日本や欧州、中国での車両生産が増加した。日本での先進運転支援システム(ADAS)関連製品の搭載拡大が貢献した。トヨタグループ以外の納入先では、ホンダの中国で車両生産が増加した他、北米でのディスプレイ製品やトランスミッションの拡販が売り上げ増につながった。また、General Motors(GM)の中国での車両生産増加や、同社向けのスターターモーターやコモンレールシステムの拡販、スズキが日本やアジアで車両生産台数が増加したことも売り上げに貢献した。
製品別では、サーマルシステムは日本や中国での車両生産増加により売り上げは前年比3.6%増のプラスだった。モビリティシステムは、日本での車両生産増加、デンソーテン(旧富士通テン)の子会社化や北米でのディスプレイ製品販売拡大により、モビリティシステムが同31.7%増と伸長した。デンソーテンの業績を除くと、モビリティシステムは同10.8%増の増収となった。パワートレインシステムは、アジアでの車両生産増加や米国での販売拡大によって同5.2%増の増加だった。
地域別では、日本は車両の生産台数やADAS搭載拡大によって増収増益となった。アジアでも、車両の生産増加や拡販による売上拡大、操業度差益や合理化努力で利益も増加した。欧州と北米では、拡販により増収となったものの、償却費などの増加により減益となった。
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自動車を所有せず、必要な時にサービスとして利用する時代を見据え、デンソーも準備を進めている。専用の車載機やクラウド基盤を自動車メーカーや移動サービスを手掛ける企業に提案していき、2025〜2030年ごろの実用化を目指す。
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