IoT団体によるUPnP(Universal Plug and Play)吸収を読み解く:IoT観測所(16)(1/3 ページ)
インテルやサムスンらが主導するIoT標準化団体「OIC」が、UPnP(Universal Plug and Play)Forumを吸収した。UPnPの推進する“挿すだけで使える”をIoTに持ち込むことは理にかなっているように思えるが、AppleのHomeKitや、GoogleのProject Brilloに対する競争力はあるだろうか。
OICによるUPnPの吸収
2015年11月23日、OIC(Open Interconnect Consortium)はUPnP(Universal Plug and Play)Forumの吸収を発表した(Open Interconnect Consortium Increases Membership with UPnP Forum Agreement)。
合併や買収ではなく“吸収”と書いたのはOICがUPnP Forumを自身のリソースとして全て買収したからで、この結果としてUPnP Forumの会員には、自動的にOICのメンバーシップが発行されることになる。
UPnP(Universal Plug and Play)Forumは必ずしもIoTの団体として認知されていた訳ではないが、近年はIoTへのニーズの高まりに対応して「UPnP+」という新仕様を策定しており、既にこのUPnP+についての認証を開始するなど迅速な対応が目立つ。UPnP Forumの持つ広範な仕様策定とそれを実装したデバイスのみならず、認証を行うための組織作りやオペレーションなど、OICやIoTivityに欠けていると思われる多くの要素を補完できるとみられる。その意味では、少なくともOICにとってUPnP Forumの資産獲得は大きな意味を持つ。
UPnP Forum側から見るとどうかというと、元来がPCなどでの利用を想定した規格だっただけにモバイルやIoTへの取り組みというか、これらを得意としているメンバー企業の取り込みはやや後手に廻った感が否めない。その意味では、OICによるUPnPの吸収合併は“一応”Win-Winの関係にある。
“一応”と書くのは異論もあるからで、「EETimes Japan:IoT標準化団体のOICとUPnPが合併へ」こうした記事が異論の代表的なものだろう(個人的な意見を言えばAllSeen AllianceとOICが合併すると、主導権争いの内部紛争が起きるのは火を見るより明らかという感じがするのであまりこの論調には賛同できないのだが)。まぁそうしたきな臭い話は別にして、OICやIoTibityについては既にご紹介したので、今回はUPnPのご紹介をしたいと思う。
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UPnP Forumの狙い
UPnP Forumの創立は1999年にまでさかのぼるる。何を目指していたかというと、さまざまな機器を「つなぐだけ」で利用できる様にしたい、というものだ。当時、さまざまな機器がさまざまなインタフェース(USBやIEEE 1394、イーサネットなどなど……)を搭載していたが、画一的に使えるものがなかった。
例えば映像や音楽などを格納したNASとメディアプレーヤーをネットワークなりUSBでつないでも、お互いにデータをやりとりするための手段が用意されていなければ、間にPCなどを挟んで処理をしなければならない。これは不便だ、ということでさまざまな機器がお互いに通信しあって利用できる様にしよう、という動きが出てきた。
この際に参考にされたのが、1996年にリリースされたUSBである。当初リリースされたUSB 1.0はバグも多く、互換性が低いなどの問題でなかなか普及しなかったが、仕様と対応ハードウェアのバグ修正を行い、さまざまなクラスドライバを充実させたUSB 1.1の登場により普及が進んだ。
このUSBのうたい文句がPnP(Plug and Play)である。「さすだけで使える」という名前の通り、通電状態でも着脱可能で、さらにダイナミックにドライバのロードを行える仕組みが提供された。もともとPnPという用語は拡張バスのISA向けの拡張機能に使われたが、こちらはそうした機能をまるで考えていない汎用I/Oバスに無理やりPnPの機能を突っ込んだ事で、Plug and Pray(突っ込んで動く事を祈る)とやゆされるほど実装がひどかった。
これに対してUSBは当初こそ問題があったものの、広く利用されるに至っている。このPnPのメカニズムに近いものを、機器間接続にも提供しよう、というのがUPnPの発端であり、これを実装すべく設立されたのがUPnP Forumというわけだ。
結果から言えば、このUPnPはかなり広く利用されている。例えばWindowsでネットワーク一覧をみるとさまざまな機器が表示されたり(Photo01)、ネットワーク接続の詳細が出てきたり(Photo02)といった機能はいずれもUPnPを利用して実装されている。あるいはこのUPnPを下敷きに、デジタルレコーダーなど向けに機能を充実させた規格がDLNA(Digital Living Network Alliance)で、これも一定のマーケットをつかんでいる。
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