CO2の「可視化」から「削減」までをワンストップで支援――カーボンニュートラルの実現に向けて企業がまず始めるべき一歩とは?カーボンニュートラル実現に必要なこと

全世界でGXの動きが加速する中、KDDIは2023年10月31日から法人向けに、カーボンニュートラル実現をワンストップで支援するサービス「KDDI Green Digital Solution」の提供を開始した。サービス開発に当たり、タッグを組んだのがCO2排出量の可視化や削減サービスなどを手掛けるアスエネだ。本記事では同社の代表取締役CEOの西和田浩平氏と、KDDI ソリューション推進本部 サービス企画部長の梶川真宏氏が対談し、世界と比べた日本企業によるカーボンニュートラルの取り組み状況と今後の動向、最初のステップとなる可視化の重要性、両社がタッグを組んだ背景などを語り合った。

» 2024年01月18日 10時00分 公開
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【コラム】GXとカーボンニュートラル

 GX(グリーントランスフォーメーション)とは、温室効果ガスが発生する化石燃料を使ったエネルギー中心の社会から、太陽光発電などの環境に配慮したクリーンなエネルギーを中心とする社会へと転換、変革しようとする活動や取り組みのこと。

 カーボンニュートラルは、CO2など温室効果ガスの「排出量」と、森林管理などによる「吸収量」を差し引き、温室効果ガスを実質的にゼロにすること。日本政府は2050年までのカーボンニュートラルの実現を宣言している。

※記事内の部署名、役職は取材当時のものです。


上場企業を中心に進むカーボンニュートラルの取り組み

――アスエネはカーボンニュートラルなどの社会課題に対して、どのような事業を展開されているのでしょうか。

アスエネ Co-Founder代表取締役CEOの西和田浩平氏 アスエネ Co-Founder代表取締役CEOの西和田浩平氏 提供:KDDI

西和田浩平氏(西和田氏) アスエネは、気候変動に伴って生じている社会課題をテクノロジーで解決する「クライメートテック」の企業として、2019年に設立しました。事業の中心は、法人向けのCO2排出量見える化/削減/報告クラウドサービス「アスエネ」です。その他、持続的なサプライチェーン調達を実現するためのクラウド評価サービス「アスエネESG」や、カーボンクレジット/排出権取引所である「Carbon EX」も手掛けています。

 これらのサービスを通じて、大気中に放出するCO2量と除去される量が同じ状態である「ネットゼロ」や、「次世代によりよい世界を」という企業ミッションを実現するために、日々活動しています。そのために、国内だけでなく海外の拠点作りも拡大しているところです。

――カーボンニュートラルについて、日本企業の現状や課題をどのように思われますか。

西和田氏 さまざまな取り組みが先行する欧州と比較して、日本は「遅れている」と見られがちですが、実はアジア・オセアニア地域では、シンガポールやオーストラリアとともに日本は比較的リードしている国です。

 とりわけ上場企業では、その取り組みが進んでいます。2021年に金融庁と東京証券取引所によるコーポレートガバナンス・コードが改訂され、サステナビリティに関する情報開示が求められるようになりました。また株主をはじめとするステークホルダーからの要望もあり、排出量の見える化に取り組む企業は増えています。上場企業でも温度差はありますが、経営層が問題を意識しており、危機感が強い企業は、かなり取り組みが進んでいると思います。

KDDI ソリューション推進本部 サービス企画部長の梶川真宏氏 KDDI ソリューション推進本部 サービス企画部長の梶川真宏氏 提供:KDDI

梶川真宏氏(梶川氏) 上場企業が動き始めた影響で、中小企業にも変化が生じつつあります。取引先にもグリーン化を求めるケースが増えたことが背景にあると考えています。

 一方で、自社内での取り組みに終始している企業もまだ多いようです。企業活動で排出されるCO2にはScope1〜3まで3つの区分があります。中でもサプライチェーンなど自社活動に関わる他社が排出するCO2であるScope3まで踏み込むケースは少なく感じます。

【コラム】GXとカーボンニュートラル

企業活動によって発生する温室効果ガス排出量をCO2に換算。サプライチェーン全体のCO2排出量の見える化を実現 企業活動によって発生する温室効果ガス排出量をCO2に換算。サプライチェーン全体のCO2排出量の見える化を実現[クリックして拡大] 提供:KDDI

 製品がつくられてから廃棄されるまでのサプライチェーン上でのCO2排出量について、Scope1、2、3と異なる範囲で分類したもの。カーボンニュートラルの取り組みでは、実現に向けてライフサイクル全体(Scope1〜3の視点)のCO2排出量を考え、サプライチェーン全体で削減に取り組むことが求められている。

 Scope1は燃料の燃焼や、製品の製造などにより「自社が直接排出」したCO2。Scope2は他社から供給された電気/熱などを使用することで、「自社が間接排出」したCO2。Scope3は「1、2以外の原材料仕入れや販売後に排出」されたCO2で、ある企業から見た際のサプライチェーンの「上流」と「下流」から排出されるCO2が対象となっている。


今後は規制強化が進み、日本企業もScope3までの対応が必要に

西和田氏 まず、欧米と比較して政府などの規制の強さに違いがあると感じています。炭素税もそうですし、カーボンクレジットの売買も道半ばです。規制ができて、CO2の排出をビジネス上のコストとして企業が認識するようになれば、取り組むインセンティブにもなるはずです。

梶川氏 自社のCO2排出量を認識できていない企業も多いです。会計などと違って、算出方法が広く知られていないことも影響しているのではないでしょうか。

西和田氏 今後は自社だけでなくサプライチェーンも含めて排出量を可視化した上でCO2排出量を削減する動きが求められます。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は今後、Scope3に関しても開示を義務化する方針を示していますので、日本企業も間違いなく対応する必要が出てくるはずです。

梶川氏 CO2排出量の削減は遅れているのではなく、まさにこれから本格的に始まっていく段階だと考えています。その中で「アスエネ」のようなサービスと連携していくことで、お客さまに寄り添って支援ができると考えております。

まず着手すべきは「可視化」 そして削減、カーボンニュートラルの実践へ

――「サプライチェーンまで含めてCO2の削減が求められるようになる」とのことですが、企業はまず何から着手すべきなのでしょうか。

西和田氏 先ほど梶川さんがお話しされた通り、まずは可視化です。ただ、可視化が目的にならないように注意も必要です。あくまで目的は、その先にある削減やカーボンニュートラルの実現です。そのためには、可視化の先までを見込んでトータルに取り組む必要があります。

梶川氏 可視化により現状を把握した上でカーボンニュートラルに向けた戦略の策定を行い、実行していくことが重要です。

――まずは可視化とのことですが、そのような取り組みを始める企業に対して「アスエネ」ではどのようなことをご提供できるのでしょうか。

西和田氏 「アスエネ」の特長は、クラウド上で企業活動全体のCO2排出量を可視化できることです。Scope1〜3までのさまざまな計算方法に対応しています。

 また、商品やサービスのライフサイクル全体で排出するCO2を算定する仕組みである「カーボンフットプリント(CFP)」にも対応しています。一般にScope3は原材料のコストなどからラフに計算することが多いのですが、さまざまなデータを基に精緻に可視化できる点は、競合サービスと比較した際の優位点になります。

データ入力:AI-OCR、CSVアップロード、手動入力などで排出量を算出、分析:算定結果を自動でグラフ化、分析データ作成、レポート:専門知識が必要な外部向けのレポート作成を支援 ※画像はイメージです データ入力:AI-OCR、CSVアップロード、手動入力などで排出量を算出、分析:算定結果を自動でグラフ化、分析データ作成、レポート:専門知識が必要な外部向けのレポート作成を支援 ※画像はイメージです[クリックして拡大] 提供:KDDI

西和田氏 代表的な事例として、大手建設会社のケースがあります。こちらのお客さまは、従来Scope1〜3の計算に大きな手間がかかっていました。膨大な数の現場で排出量の計算、収集、統合を行うため、時間もかかりますし、人為的なミスも発生していたと伺っています。「アスエネ」を導入して、各現場が直接クラウド上にデータを入力する形になり、集計が非常に楽になったそうです。導入2年目となった2023年は、国内だけでなく海外での活用も進められています。

両社の提携でCO2排出量の可視化から削減まで多様なワンストップ支援が実現

――KDDIは2023年9月、「アスエネ」の提供を含めてCO2排出量の可視化から削減計画の立案から実行までをワンストップで支援するサービス「KDDI Green Digital Solution」を発表しました。今回、両社でタッグを組んだポイントをお聞かせください。

梶川氏 KDDIグループは通信キャリアだけでなく、再生可能エネルギーを扱うグループ会社のケイパビリティを有しています。一方で、包括的なサービスを提供するには不足している部分もあり、そこを補完していただけるパートナーを探していました。

 アスエネはCO2排出量を可視化するサービスの市場で、非常に高いシェアをお持ちで、提携に至りました。今回の提携によって、さらに広い範囲でソリューションを提供できる体制となりましたので、お客さまに届ける価値もさらに高められると考えています。

 グローバル展開に注力されている点もポイントです。当社も海外に現地法人を多く持っており、これから取り組みを進めていくに当たり、高いシナジーがあると考えました。

西和田氏 当社としては、KDDIのような国内トップクラスの企業と一緒に、グローバル市場に進出できることは非常に意味があると考えています。これまで当社は直販体制を強みに売り上げを伸ばしてきました。ですが、今後さらなる成長を見込む上では、海外へと打って出る必要があります。そこで、国内と海外を含めて「面」で市場を獲得していく強いパートナーが必要になると思い、KDDIとの連携を決めました。

梶川氏 すでに両社のシンガポール法人で提携も結んでおり、グローバルでのシナジーは早速生まれています。今後はシンガポールにとどまらず、欧州や米国でも広げていければと考えています。

CO2排出量可視化から削減まで、お客さまのカーボンニュートラル実現をサポート CO2排出量可視化から削減まで、お客さまのカーボンニュートラル実現をサポート[クリックして拡大] 提供:KDDI

――今後、両社として目指すゴールや展望についてお聞かせください。

西和田氏 先ほどはグローバルの話もしましたが、まず日本での事業展開を1丁目1番地として取り組みます。OpenAIの対話型AI(人工知能)サービス「ChatGPT」などのホットトピックスも機能に取り入れながら、「アスエネ」のサービス強化に取り組んでいきたいと思います。

 また、最近はアスエネESGへの注目度も高まっていると感じています。2023年10月に開設したCarbon EXも、これからカーボンクレジット市場が伸びる中でチャンスが大きい領域です。KDDIとのパートナーシップを武器に、脱炭素領域で群戦略を仕掛けていければと考えています。

梶川氏 KDDI Green Digital Solutionの大きな価値は、可視化から削減の実行までをお客さまの状況に合わせてワンストップで提供できることにあります。これまでKDDIで提供してきた既存サービスに組み込むことで、既存のお客さまも新規のお客さまもCO2の削減につなげるトータル支援が可能です。

 今後はお客さまへのDX(デジタルトランスフォーメーション)の提案時にKDDI Green Digital Solutionを加えることも考えています。例えば、工場のデジタル化支援にCO2の可視化ソリューションを組み合わせれば、電力消費量と稼働状況をリンクさせながらより最適なご提案ができるようになります。これからもパートナー企業さまと協力してサービスの範囲を広げながら、よりお客さまの事業成長や社会貢献に貢献していきたいと考えております。

西和田浩平氏(左)と梶川真宏氏(右) 西和田浩平氏(左)と梶川真宏氏(右)[クリックして拡大] 提供:KDDI

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CO2排出量の見える化だけじゃない!いま取り組むべきカーボンニュートラルの実践方法

 企業のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速していますが、それにはサプライチェーン全体での正確なCO2排出量の把握やCO2排出量の削減、気候変動に関する情報開示などの複雑なプロセスに対応しなければなりません。取り組みに向けた第一歩として、自社のCO2排出量の見える化と、それをどのように削減していくかの検討が必要です。

 本セミナーでは、アスエネがCO2排出量見える化ソリューションを、KDDIがICT/DX/電気の削減ソリューションをご紹介いたします。またグローバルなサプライチェーンへの対応として、一次データ取得と削減策検討に役立つ海外でのDXソリューションの取り組みをご紹介いたします。


※本記事はKDDIWebサイト「beCONNECTED.」からの転載です。


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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年2月12日