自動運転の「判断」のデファクトを狙う、デンソーが半導体のIP設計で新会社:車載半導体
デンソーは、自動運転システムの「判断」を担う半導体IPを設計する新会社を設立する。会社名は「エヌエスアイテクス(NSITEXE)」で、デンソーの完全子会社となる。資本金は1億円。売り上げ目標などは非公表。
デンソーは2017年8月8日、東京都内で会見を開き、自動運転システムの「判断」を担う半導体IPを設計する新会社を設立すると発表した。会社名は「エヌエスアイテクス(NSITEXE)」で、デンソーの完全子会社となる。資本金は1億円。売り上げ目標などは非公表。
開発するのは複数の計算を並列で処理する独自のアーキテクチャで、異なる計算を各領域に柔軟に割り当てることで効率よく処理できる。消費電力は一般的なGPUの10分の1に抑えるという。車載半導体として求められるセキュリティや機能安全、信頼性を満たすソフトウェアや開発環境も提供する。
開発はARM、Imagination Technologies(イマジネーションテクノロジーズ)、シリコンバレーのベンチャー企業ThinCI(シンクアイ)とライセンス契約を結んで行う。新会社は半導体メーカーにIPのライセンスを供与し、IPを採用したマイコンやSoC(System on Chip)を開発・生産・販売してもらう。半導体メーカーはデンソー以外のティア1サプライヤーにも納入できる。
2018年前半までに開発したIPを実装した28nmプロセスのテストチップを用意し、2018年秋以降に半導体メーカーが設計にIPを反映できるよう準備を整える。2020年代前半に実際の車両での搭載を見込んでいる。
CPUとGPUの弱点を補う
NSITEXEの社長に就任するデンソー 電子基盤技術統括部の新見幸秀氏は、自動運転システムの判断について、ヒトの反射動作のような処理が必要だと説明した。
「例えばバイクが自車の車線に飛び込んできた時、どこに回避するのがリスクが小さいか瞬時に決断する必要がある。歩行者、バイク、飛んできたレジ袋を認識した場合、レジ袋に向かって避けるのが最もリスクが小さい。こうした複数の条件を同時に処理することが求められる」(新見氏)。これに対応するのが新開発のアーキテクチャ「データフロープロセッサ(DFP)」だ。
DFPは、CPUやGPUの苦手分野を補うプロセッサと位置付けている。CPUは複雑な処理が得意だが、直列処理のため時間がかかる。GPUは並列での大量の情報処理を得意とし、画一的な処理に向くが、計算量が異なるさまざまな処理が混在する場合には効率的に計算するのが難しい。
これに対し、DFPは所定の領域ごとに異なる計算ができるようにし、計算の種類や領域の境目を可変にした。仕事量が異なる処理を空いたスペースに割り振り、短時間で処理できるようにする。計算処理を短時間で終えることにより、チップの発熱も抑えられる。実装に必要なのは4コア程度で、C言語からコンパイラできるようにする。
CPUやGPUにDFPで取って代わるのではなく、「知覚や認知が得意なものはその機能を担う形になる。異なるアーキテクチャがECUの中で共存する」(新見氏)としている。また、「自動運転システムの判断についてデファクトを狙う」(新見氏)という考えの下、デンソー本体ではなく別会社を立ち上げてIPを開発し、半導体メーカーに広く採用してもらえる体制とした。
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