いつまで紙で記録を続けるつもり? 点検管理システムが変える設備保全の在り方点検業務のデジタル化

保全業務は生産設備の安定稼働には欠かせないが、いまだに多くの製造現場は紙で点検記録を行っており、点検作業・転記作業などが大きな負担になっている。この点検業務の簡略化を目指して設備点検プラットフォーム「MONiPLAT(モニプラット)」を2023年にリリースしたのが、化学製品メーカーのバルカーだ。ソフトウェア事業を強化するバルカーの取り組みと、既に利用社数が400を超え、一つの潮流となりつつあるMONiPLATがもたらす価値を紹介する。

» 2024年03月22日 10時00分 公開
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 1927年に創業したバルカーは、産業用のフッ素樹脂や高機能ゴムなどの素材製品を扱う、工業用パッキンやガスケットなどのシール材の大手企業だ。これら化学素材製品のメーカーとして成長してきた。2000年前後には新たなビジネスの柱として、これらのハード製品に付随するエンジニアリングサービスを含む「コト売りビジネス」の展開を始めた。現在はそこにDX(デジタルトランスフォーメーション)のコンセプトを組み合わせ、より付加価値の高いデジタルサービスにも取り組んでいる。

設備点検プラットフォーム「MONiPLAT」を展開

 2023年4月に提供を開始したのが、設備の定期点検や状態監視を一元的に管理できる設備点検プラットフォーム「MONiPLAT」(モニプラット)だ。MONiPLATは設備点検の基本である定期点検にフォーカスし、アナログな紙での点検業務をスマートフォンやタブレットで簡単にペーパーレス化できる。

photo バルカー H&S事業本部サービスソリューション営業部 オペレーションディレクターの藤田勇哉氏

 MONiPLATの開発のきっかけについて、バルカー H&S事業本部サービスソリューション営業部 オペレーションディレクターの藤田勇哉氏は「大手企業はDXの推進やIoT(モノのインターネット)の活用などを自社で進めています。しかし、自社だけではDXなどに取り組めない企業も数多くあります。大手だけでなく、中小企業などにもDXの恩恵が広がれば日本の製造業はさらに効率的に進化できます。そこで、製造業としてのバルカーの知見を組み込んで中小企業にとっても使いやすいデジタルサービスを展開することを考えました」と語る。

 点検業務を対象とした理由については「各設備に1日数回も足を運んで温度や稼働状態を紙に記録し、オフィスに戻ってPCでそれを転記する作業が今でも多くの製造現場で行われています。点検は工場の安定稼働に欠かせない作業ですが、そのやり方が非常に非効率な点が目につき、それを改善する事が大きな価値になるのではないかと考えました」と藤田氏は述べる。

photo MONiPLATの3つの価値[クリックで拡大] 提供:バルカー

点検業務における3つの課題とMONiPLATによる解決策

 バルカーは、現状の点検作業には3つの課題があるとしている。1つ目の課題は、紙を使った管理とその承認作業の手間だ。多くの製造現場の点検業務はいまだに紙ベースで行われている。点検した数値を紙の帳票などに控えたり、Excelなどに入力したりした後、承認者が確認/承認し、紙や電子ファイルで保管する。これらの作業には非常に多くの手間が発生している。承認待ちや漏れなどのタイムロスも生まれ、点検内容に即座に対応することは望めない。

 MONiPLATを使えば、スマートフォン/タブレットのアプリで点検結果や写真をワンタップで入力、保存できる。その上、これらのデータを織り込んだ報告書を自動的に作成可能だ。記録から報告書作成、承認までスマートフォンやタブレットで一気に行えるため点検工数が大きく削減される。

 2つ目の課題は、点検結果を活用できていないことだ。紙での記録やExcelなどで管理する手法では、データの蓄積はできるがそのデータを活用できない。探す手間から、そのデータを日々の業務改善などに活用するところまで進めず、異常発生時にデータを見直して要因を分析するために記録しているだけになってしまっている。

 MONiPLATを活用すれば、日々の点検結果を自動的にグラフ化して中長期的なトレンドなどを把握し、日常的な活動の中にこれらのデータを取り込める。また、点検結果・実績はCSVとしてもダウンロード可能。点検結果や点検実績、特定の設備や事業所、点検項目に絞った形での出力も可能だ。

photo バルカー H&S事業本部サービスソリューション営業部プロダクトグロースエキスパートの速水章悟氏

 3つ目の課題は、点検漏れの頻発だ。紙と人手の作業に頼る現状では、どうしても点検作業そのものの抜け漏れに加え、記入漏れや記入ミスなどが頻発する。MONiPLATは、点検および記録業務をスケジュール化して管理できる。いつ、何の設備の点検が必要かをカレンダー(スケジュール表)で示す。点検漏れ件数や実施件数の一覧表示も可能なので、これらのミスを限りなく減らせる。

 バルカー H&S事業本部サービスソリューション営業部プロダクトグロースエキスパートの速水章悟氏は「MONiPLATはバルカーが製造現場で行ってきた点検業務のノウハウを生かし、現場に寄り添い、使いやすい形に最適化している点が特徴です。アプリのUIから点検業務に関係のない要素を排除し、シンプルで分かりやすくしています」と述べる。

photo MONiPLATの点検スケジュールと点検報告書作成の画面イメージ[クリックで拡大] 提供:バルカー

20設備までは無料で利用可能 導入実績では36%の点検業務削減効果も

 バルカーは、DXが難しかった企業でも使えるようにMONiPLAT導入のハードルを下げている。20設備までは月額利用料を無料としており「まずは使ってもらい、より多くの企業に価値を知ってもらいたいと考えています」と速水氏は狙いについて述べる。

 20設備以上の月額利用料は、50設備までが1万5000円。100設備までが3万円など、設備数に応じた価格設定となっている。上限なしの場合は月額15万円だ。「工場の設備数を考えると、成果が出れば20設備以上で使いたいというケースも出てきます。まずは、点検業務において紙からデジタルへの移行を推進します。現場データが自然な形でプラットフォームに集まるようになれば、そのデータを活用したり他のデータと組み合わせたりすることで新たな付加価値を生むことができます。導入企業を増やしつつ、その先の付加価値を作る取り組みも積極的に進めていきます」と藤田氏は語る。

photophoto MONiPLATの料金体系(税別価格、左)とユーザー実績(右)[クリックで拡大] 提供:バルカー

 導入企業は順調に拡大している。提供開始から約10カ月(2024年2月時点)で400社に導入されており、これは想定以上のペースだという。導入企業を規模別で見ると、100億円以下の中小企業が6割を占めた。「20設備まで無料などの料金設定が多様な企業から評価されている」(藤田氏)。当初想定していた石油化学系だけでなく医療や食品、鉄鋼や金属、建設など幅広い業種から引き合いがある。

 導入企業の反応も好評だ。ある企業は紙による日次点検結果のデータ化時間削減を目的にMONiPLATを導入し、試験導入では151分かかっていた点検作業時間が96分(36%削減)になったという。データ化のためにかかっていた転記などの時間を削減しただけでなく、紙に記入するよりもスマートフォンに入力する方が短時間で済むという点も成果につながったとしている。

 予想外の導入事例として、車両管理にMONiPLATを導入したケースなどもあるという。「車両を取り扱う企業で、バックオフィスの効率化や車両管理情報の共有などのタイムラグ低減を目的に導入していただきました。MONiPLATを車両の日常点検ツールとして活用していただき、導入後は『定期保全が楽になった。レポーティング機能もあり、エビデンスを残せるのも大きい』と評価を頂いています」(藤田氏)と幅広い成果を訴える。

TBMの機能強化とCBM機能の拡充

 バルカーは、MONiPLATの今後について2つの方向で強化する方針だ。一つが、既存のTBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)関連機能の改善と強化だ。現バージョンでは点検結果をPDFで出力しているが「データを分析したいという声が多かった」(速水氏)ため、CSV形式での出力機能が3月よりリリースとなった。合わせて、設備点検項目の検索機能や点検作業時間の自動計算機能も追加された。「基本的なTBM機能は整っていると考えています。ただ、リリースから9カ月たち、ユーザーも増えています。そのフィードバックを多く受けるようになり、使い方に合った機能なども求められています。こうした点の改善を進めていきます」と速水氏は語る。また、TBMオプション機能として2024年度中にはスマートフォンカメラでメーターの写真を撮影するだけで、AIが数値を読み取り自動保存する機能の提供を開始する予定だ。 

 もう一つがCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)機能の拡充だ。バルカー社内でのテスト結果などを生かして作動油のセンシングでパッキンの寿命を検知する状態監視ソリューション「VALVESTA(バルベスタ)」「SealMote(シールモート)」や、ポンプやモーターの変化を振動計測と独自アルゴリズム解析で状態監視するサービス「VHERME(ベルム)」などを用意しているが、同社はまだ十分だとは考えていない。

 自社のノウハウを生かしたソリューションの拡充と同時に、同社が保有していないセンシングなどのノウハウや知見を持つ企業との協業も模索する。「パートナーを拡充することで、状態基準保全ができる範囲を広げていきます。プラットフォーム上でこうしたデータを組み合わせて分析することで、複合的なシステムとして異常監視なども行えるようになります」と藤田氏は述べる。

 製造現場で人手不足が進む中で、人手に頼った点検業務の“無駄”は従来以上に負担が重くなっている。特に紙業務が数多く残る場合はより深刻だ。こうした「紙の点検作業」に悩む製造現場にとって、とても簡単にスモールスタートで使えるMONiPLATは一つの解決策になるだろう。

photo バルカーの藤田氏(左)と速水氏(右)

(※)MONiPLAT、VHERME、VALVESTA、SealMoteは、バルカーの商標または登録商標です。

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提供:株式会社バルカー
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年5月5日