リアルにCG化した実在の場所を自動運転車が走る、異業種連携のシミュレーション:設計開発ツール(1/2 ページ)
アドバンスド・データ・コントロールズ(ADaC)とWiseが自動運転システム向けのシミュレーション環境を開発した。ソフトウェア開発を支援するADaCと、リアルなCG映像製作を得意とするWiseの異業種連携により実現。両社が出資した新会社を通じて提案していく。
アドバンスド・データ・コントロールズ(ADaC)とCG映像製作会社のWiseは2016年10月7日、自動運転システムの開発に向けたシミュレーション環境を提供する新会社「バーテックス」を設立したと発表した。
提供するシミュレーション環境は実在する公道をCG化した映像で、実写の映像とほぼ変わらない類似度を持つ。CGなのでさまざまな条件を自由に設定可能だ。ミリ波レーダーやカメラなどセンサーが認識すべき対象を再現しており、障害物検知のアルゴリズムや、それに対応した車両の制御を行うソフトウェアを検証できる。
テストコースなどで実車を走行させる前にシミュレーション環境のさまざまな条件下で自動運転システムのソフトウェアの走り方を試せるようにし、自動車メーカーやティア1サプライヤの開発の効率化に貢献する。
システムにとってリアルな環境でシミュレーション
バーテックスが目指すのは「先進運転支援システムや自動運転の検証環境をバーチャルで構築して提供していくこと」(バーテックス 社長の尾小山良哉氏)だ。「異業種の2社が協力することで実現したソリューション」(同社 取締役兼、ADaC 社長の河原隆氏)だという。
ミリ波レーダーやカメラといったセンサーが歩行者や車両などを検知した結果どのような挙動をとるか、システムの統合制御ECUのソフトウェアを検証できる。また、ミリ波レーダーがどのように干渉し合うかといったリアルタイムの100倍以上のタイムラインのシミュレーションには不向きだが、センサーフュージョンでいずれかのセンサーが反応しない場合の制御などの検証には対応する。
また、人工知能(AI)が障害物の認識を学習する際の教師データとしての活用も提案していく。
シミュレーション環境のCG映像は、走行しながら撮影したカメラ映像をベースに作成する。レーザースキャナーを搭載した高精度地図用の測量車両で取得した地形の点群データなどもシミュレーション環境の製作に使用できるという。単なる平面のCGではなく、奥行きも含めてCG化している。CG映像は納入先の要望に合わせて作成するため、首都高速道路で自動運転システムをシミュレーションすることも可能だ。
シミュレーション環境の構築で重点を置いたのはリアルな道路環境であることだ。車線や道路の構造はもちろん、他の車両や歩行者も動き回っている。時間帯を選ぶことで明るさを自由に調整できる他、歩行者を自転車に変更したり、雨天にしたりすることが可能だ。
障害物検知のアルゴリズムがCG映像中の歩行者や他の車両を認知できるようなリアルさを持たせるため、PSNR(Peak Signal to Noise Ratio)SSIM(Structural Similarity Index for Image)といった客観的な指標でCG映像のリアルさを検討し、高画質であることを確かめた。
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