自動車×生成AIを実現するファインチューニングの第一歩は?生成AI

生成AIを活用した業務改善ソリューション市場が活発になり、自動車の商品力向上のために車内機能に生成AIを使う提案も増え始めた。ただ、生成AIを自動車向けにカスタマイズするにはファインチューニングが不可欠だ。計算リソースへの投資が高額になるため、生成AIのカスタマイズはハードルの一つになっている。それをどう乗り越えるべきか。

» 2024年08月20日 10時00分 公開
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 2022年にOpenAIがChatGPTを発表して以降、生成AI(人工知能)は注目を集め続けている。当初は質問文に対して的確に返答する様子が話題になったが、生成AIの進化とユースケースの増加につれて、ビジネスの現場でどのように利用できるのかへの関心が高まった。

 そして現在、さまざまな企業が業務効率化に生成AIを活用したソリューション開発に注力している。製造業向けではモノづくりの業務に生成AIを取り入れることが提案されており、作業者の支援や設計の効率化、ロボットの制御プログラムの作成などのユースケースが出始めている。

 製品自体の価値を高める目的での生成AIの活用は発展途上だが、自動車業界にビジョンを示す企業が増えてきた。NVIDIAは生成AIによって自動車で移動中の体験を向上させるため、ドライバーを認識して過去のやりとりを反映したパーソナライゼーションや多言語に対応した音声認識技術、屋外に放置された子どものおもちゃや車内の忘れ物など非定型な物体の認識、日時によって異なる交通規制の理解などを行うAIアシスタントを提案した。これを実現するハードウェアや開発環境が既に発表されている。

 自動運転技術が進化して運転をシステムに任せる時間が長くなれば、クルマが何を見てどのように動こうとしているのかなどを乗員が知りたい場面も増える。乗員がシステムとコミュニケーションできるAIエージェントの重要度は高まるだろう。走行中の景色を生成AIで理解し、車両の制御に生かすことも考えられる。自動車が走行する場面は複雑かつ多様で、事前にパターンを網羅するのは難しい。生成AIが向いている領域の一つだろう。

 2024年初めに開催された消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2024」でも、自動車メーカーなどが新型車での生成AIや大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)の利用に言及した。

 フォルクスワーゲンは、2024年半ばから米国向けのモデルでChatGPTを統合した新たなAIアシスタントを標準装備する。メルセデス・ベンツもインフォテインメントシステム「MBUX」のバーチャルアシスタントに生成AIを採用すると発表。「最も人間らしいインタフェースになる」と同社は自信を見せる。ヒョンデ(現代自動車)も、ソフトウェアデファインドビークル(SDV)を開発する中で独自のLLMをAIアシスタントやナビゲーションシステムに統合する。日本でも、ChatGPTを統合したバーチャルアシスタントを標準装備するフランスの自動車メーカーDSオートモビルのモデルが既に販売されている。

 自動車に生成AIを生かす展望が示され始めたが、生成AIを扱うには幾つかのハードルがある。まずデータの取り扱いなどに関するポリシーや規定を決める必要がある。先述した海外の自動車メーカーも、AIアシスタントの回答内容やプライバシーについてのポリシーを設けた。

 もう一つのハードルは、汎用(はんよう)の生成AIをそのまま自動車の機能に使うのは難しいという点だ。越えるべきハードルはあるが、生成AIの可能性を試してみなければ競合他社に商品力で差をつけられてしまうかもしれない。

生成AIにはユースケースに合わせたカスタマイズが不可欠

 既存の生成AIのモデルは自動車での用途に合わせて開発されたものではないため、ユースケースに合わせてカスタマイズする必要がある。海外自動車メーカーも、ChatGPTをそのまま使うのではなく自動車用あるいは自社のブランド用にカスタマイズを施している。

 カスタマイズには幾つかの段階があり、最も少ない投資でできるのがプロンプトエンジニアリングだ。ただ、プロンプトエンジニアリングでは自動車特有のデータやスキルを反映することはできない。

 さらに上位のカスタマイズとして、プロンプトラーニングやファインチューニングがある。ファインチューニングは、既存モデルの一部のパラメーターを変更する「PEFT(Parameter Efficient Fine Tuning)」と全体のパラメーターを変更するものに分かれる。ユースケースに合わせた精度は、プロンプトエンジニアリングやプロンプトラーニングよりもPEFTが、PEFTよりも全体のパラメーターを変更するフルファインチューニングの方が優れている。

 ただ、パラメーターを変更して再学習させるには計算リソースが必要で、クラウドやGPUへの投資が不可欠だ。投資規模はカスタマイズの精度を求めるほど大きくなり、最低でも数千万円から数億円の投資が必要な場合もある。ファインチューニングでは、パラメーターを少しずつ変えながら精度がより良くなるように何度か再学習を繰り返す。再学習に時間をかけた後でパラメーターの変更が失敗することもあり得る。

高度なカスタマイズを行うほど投資も必要になる(提供:マクニカ)

 生成AIを自動車の機能として搭載するためにカスタマイズするのはハードルが高い。だからこそ手軽に試し、体験する場が必要だ。

ファインチューニングを体験できるハンズオンワークショップを開催

 マクニカは、生成AIのファインチューニングをテーマにしたハンズオンワークショップを開催する。機械学習の初心者が対象で、ファインチューニング実装の基本的な流れを体験できる。テーマとなるユースケースは自動駐車だ。自動駐車であれば、初心者でも要求される機能をイメージしやすい。自動車での生成AIのユースケースはさまざまだが、まずはLLMに触れられるという内容だ。

 ハンズオンワークショップでは、空いている駐車スペースを生成AIで検出し、どのように動くべきか指示することを目指す。ただ、既存の基盤モデルのままでは精度が低いため、自動駐車という目的に合わせてファインチューニングでカスタマイズする。使用する画像のデータセットはマクニカが用意する。

 ファインチューニングでは、再学習に必要なデータの収集や前処理、維持なども必要だ。自動車業界なら既に膨大な走行データを収集済みの企業は多いが、効率的にデータを使うための処理や管理、どのデータが精度向上に貢献したかを分析することが不可欠だ。

 ハンズオンワークショップでは、どのデータでモデルの精度が向上したのかを検証するところも体験できる。データログを取得する「Weights & Biases」や再学習でGPUのリソースを効果的に使うためのツールも使用可能だ。最後に、実装したファインチューニングモデルの評価を行う。

ハンズオンワークショップで体験する自動駐車向けファインチューニングのイメージ(提供:マクニカ)

 ハンズオンワークショップの会場はマクニカの東京都内のセミナールームだ。所要時間は最大3時間程度を予定しており、同じ内容で複数回実施する。定員は少人数だが、同僚同士で出席できるように各回とも参加企業は1社に絞る。参加企業の拠点での出張開催など、柔軟に対応するという。

 ハンズオンワークショップの参加者は、ファインチューニングに必要な環境を本番導入時に近い形で検討できる「AI TRY NOW PROGRAM」も利用可能だ。マクニカのエンジニアが最適な技術を厳選して環境を構築しており、このプログラムではユーザーがNVIDIAのソフトウェア製品やAIソフトウェアの検証、パフォーマンスや機能のKPI測定ができる。今後の投資や導入目的の実現性を判断する材料になるだろう。

AI TRY NOW PROGRAMの概要(提供:マクニカ)

生成AIにおけるマクニカの強み

 NVIDIAは、さまざまな業界に向けて生成AIの開発を支援するプラットフォームを提供している。マクニカは日本のNVIDIA製品取扱代理店の中で最大の販売実績を挙げたことなどから「Best Distributor of the Year」を2年連続で受賞するなど、NVIDIAの製品や技術に精通している。

 パートナー企業のエコシステムも含めたソリューションの提供も評価されている。マクニカがAI実装コンサルタントやAIの研究チームを擁し、自らNVIDIAの製品やサービスを使いこなしていることや上述のAI TRY NOW PROGRAMも高評価につながった。生成AIのファインチューニングに求められるGPUインフラの知見やファインチューニングに関連する技術サポートができる点も強みだとしている。

 マクニカの企業パーパスは「変化の先頭に立ち、最先端のその先にある技と知を探索し、未来を描き“今”を創る」。この1〜2年で一気に関心を集め、ハイスピードで進化する生成AIは、“最先端のその先にある技(テクノロジー)と知(インテリジェンス)”の最たる例だといえる。

 信頼できる持続可能なビジョンを構想し、マクニカの技や知とさまざまな業界のプロフェッショナルをつなげ、解像度の高いソリューションを足元に実装することも企業パーパスに含まれている。ハードウェアやソリューションの単なる売り切りではなく、「伴走」することが会社としての方針だ。

 海外の自動車メーカーやNVIDIAが示した「自動車×生成AI」のビジョンは、ただ一つの正解というわけではない。生成AIを道具と考えれば、日本ならでは、その企業ならではの使い方や独自の商品力につなげる道筋も見えてくるだろう。初心者に寄り添って伴走するパートナーによってどのような生成AI活用事例が日本の自動車業界から出てくるか、注目したい。

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提供:株式会社マクニカ
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年10月19日