ディープニューラルネットワークで自動運転向け画像認識、デンソーと東芝が共同開発:自動運転技術
デンソーと東芝は、自動運転や高度運転支援の画像認識システムに向けた人工知能技術を共同開発する。東芝は人工知能技術を搭載した画像認識プロセッサーを2018年にサンプル出荷する目標だ。デンソーは2020年以降の実用化を目指す。
デンソーと東芝は2016年10月17日、自動運転や高度運転支援の画像認識システム向けの人工知能(AI)技術を共同開発すると発表した。両社で車載用プロセッサーに実装可能なDNN(Deep Neural Network、ディープニューラルネットワーク)を開発し、GPUを搭載するシステムよりも低消費電力な画像処理を実現する。
デンソーは画像認識プロセッサーのハードウェアに強みを持つ東芝と組むことにより、2020年以降にDNNを採用したシステムの実用化を目指す。東芝は、画像認識プロセッサーなどにDNNを実装して2018年ごろからサンプル出荷する。
DNNとは
ニューラルネットワークとは人間の脳細胞を構成するニューロンの活動を模したモデルのことで、一定以上の多数の層を持つものがDNNと呼ばれる。DNNを用いた画像認識は、自らで対象物の特徴を抽出して学習することで、さまざまな対象物を認識でき、検知精度の向上が可能になるという。
自動運転の実現に向けては、さまざまな障害物や標識の検知、障害物がなく車両が走行可能なスペースの識別などが求められる。しかし、従来のパターン認識や機械学習による画像認識では、認識が必要な対象物を人為的に特徴づけてあらかじめ学習する必要がある。
今回の共同開発では、さまざまなネットワーク構成に柔軟に対応する拡張性を持たせたDNNの開発を行う。また、AI技術を車載用として搭載するには消費電力の多さが課題となっているため、車載用プロセッサーに実装する前提で小型化や省電力化にも取り組む。
デンソーと東芝、それぞれの取り組み
デンソーはここ数年、他社とも連携しながら画像認識技術の開発を強化してきた。2015年11月に、スマートフォン内蔵カメラなど向けに画像処理ソフトウェアを提供するベンチャー企業モルフォに12億円を出資した。
2013年9月にはスペインのサプライヤであるフィコサ・インターナショナルの子会社であるアダセンス・オートモーティブにも出資していた。アダセンス・オートモーティブはカメラを使って自車周辺の障害物を認識する技術の開発を強みとしており、出資比率は50%を超えていたが、2016年4月に先進安全に関わる画像認識技術を開発する新会社、デンソーADASエンジニアリングサービスを設立したのを機に出資を解消した。
自前では、ロングスカートやカサ、ベビーカー、スーツケースやつえなどでさまざまに見える歩行者の画像処理や、ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)を用いた走行可能なスペースの検出技術などの開発に取り組んでいる。
一方、東芝は、2016年9月から愛知県内の公道で、量産中の車載用画像認識プロセッサーを用いた自動運転システムの実証実験を行っている。この公道実験とデンソーとの共同開発は独立した取り組みだが、どちらも自動運転での画像認識技術の活用をにらんでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- デンソーがクルマに載せられるAIの開発に注力、「かなり早めに出せる」
デンソーが東京都内で報道陣向けにAI(人工知能)取材会を開催。自動運転やADAS(高度運転支援システム)向けでAIを実用化するために開発しているさまざまな技術を、デモンストレーションで披露した。 - デンソーが人工知能技術を強化、画像処理ベンチャーのモルフォと提携
デンソーは、スマートフォン内蔵カメラ向けなどに画像処理ソフトウェアを提供するベンチャー企業のモルフォと提携する。画像処理技術と、人工知能関連技術として注目されているディープラーニングを使った画像認識技術の共同開発を進める計画だ。 - 東芝が自動運転の公道試験をスタート、カメラとライダーで障害物を回避する
東芝は、愛知県内の公道で自動運転システムの実証実験を開始した。単眼カメラに同社の車載用画像認識プロセッサを使用、ライダーも組み合わせる。障害物の配置を示す地図の生成や、滑らかに回避して走行できる軌道の計算は東芝で開発した。2020年までに自動運転システムの認知/判断機能を実用化する。 - リアルにCG化した実在の場所を自動運転車が走る、異業種連携のシミュレーション
アドバンスド・データ・コントロールズ(ADaC)とWiseが自動運転システム向けのシミュレーション環境を開発した。ソフトウェア開発を支援するADaCと、リアルなCG映像製作を得意とするWiseの異業種連携により実現。両社が出資した新会社を通じて提案していく。