「ライドシェア」はタクシーの敵? 普及でクルマは売れなくなるのか:いまさら聞けないクルマのあの話(3)(1/4 ページ)
聞いたことはあるけれど、正確に知っているかといわれると自信がない……。クルマに関する“いまさら聞けないあの話”を識者が解説します。第3回は、世界各地で普及が進んでいるものの、日本国内では利便性を実感しにくい「ライドシェア」です。
ここ数年で世界的な普及を見せている「ライドシェア」。日本でもしばしば、メディアをにぎわせるようになってきました。直近でも、2017年2月上旬に「政府の規制改革推進会議が、ライドシェアの解禁に向けて検討を始める」というニュースが流れ、ちょっとした話題となりました。しかし同時に、タクシー業界が猛反発しているといった話も伝わってきています。それではそもそも、ライドシェアとは一体どんなものなのでしょうか。
そもそも「ライドシェア」って何?
ライドシェアとは、一言でいえば「相乗り」のこと。スマートフォン(スマホ)やタブレットなどモバイル機器のアプリを通じて、「乗り物での移動(ライド)」を誰かと「共有(シェア)」するということで、カーシェアリングや民泊サービスのAirbnb(エアビーアンドビー)と同じく「シェアリングエコノミー」を構成するサービスの1つということになります。
ライドシェアの場合、ドライバーが乗せるのは乗客ではなく、あくまで「同乗して一緒に移動する人」。ドライバーに支払うのも「請求された料金」ではなく、あくまで「個人的に謝礼を支払う」という形になります。
ですから通常のタクシーよりも出費が少なくて済み、日本では当初「格安で移動できるサービス」といったニュアンスで報道されることもありました。支払いはクレジット決済で自動的に引き落とされるので、ユーザーにとっては確かに、タクシーとの違いを実感しづらいというのは事実です。
車両は基本的に、ドライバーが個人的に所有しているマイカーをそのまま使います。ドライバーはライドシェア業者に登録し、審査をパスする必要はありますが、車両に関しての決まり事はそう多くありません。「日常の通勤や買い物などといった移動のついでに、誰かを乗せてあげる」という形なので、マイカーを改造する必要はありません。
反対の声はあるが、急速に浸透
もちろん、最初から誰かを乗せることを目的にして走り回ることもOKで、これが各地でタクシー業界の猛反発を招いている大きな原因となっています。日本でも「白タク行為(※1)にあたるのでは?」という指摘とともに、反対の声が上がっているというニュースを目にした人も多いことでしょう。
(※1)自家用として登録された白ナンバーの自動車でタクシー営業をすること。日本では法律違反。
それでもライドシェアは世界中で、手軽で便利なサービスとして急速に浸透しているというのが現実です。実際には、普及が進んでいる背景にはもう少し複雑な事情もあるのですが、それについては後ほど紹介しましょう。
基本的な使い方は、アプリを起動して地図画面を見ながら行き先を設定するだけ。自分の居場所はGPSで自動的に検出されますし、目的地までの距離やだいたいの移動時間、それに目安となる料金も算出されます。こうなれば後は、ドライバーが向かってくるのを待つだけです。こうした簡便さに加え、ドライバーの名前と顔写真、それにナンバープレート番号や車種名まで表示されるので安心感がある、という点も人気を集めている理由です。
新興国では、初めて手にした携帯電話機がスマホという人も年齢を問わず多く存在します。そうした人はアプリに抵抗感を覚えることなく、当たり前のように使いこなすことも普及を後押ししていることは間違いありません。
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