デンソーがクルマに載せられるAIの開発に注力、「かなり早めに出せる」:クローズアップ・メガサプライヤ(1/3 ページ)
デンソーが東京都内で報道陣向けにAI(人工知能)取材会を開催。自動運転やADAS(高度運転支援システム)向けでAIを実用化するために開発しているさまざまな技術を、デモンストレーションで披露した。
デンソーは2016年8月25日、東京都内で報道陣向けにAI(人工知能)取材会を開催した。技術担当の常務役員である加藤良文氏、同社基礎研究所 所長の河原伸章氏、会場になったデンソーアイティーラボラトリの社長を務める平林裕司氏などが出席し、自動運転やADAS(高度運転支援システム)向けに開発中のAI技術について紹介した。
加藤氏は「AIは自動運転やADASだけでなくさまざまな分野で使える技術だ。AIの技術開発といっても、世の中に役立てられるように実用化していくには、アルゴリズム以外にもやるべきことは多い。今日の取材会では、AIを実用化するために当社がどういったことに取り組んでいるかを見てほしい」と語る。また、AI技術の開発にさらに注力するため、AIやコンピュータビジョン、ロボット工学の世界的権威であるカーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授の金出武雄氏と技術顧問契約を結んだことも発表した。
現在、デンソーのAI技術開発は「AI R&Dプロジェクト」として一体化した体制のもとで進められている。中核になっているのが、移転拡張した東京支社とデンソーアイティーラボラトリといった東京の拠点だ。これまでデンソー基礎研究所(愛知県日進市)のAI技術開発を行っていた人員を東京支社に移すなど、従来の研究開発体制から一新している。「国内のAI関連のコミュニティーは東京に集まっている。人材確保や外部連携のことも考えると、東京に集約すべきと判断した」(加藤氏)という。東京への集約に加えて、シリコンバレーとの連携も広げて行く方針だ。
6つのデモのうち4つがディープニューラルネットワーク関連
取材会ではデンソーのAI技術開発の事例となる6つのデモンストレーションを披露した。これら6つのデモのうち4つは、AI技術として注目を集めているDNN(Deep Neural Network、ディープニューラルネットワーク)関連のものだった。
ニューラルネットワークとは、人間の脳細胞を構成するニューロンの活動を模したモデルのことで、一定以上の多数の層(深い階層、ディープ)を持つニューラルネットワークをDNNと呼ぶ。このDNNを用いた機械学習がディープラーニングであり、近年のAI技術のブレイクスルーといわれている。自動運転関連では、車両周辺の状態の画像認識の他、画像認識した結果を基にした適切な運転操作の判断などを行うアルゴリズムを構築するのに利用されている。
ただし、ディープラーニングで構築したアルゴリズムを動かすには、DNNそのものを動作させる必要がある。得られる電力に限りがある自動車の場合、一般的なDNNの動作に求められる数十W以上の電力を割り当てることは難しいし、走行燃費のことを考慮すれば、消費電力はできるだけ少ない方がいい。また認識にかかる時間も課題の1つになる。例えば自動ブレーキの場合、対象を正確に認識できたとしても、認識に時間がかかって減速が間に合わなければ衝突してしまう。
デンソーが見せたDNN関連のデモは、ディープラーニングによって構築した画像認識アルゴリズムを、消費電力を抑えつつリアルタイム性を持たせて実装するための技術が中心になっていた。
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