日本発の無線規格「Wi-SUN」、国際展開への飛躍を阻む4つの問題:IoT観測所(17)(2/3 ページ)
IoTにまつわる標準化規格で数少ない日本発の規格が「Wi-SUN」だ。家庭向けに低消費電力でメッシュネットワークを構築できるWi-SUNの特徴と、国際的なデファクトスタンダード化を阻む問題について解説する。
今後の展開としては、農業/漁業向けや防災、FA(Factory Automation)、FAN(Field Area Network)、HAN(Home Area Network)の他、oneM2Mへの適用も検討中である。
漁業については、NICTが「もずく養殖へのWi-SUN無線センサーネットワークの適用実証に成功」というプレスリリースを出しており、従来のセンサーネットワークではカバー出来なかった範囲への適用を広げていこうという意気込みを感じる。
組み合わせる上位プロトコル
ただ、Wi-SUNはOSIの参照モデルで言うならば第1層〜第4層までの範囲でしかカバーしていない。ではその上位プロトコルをどうするのか?という話については、ECHONET Liteを利用する事を推奨している(Photo03)。
Photo03:これは総務省 山口修治氏の「新たな情報通信技術戦略とIoT」(http://kiai.gr.jp/jigyou/h27/PDF/1109p1.pdf 、2015年11月)というスライドからの抜粋。複数の通信手段がサポートされることが分かる
ECHONET Liteの基になったECHONETはエコーネットコンソーシアムが策定したスマートハウス向けの制御/センサーネットプロトコルである。ただこのECHONETは結構重めのプロトコルで、実装に困難があった。そこでここの中身を見直し、軽量化したプロトコルがECHONET Liteとなる。
Photo03でも分かる通り、OSI参照モデルの第1〜4層は各通信プロトコルに任せる形になったことで、ECHONET Liteそのものは現実的に実装可能なプロトコルに仕上がった。このECHONET Liteは経済産業省によって2011年12月に国内のHEMS標準プロトコルとして認定され、翌2012年2月には国内でのスマートメータとHEMSを接続する標準プロトコルとしても認定されたことで、日本国内での重要性は非常に高くなっている。
実際、日本国内の10の電力会社(北海道電力から沖縄電力まで)全てが、スマートメーターBルート(低圧電力メーター)接続用の通信方式にWi-SUNを利用し、補完方式としてG3-PLCを利用するということで統一されている。そんなわけで、少なくとも日本国内においてはWi-SUNはかなり大きなシェアを獲得できることが事実上、確定していることになる。
このスマートメーター絡みの話はやや政治的な部分も含むので今回深くは立ち入らないが、経済産業省 スマートメーター制度検討会の第15回配布資料(2014年12月9日)やセキュリティ検討ワーキンググループの報告書(2015年7月10日)を読む限り、この路線に変更は無さそうである。
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