ゲームエンジンをはじめとする3Dグラフィックス技術が設計・製造現場を変革展示ブースレポート

「第36回 ものづくり ワールド[東京]」に出展したシリコンスタジオは、製造業の課題解決に役立つ最先端の3Dグラフィックス技術を活用した8つのソリューションを提案し、多くの来場者の注目を集めていた。展示ブースの模様を詳しくレポートする。

» 2024年07月11日 10時00分 公開
[PR/MONOist]
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 シリコンスタジオは、「第36回 ものづくり ワールド[東京]」(会期:2024年6月19〜21日/会場:東京ビッグサイト)の構成展の一つである「第36回 設計・製造ソリューション展」に出展。同社の最先端3Dグラフィックス技術を活用した製造業の課題解決に役立つ8つのソリューションを披露した。

 展示ブースは「企画・研究調査」「設計・デザイン」「試作・試験」「生産準備」「生産」の工程で構成され、それぞれの工程で直面する現場課題とその解決策となる同社のソリューションをひも付けて紹介。「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」や「Unity(ユニティ)」といったゲームエンジンなどを活用して構築したデジタルツインによるビジュアライゼーションなど、最先端の3Dグラフィックス技術で製品開発の課題解決を図る同社の提案に、多くの来場者が興味を示していた。

「第36回 ものづくり ワールド[東京]/第36回 設計・製造ソリューション展」に出展したシリコンスタジオの展示ブースの様子 画像1 「第36回 ものづくり ワールド[東京]/第36回 設計・製造ソリューション展」に出展したシリコンスタジオの展示ブースの様子[クリックで拡大]

現実に限りなく近い仮想空間でのシミュレーションが可能に

 「企画・研究調査」に関連するソリューションとして、同社はゲームエンジンを使った動作・現象のシミュレーション環境の構築を訴求。ユースケースとして「ビジュアルシミュレーション環境」と「走行・飛行シミュレーション環境」を紹介した。

 ビジュアルシミュレーション環境は、「MATLAB/Simulink」などの高度なシミュレーションエンジンとゲームエンジンを連携させて、各種解析や機能試験、人流などのシミュレーション結果を3D CG(コンピュータグラフィックス)で仮想空間にビジュアライズするものだ。外部エンジンで得た計算結果をリアルタイムに反映できることを強みとしており、シリコンスタジオ テクノロジー事業本部 新規事業開発部 部長の向井亨光氏は「シミュレーションエンジンとゲームエンジンの連携自体はそれほど難しいことではありません。しかし、リアルタイム性の実現にはデータ最適化のノウハウやサーバネットワーク構築技術などが不可欠です。ここが、ノンゲーム分野で多くの実績と経験を持つわれわれが最も得意とするところです」と説明する。

「ビジュアルシミュレーション環境」の構成イメージ 図1 「ビジュアルシミュレーション環境」の構成イメージ[クリックで拡大]

 外部のシミュレーションエンジンを使わずに、ゲームエンジンだけでシミュレーション環境を構築することも可能だ。走行・飛行シミュレーション環境として、同社が保有する道路標識や交通信号機などの高品質なアセットパーツや国土交通省主導のプロジェクト「PLATEAU」の3D都市データなどを活用し、仮想空間で自動車の走行やドローンの飛行をシミュレーション可能な環境が構築できることを紹介。同社は、既存のシミュレーターのビジュアル品質を向上させるカスタム対応など、顧客ニーズに応じた環境構築も手掛けている。

 シミュレーション用途だけでなく、画像認識のための学習と検証にもゲームエンジンは有用だ。実写さながらのリアルなCG表現を生かし、機械学習に必要な教師データ(画像や動画)を作成できる。展示ブースでは、運転者の顔を認識して安全運転をアシストする「ドライバーモニタリングシステム」用の教師データをUnreal Engineを使って作成する様子や、バレーパーキングの教師データ用にさまざまな時間や天候、白線の経年劣化などを加味したデータを作成する様子などを「AI(人工知能)学習用教師データ画像・検証環境」として紹介した。

 教師データ画像の作成は外観検査での不良検出にも役立つ。不良がほとんど発生せず教師データを思うように集められないケースでも、少量のサンプル画像や実物をベースに類似の不良画像を大量に生成できる。

不良判定用CG生成ツールのイメージ 図2 不良判定用CG生成ツールのイメージ[クリックで拡大]

デジタルモックアップよりもワンランク上のデザインレビューが可能に

 「設計・デザイン」および「試作・試験」に関連するソリューションとしては、ゲームエンジンの特性を生かした「設計・デザイン評価システム」と「製品3Dコンフィギュレーター」を紹介した。

 前者は社内での設計確認やデザインレビュー、仕様検証を想定したもので、現実に即した利用シーンに製品を置いたり製品の色を変更したりするなど、多角的なレビューが可能だ。自動車であれば「タイヤを動かす」などの実際の動きも再現でき、360度形状を眺めるだけの従来のデジタルモックアップよりもワンランク上のレビュー環境を構築できる。

 後者は完成イメージや操作性、使用感の確認など、実際に試作・生産に進める前の社内評価や製品のエンドユーザー向けの利用を想定したものだ。経営層や販売店へのプレゼンテーションの場、または購入前の店頭などで、製品のカラーバリエーションや素材を比較したり、オプションの有無を検討したりといった用途が考えられる。3Dモデル化された製品の素材や色などを仮想空間で自在に変更してリアルタイムに確認できる。デスクトップPCの他に、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)にも対応し、多人数や多拠点での同時レビューも可能だ。

 デザインレビュー環境の構築にゲームエンジンを使うことの利点は拡張性の高さにあるという。向井氏は「悪路や雪道など実際の利用を想定したシーンや実在の街で自動車を走らせてレビューしたいといったニーズに対し、一般的なデザインレビューツールでこれらを行うのは機能的に限界があります。ゲームエンジンであればいくらでも機能を拡張でき、視覚的な演出などを加えることで高品質なシーンを容易に作り出すことが可能です」と説明する。

ゲームエンジンを活用したデザインレビュー環境について 図3 ゲームエンジンを活用したデザインレビュー環境について[クリックで拡大]

 同社は、各種3D CADや「Autodesk VRED」(以下、VRED)などとのデータ連携で発生する課題も解決しつつ、機能ツール開発からワークフローの構築まで支援する。「VREDとゲームエンジンはレンダリングの仕組みが異なるため、そのままデータを移行しても質感などは再現されません。加えて、VREDはスタティックなデザインレビューには長(た)けていますが、タイヤを動かして走行させるなどの動きに関する自由度は高くありません。現実世界を忠実に再現した映像の中で製品を動かしたい、質感などもリアルに表現したいなど、次のステップを検討する場合にはゲームエンジンの活用を強くお勧めします」(向井氏)

現場・施設のデジタルツイン化やより高品質な3D CGコンテンツの制作も

 「生産準備」のフェーズでは、工場のレイアウト設計やラインの動作確認、産業用ロボットの作業範囲やAGV(無人搬送車)のルート検討などが必要になる。これらに対する同社のソリューションが「現場や施設の3Dデジタルツイン」だ。3D CADやBIM、点群データなどをベースにして工場や施設の建屋、機械設備などを全て3D化し、ゲームエンジンや「NVIDIA Omniverse」を活用して3Dデジタルツインを実現する。これにより、AGVの走行経路確認、設備やラインレイアウトの最適化など、さまざまなシミュレーションを仮想空間で実行できる。「現場や施設のデジタルツイン化に関しては、ここ数年で製造業や物流業界、通信業界からの引き合いが非常に増えています。活用フェーズに入りつつあることを日々実感しているところです。デジタルツインはわれわれの強みを発揮できる領域の一つとして、さらなる市場の盛り上がりに期待しています」(向井氏)

熱心に説明員の話を聞く来場者の様子 画像2 熱心に説明員の話を聞く来場者の様子[クリックで拡大]

 スタッフへの作業指示や技術トレーニングに役立つソリューションとしては、「仮想空間での作業・技術トレーニング環境」を紹介した。VRやARの発展に伴い、昨今では現場のトレーニングもデジタル化が加速している。ゲームエンジンを使うことで、生産現場やデータセンターにある設備および装置の操作方法などを仮想空間で体験して学べるコンテンツを開発できる。現実では再現が難しい予期せぬ事故や危険な状態などもリアルに作り出せるため、安全教育としての需要も高まっている。

 「生産」のフェーズでは、先ほど紹介したAI学習用教師データ画像・検証環境を基に実現した画像認識による外観検査が効果を発揮することになる。

 「フォトリアルなCG演出技術」として2024年夏ごろのリリースを予定しているUnreal Engine用のポストエフェクトプラグイン「YEBIS Biz(エビス ビズ)」のデモ映像も初公開された。YEBIS Bizは同社が手掛けるポストエフェクトミドルウェア「YEBIS」をバージョンアップしつつ機能を限定したUnreal Engine用プラグイン版で、自動車や建築などの産業分野でのCGコンテンツ制作において、被写界深度やグレアといったレンズ表現を追加できる。「プロダクトデザインにおいて、空気感といったより高度な演出も可能になります。製品3Dコンフィギュレーターではお客さまの『やりたいこと』を起点に機能などを個別開発しますが、YEBIS Bizはお客さまが既にお持ちのビュワーにプラグインし、映像コンテンツのクオリティーを一段引き上げるものです」(向井氏)

シリコンスタジオの展示ブースには入れ代わり立ち代わり来場者が訪れ、終始大にぎわいだった 画像3 シリコンスタジオの展示ブースには入れ代わり立ち代わり来場者が訪れ、終始大にぎわいだった[クリックで拡大]

「発想力」「表現力」「技術力」の3つを兼ね備えるシリコンスタジオ

 最先端の3Dグラフィックス技術を軸に課題解決に役立つソリューションを展開するシリコンスタジオの強みの源泉はどこにあるのか。向井氏は次のように説明する。

 「安価でキレイな絵を作れるスタジオは世の中にたくさんあります。ただ、それだけでは製品開発現場のニーズには応えられません。当社はアーティスティックな部分だけではなく、お客さまのニーズをくみ取って最適なソリューションを提案する『発想力』、限られた条件下で魅力的で高品質なコンテンツを最大限に創出する『表現力』、実際の現場で真に活用できるシステムやアプリケーションを構築できる『技術力』を兼ね備えています。まずは、どんなことでも気軽にご相談ください。目的や環境に応じた最適なソリューションを提供し、お客さまの課題解決をご支援致します」

動画1 展示ブース正面の大型モニターにも映し出されていたシリコンスタジオの紹介映像

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年7月19日