2030年の製造業にIoTがもたらす将来像、JEMAが提言する「FBM」:スマートファクトリー
IoTによるビジネス変革が広がる中、2030年の製造業にはどのような変化が生まれているのだろうか。JEMAは2016年5月に「製造業2030」を公表し、製造業の将来像について提言している。
JPCERT コーディネーションセンター(以下、JPCERT/CC)と経済産業省は2017年2月21日、制御システムのセキュリティの普及促進に向け「制御システムセキュリティカンファレンス」を開催。本稿では、同カンファレンスの基調講演として登壇した日本電機工業会(JEMA)のスマートマニュファクチャリング特別委員会 委員長の松隈隆志氏(オムロン)の「IoTで2030年の製造業はどうなる?」の内容を紹介する※)。
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JEMAが提言した「製造業2030」
IoTによる製造業のビジネス変革に向けては、ドイツがインダストリー4.0を展開している他、米国の主要企業が設立したインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)など、世界中で多くの団体が取り組みを強化している。日本国内を見ても、経済産業省などが主導するロボット革命イニシアティブ協会外(RRI)、経済産業省と総務省が進めているIoT推進コンソーシアム、日本機械学会生産システム部門などが母体となったIndustrial Value Chain Initiative(IVI)など、多くの団体が活動を進め、それぞれのビジョンを打ち出している。
IoTが生み出す変化が第4次産業革命ともいわれる中で、JEMAでは2015年8月にスマートマニュファクチャリング特別委員会を発足し、電機業界における課題を抽出し、製造業革新に向けての提言を行う方針を決めた。これらの話し合いの中で「解決すべき課題」と「解決のための技術」「あるべき姿」を定め、それらのギャップを埋めていくためにどういう取り組みが必要かを、外部の有識者を含めて話し合いを進めた。こうした中で2016年5月にまとめたのが「製造業2030」である。
「製造業2030」では、2030年の製造業には「顧客価値の最適化」「製品設計の効率化」「製造設備構築の効率化」「生産運用の最適化」「プロダクトライフサイクルマネジメントの最適化」の5つの技術的トレンドに対応していく必要があると述べている。さらに、製造業のビジネスモデルは「Flexible Business and Manufacturing(FBM)」になるという。
JEMAが訴える「FBM」とは
JEMAが訴える「FBM」は、生産を含む製造業のビジネス機能群がリアルタイムにかつフレキシブルに働き、ビジネスモデルや機能の組み合わせを変化させるという製造業モデルである。
松隈氏は「生み出すべきソリューションは何か、何を改善したものか、どのようにそれを実現するか、納入後のサポートをどうするかという4つの価値を短時間で判断し効率的に実行できる世界が理想である」と語る。
FBMは、基本的なバリューチェーンを構成する要素として、サプライヤー、ユーザーなどの主体者や、販売、生産、エンジニアリング、企画、商品開発、品質保証、保守などの製造業のライフサイクルを構成する工程などを規定。これらをFBMプラットフォームとして、バリューチェーンにおいて組み合わせることで表現を行っている。
松隈氏は「将来の製造業の将来像として、典型的な形態として『企業ネットワーク型』と『メガ企業型』の2種類が存在する。それぞれにおいても製品のバリューチェーンやサプライチェーンの各機能のつながりは存在するが、つながり方が変わってくる」と述べている。
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