データの“利用”から“活用”へ DXで真の変革に至るために必要な組織の在り方できるところから始める製造業DXセミナーレポート

MONOistはライブ配信セミナー「できるところから始める製造業DX 2024 春」を開催した。本稿では、東洋エンジニアリングによる講演「東洋エンジニアリングが語るAlteryx導入の成果〜業務の自動化、そしてデータインサイト中心の組織への変革〜」の内容をお伝えする。

» 2024年07月08日 10時00分 公開
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 MONOistは2024年6月13日、ライブ配信セミナー「できるところから始める製造業DX 2024 春」を開催。これからDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうと考える製造業関係者向けに、変革のファーストステップとなり得る考え方やツールを紹介した。

 本稿では東洋エンジニアリング DXoT推進部 部長の瀬尾範章氏の講演「東洋エンジニアリングが語るAlteryx導入の成果〜業務の自動化、そしてデータインサイト中心の組織への変革〜」の内容をお伝えする。

目指すは「データインサイト中心組織」の実現

 東洋エンジニアリングは1961年に設立された総合エンジニアリング企業だ。素材やエネルギー、産業、インフラ分野などの顧客ニーズに応じ、グローバルで「一品一葉のプロジェクト」(瀬尾氏)を提供している。同社は「2025年度までに生産性を6倍に向上させる」という目標に向けて2019年からDXに取り組んでいる。

東洋エンジニアリング DXoT推進部 部長の瀬尾範章氏 東洋エンジニアリング DXoT推進部 部長の瀬尾範章氏

 瀬尾氏は同社がDXを通じて目指している組織体制として「データインサイト中心組織」という概念を提示した。一般的にDXは、現場の属人性を象徴するKKD(勘、経験、度胸)から脱却し、客観的なデータに基づく意思決定を目指す。“悪者”扱いされがちなKKDだが、瀬尾氏は「意思決定を行うのも、DXで奏功した価値の恩恵を受けるのも人間です。人間中心のDXを実現するために、KKDのような暗黙知とデータドリブンな仕組みを併用すべきです」というスタンスを取る。

 東洋エンジニアリングは、人間の意思決定能力を拡張するためにデータを利活用する組織を目指している。過去のデータに基づく可視化や分析だけでなく、シミュレーションや最適化などで未来の予測精度を高めて人間の活動を支援する。これが同社の考えるデータインサイトの在り方だ。

データ活用を阻む3つの壁

 では、データインサイト中心組織をどう実現するか。ポイントの1つが、「データ利用」から「データ活用」につなげる仕組みづくりだ。瀬尾氏は「データインサイト中心組織は、データを収集・蓄積して利活用するサイクルを継続的に回す組織です。しかし活用に至らず利用で止まるケースが多く見られます」と指摘する。データを具体的なアクションにつなげられず、改革が頓挫する企業は少なくない。

 瀬尾氏はアクションの実行を阻む障壁の具体例を挙げた。1つは、段階を踏まず一足飛びにAI(人工知能)による予測のような高度な仕組みを導入しようとすることだ。もう1つが、データ活用のためのシステムやツールの導入、データ人材の育成を個別の施策として推進することだ。「経営トップやデータ、業務、システム、人材を一体としてステップ・バイ・ステップで進めることが肝要です」

 データ利活用の推進においては、データサイエンティストを支援する環境の構築も重要だという。単に人材を採用・育成するだけでは不十分であり、活躍しやすいアナリティクスの支援体制を考える必要がある。

 東洋エンジニアリングは、2019年以前もDXプロジェクトを推進していた。しかし当時は「とにかくツールを使ってもらえば自然と価値が分かるだろうと考え、課題設定をおろそかにしていました」という。その結果、DX推進は思うように進まなかったようだ。

 この反省から同社は、「課題解決ドリブンでの変革推進」を志向している。誰もが共感できる分かりやすい課題を設定し、その解決を通じて新しい価値を生み出していく。課題解決に用いる方法は段階的に高度化する。1段階目はデジタル技術を活用する「分かりやすい手法」で、2段階目がプロセスの最適化による「これまでできなかった手法」、最後はデータドリブンな意思決定による「想像していた手法」だ。

3段階で進める課題解決ドリブンの変革 3段階で進める課題解決ドリブンの変革[クリックして拡大] 提供:東洋エンジニアリング

 1段階目の事例として紹介したのが、米Alteryxの製品を用いた業務のデジタル化だ。Alteryxは業務の従事者がデータを活用して価値あるインサイトを得るためのソフトウェアやサービスを展開している。グローバルで約8400社の導入事例があり、東洋エンジニアリングもその一社だ。

 以前の東洋エンジニアリングは、プラントなどの建設現場において紙の図面や承認待ちのドキュメントが生産性の向上を妨げていた。そこでAlteryxのツールを導入し、紙仕事を劇的に減らすことに成功した。

 Alteryx製品の適用範囲はデータの整合性チェックの自動化による生産性向上、数十万点の部品のBIMモデリング自動化、リードタイム短縮のための業務プロセス組み替え、3Dモデルによる業務ステータスの可視化など広範囲にわたる。300以上の業務のデジタル化に成功し、結果としてエンジニアリング業務の工数の約30%を削減できた。そのうち約30%がAlteryxのツールが貢献した成果だ。

Alteryx製品を使った施策展開 Alteryx製品を使った施策展開[クリックして拡大] 提供:東洋エンジニアリング

 データの生成から活用までの流れを示すデータバリューチェーンにおいては、特にデータの前処理までの作業は付加価値が生まれにくいが、業務負荷はチェーン全体の約8割を占めているともいわれる。Alteryx製品を活用することで、業務が完了すると前処理まで完了した、質が担保されたデータを効率的に得ることができる状況を作り出せる。デジタル化が進展してデータの創出量が増えれば、データ利活用でより大きな価値創出が可能になるという好循環が生まれる。

業務領域横断でデータを統合

 デジタル化を進めると、変革の2段階目である「これまでできなかった手法」に挑戦できるようになる。デジタル化による改革の中で、どの業務にどのツールが必要か自然と理解されるようになる。東洋エンジニアリングの場合はプロジェクトマネジメントが事業の主体であるため、プロジェクト、エンジニアリング、サプライチェーン、コンストラクション、ナレッジの5つの業務領域でデジタル化が進行していると整理できた。

 そこで同社は各業務領域のデータをハブとみなし、それらを統合する基盤を構築した。これによって将来予測などの未来志向のデータ利活用を実行しやすい環境が整いつつある。IoT(モノのインターネット)で集めた現実空間の情報を基に仮想空間にプラントのデジタルツインを構築する、といった施策の実現が近づく。プラントを丸ごとシミュレーションする技術的な基盤が整備できるということだ。

 業務領域を横断してデータが1カ所に統合されると、データに自らアクセスすることで他部門、他事業の状況や特定のベンダーのステータスなどをいつでもどこでも把握できる。データが1カ所に蓄積されるため、AIを用いたシミュレーションによる計画最適化やイレギュラーの検知に伴うリプランニングなども実行しやすくなる。将来起こり得るリスクをAIが判定して、アクシデントを未然に防ぐリスクマネジメントも可能になるはずだ。

業務横断的なデータ基盤構築を進める 業務横断的なデータ基盤構築を進める[クリックして拡大] 提供:東洋エンジニアリング

 こうしたデジタルツインの存在が、変革の最後のステップである「想像していた手法」にも大きく関わる。東洋エンジニアリングは経営判断を支援できるデジタルツインの使い方を構想している。コーポレートデータと現場データをリアルタイムでデジタルツインに連携させることで、経営に資するデータを一元的に把握できるようにするというものだ。データに基づく経営予測をAIや各種数理モデルで実現することで、意思決定をサポートする。

経営判断を支援するデジタルツインの実現を 経営判断を支援するデジタルツインの実現を[クリックして拡大] 提供:東洋エンジニアリング

組織や情報発信の在り方も再考を

 瀬尾氏はDXにおけるデータ人材育成の重要性についても語った。人材戦略は経営戦略と連動させる形で展開することが大事だ。これを怠ると、データ活用人材は社内で孤立してしまいかねないので注意が必要だ。

 これまで説明した通り、DXの進捗(しんちょく)度合いに応じて課題解決の手法は高度化され、最終的にはビジネス自体の変革につながる。DX人材の育成は「目の前の課題解決だけでなく、新たなビジネスを創出する人材を育てることだと考えて取り組むことが大事です」と瀬尾氏は説明した。

 組織の在り方も見直す必要がある。データ利活用でビジネスの価値を創出するには、データのサイロ化を解消して部門横断のプロジェクトを遂行しなければならない。そのための環境としては、共通の目的でつながりやすいフラットなネットワーク型組織が適している。東洋エンジニアリングは、組織横断で活躍するCoE(センターオブエクセレンス)を設置して取り組んでいる。

 ただ、フラットな組織運営には特有の課題もある。最先端の取り組みを進めているため、周囲の理解を得にくいといったものだ。瀬尾氏は「データ活用人材に高いパフォーマンスを維持させるためにも、彼らの取り組みを積極的に発信する必要があります」と語る。同社はグローバルでCoEの成果報告をライブ動画や社内報などに掲載して発信し続けている。

 発信活動だけでなく、人事制度も改革してデータ活用に関する適切な評価の仕組みをつくることも重要だ。やはり「(データ利活用の)組織カルチャーは、組織の仕組みやルールがあって初めて時間をかけつつも根付いていくものだと思っています」。

 最後に瀬尾氏は「激動の時代ですが、世の中の環境変化に適応し、常に世界をリードし続けられるように変革の在り方を考えながら毎日を過ごす必要があります。その重要性がこれからさらに高まると思いながら、DXを推進しています」とコメントした。

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提供:アルテリックス・ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年8月7日