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オープンソースの力を借りた「IoTivity」、その意図を探るIoT観測所(9)(1/2 ページ)

インテルやサムスンらが主導するIoT標準化団体「OIC」はその仕様詳細を明らかにしていない一方で、オープンソースプロジェクト「IoTivity」を立ち上げた。IoTivityを調べることで、OICの意図も垣間見える。

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 連載の4回目でインテルなどが主導する「Open Interconnect Consortium(OIC)」をご紹介した(IoT観測所(4):インテルやサムスンらが主導するIoT標準化団体「OIC」の狙い)。このOICそのものは、その後もあまり動きを見せていない。いや、動いていない訳ではなく、いろいろ活発に活動しているのだが、それを表には出していないという意味である。

 2015年4月にカリフォルニアで初のPlugFestを実施しているし、同年5月にはカンファレンス「OIC SEOUL Conference 2015」を開催している。これだけ見ていると、「普通に活動してるじゃないか」という気になるのだが、その一方でOIC自身はいまだに仕様(Specification)を外部には公開していない。そんな訳で“Open”という名前を冠している割には活動はメンバー企業のみ、というややクローズド動きとなっている。

 その代わりといっては何だが、OICはちょっと面白い形でオープン化を行った。

 2014年12月にOIC自身がスポンサードする形で、新しく「IoTivity」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げたのだ。このプロジェクトは、OICのSpecificationをオープンソースの形で実装する、というもので、もちろん実装されたコードは公開され、ライセンスに基づき利用が可能である。何でこんな回りくどい方法を取ったのか、という目的に関しては何しろOICが一切明らかにしていないので定かではないが、これは逆にIoTivityの動きを見てみれば何が問題だったか間接的に分かるというものだ。ということで、IoTivityについて今回はご紹介したいと思う。

OICの技術をオープンソースで、Linux Foundationがホスト

 IoTivityが設立されたの2014年12月27日のこと。IoTivityはOICがスポンサーとなり、そしてLinux Foundationがホストする形になる。Linux Foundation自身はIoTivityのみならず、多くのプロジェクトとコラボレーションしているので協業自体は珍しいモノではない。

 設立のリリースによれば、OICが真の意味で普及し、OICに対応したIoTデバイスが相互運用性を持つ形で普及するためには、業界標準とあわせてオープンソースによるインプリメントが欠かすことができず、かつこのインプリメントに際しては、オープンソースの流儀に沿った形で管理を行ってゆかないとうまくいかない、としている。これが理由で、OICはインプリメントに際してIoTivityという形で分離した、としている(Welcome to the IoTivity project)

 ただ、IoTivityの運営を行うSteering Groupのメンバーを見ると、議長以下ほぼ全員がIntelもしくはSamsung Electronicsのメンバー(Advisory CommitteeのCarsten Bormann名誉教授が唯一の例外)というあたり、金を出すが口も出す、という雰囲気が漂っている。

 これはあくまでIoTivity全体の話であって、そのSteering Groupの下で細分化されたProjectとFunction(複数のProjectからなる活動)には、このSteering Group以外のメンバーも加わっている。この原稿執筆時点で既にFunctionが4つ(IoTivity Architecture/Planning/Release Management/Developer Community & Events Management)とProjectが3つ(Discovery & Connectivity/Primitive Service/Security)立ち上がっており、結成後半年経っていない組織としては比較的、迅速な方ではないかと思う。

 IoTivityはApache 2.0ライセンスを利用する事が明らかにされており、OICが採用するライセンス「RANDZ」と異なっているのも特徴的である。RANDZはこちらでもちょっと触れた通り、IPプールを前提にしたものである。要するにOICメンバーは自身の持つIPをIPプールに提供し、このOICメンバーがこのIPを使う場合にはプールから「妥当かつ公平」な金額が支払われる(当然OICメンバーはこのIPプールに対して、やはり「妥当かつ公平」な使用料を支払う事になる)形の運用を考えている。

 ただこの手法はオープンソースの考え方と相いれないものだ。Apache 2.0ライセンスは、端的に言えば元の著作権や特許権をソースコードに記述さえすれば、そのソースコードの利用や頒布、改変や派生型の生成などは自由である。これはIP(や特許)の利用料収入を考えているベンダーには受け入れられない条件となる。

 OICとIoTivityの違いとしてはこのあたりが大きい。OICではメンバーが保有するIPや特許を仕様の中に盛り込むことも(理論上は)可能だし、実装に当たってはこうしたIPや特許を使ったものになる公算が高い。これはこれで、そのIPなり特許を利用する事で最終製品の差別化が可能であれば、IP利用料を支払っても元が取れる事になる。

 スマートフォン(携帯電話)がまさしくそういうビジネスであり、実際、スマートフォンのメーカーはさまざまな会社に対してモデムやAndroidやら関連の特許利用料を支払いながらスマートフォンを製造、販売している。このカタチでビジネスは成立しているので、同じビジネスモデルを適用したいというニーズはあるだろう。

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