超高性能CMOSイメージセンサーを追求――ブルックマンテクノロジ:オンリーワン技術×MONOist転職(8)(1/3 ページ)
日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第8回。今回は、8Kスーパーハイビジョンの高精細映像を作り出すCMOSイメージセンサーを産んだベンチャー企業、ブルックマンテクノロジを紹介する。
2016年、NHKはリオ五輪の8Kスーパーハイビジョン映像の試験放送を実施した。撮影に使われたカメラの中枢とも言えるCMOSイメージセンサーは、静岡県浜松市の大学発のベンチャー、ブルックマンテクノロジが共同開発したものだ。
デジカメはもちろん、スマホや携帯、防犯カメラ、また工場や自動車など、今ではあらゆる分野で活用されているイメージセンサー。社員20名あまりの会社が生み出す、オンリーワン技術を探った。
CMOSイメージセンサー心臓部に強み
2006年設立のブルックマンテクノロジは、静岡大学発のベンチャー。同社の会長でもある静岡大学 電子工学研究所の川人祥二教授の、文部科学省のプロジェクト「浜松地域知的クラスター創成事業」(2002〜2006年)における研究成果を事業化するために設立された、ファブレス企業である。設立から一貫して、超高性能のCMOSイメージセンサーに特化した開発を続けている。
CMOSイメージセンサーの性能は、光を電気信号に変換する光電変換部と、そのアナログ電気信号をデジタルに変換するAD変換回路が決めるといっても過言ではない。同社は川人教授が開発した独自の技術によって、CMOSの課題であった光電変換時のノイズ性能を大幅に高め、AD変換でも超高速、低ノイズ、低消費電力を実現している。現在代表取締役社長を務める青山聡氏は「この2つの技術は当社の強みであり、ビジネスの根幹でもあります。しかし性能の高いCMOSイメージセンサーを作るには、工場との密な連携も必要で、ファブレスでありながら性能を高めることは、われわれのチャレンジであり、モチベーションでもあります」と語る。
NHK・静岡大学と共同開発した8KスーパーハイビジョンのCMOSイメージセンサーは、約5年をかけて誕生した4世代目。東京五輪が決まってから、スケジュールが4年も前倒しになり、2011年のプロトタイプから毎年新たな試作品を作るという忙しさだった。「いろいろな課題や苦労はありましたが、ドライブ材料になったことは確かです。結果的には、技術的なブランド力を高めることができました」と青山氏は振り返る。現在実現しているフレームレートは120fps。現在世界最高性能だが、次の8Kで目指しているのは、なんと240fps。東京五輪では、その映像を体験できるのかもしれない。
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