デンソーも備える「モビリティのサービス化」、プラットフォームを準備中:モビリティサービス
自動車を所有せず、必要な時にサービスとして利用する時代を見据え、デンソーも準備を進めている。専用の車載機やクラウド基盤を自動車メーカーや移動サービスを手掛ける企業に提案していき、2025〜2030年ごろの実用化を目指す。
自動車を所有せず、必要な時にサービスとして利用する時代を見据え、デンソーも準備を進めている。消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」(2018年1月9〜12日、米国ネバダ州ラスベガス)においてデンソーは、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車をサービスとして利用すること)向けのプラットフォームを披露した。
自動車メーカーや移動サービスを手掛ける企業に提案していき、2025〜2030年ごろの実用化を目指す。具体的には、駅から目的地までの短距離の移動手段を自動運転車で提供する「ラストマイルシェアライド」を実現するプラットフォームを提供する。位置情報をリアルタイムで処理するクラウド基盤や位置情報を発信する車載機、交通の効率化を図るアルゴリズムまでを対象に開発に取り組んでいる。
アルゴリズムでは、「どの車両が、どのような順番で、誰を迎えに行くべきか」「到着予定よりも遅れている車両がどのように進めば効率的か」といった移動の最適化や、これまでの自動車部品の知識を生かした故障予測を担う。
移動の最適化に関するアルゴリズムは、数年前から東京都内のタクシーで実証実験を行いながら検証を進めてきた。その結果、従来の半分の台数で、待ち時間を増やさずに移動の需要を満たせることを確認しているという。これにより車両の通行量の抑制につながり、渋滞緩和や環境改善が見込まれる。こうした情報処理は、デンソーのクラウド基盤に限らず、AWSやMicrosoftなど各社が選択した環境で行えるようにする。
また、豊田通商と協力し、タイではナビゲーションシステムのルート案内を最適化する実験も進めている。複数のクルマが同じ目的地に向けてナビゲーションシステムを設定した時、全てのクルマで同じルート案内が表示されてしまうと、1つのルートに交通量が集中してしまう。交通量を分散させるため、量子コンピュータを用いて複数の車両にそれぞれ異なるルートを割り当てるという試みだ。
デンソーでは車両のデータを収集するためのハードウェアも手掛ける。この車載機では車速や位置情報、操舵(そうだ)やアクセル、ブレーキなどの情報を発信する。移動サービスの管理者が車両の情報を把握できるようにする。MaaSの普及によって車両の台数が減少することが見込まれる中で、デンソーはプラットフォームの提供によって車載機を含めた自動車部品の付加価値向上を図る考えだ。
ラストマイルシェアライドの実現に向けて、愛知県刈谷市のデンソー本社の敷地内で無人運転バスを複数走らせる実証実験も始める。「ライドシェアは車両1台の制御ではなく街全体の制御が求められる。デンソーの敷地内を都市の縮図と考え、社員が無人運転バスを呼んだ時に効率よく移動できるよう検証する」(デンソーの説明員)。
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