3D都市モデルや点群データ、CADデータなどをゲームエンジンに取り込んで高品質な3D都市空間のビジュアライゼーションを実現し、高度なシミュレーション環境として利用しようという機運が高まっている。技術力とデザイン力で+αの付加価値を提供するシリコンスタジオのソリューションを紹介する。
都市計画や自動運転技術の開発、災害予測などを中心に、3D都市モデルを活用したシミュレーション環境に対する関心が高まりつつある。
CAD/BIM活用の浸透、空間情報などを高精度に取得できる3D計測技術の目覚ましい進化も、こうした動きを後押ししている。無料で入手でき、かつ改変可能なオープンデータの存在も大きい。3D都市モデルの整備と活用、オープン化を推進する国土交通省主導のプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」は、日本全国のオープン3D都市モデルを順次公開しており、約130都市(2022年度時点)をカバーしている。
3D都市モデルや点群データ、CADデータなどを取り込んで高品質な3D都市空間のビジュアライゼーションを実現し、高度なシミュレーション環境を構築するのが3Dグラフィックスの統合開発環境とも言えるゲームエンジンだ。「Unreal Engine」や「Unity」に代表されるゲームエンジンは文字通りゲーム開発環境として知られるが、近年は製造業や建築業などの産業分野での活用も急速に進んでいる。フォトリアルな3D都市空間を作り出せるだけでなく、時間や日照条件、天候などを自由自在に操れるためシミュレーション環境の構築に適している。
しかし、PLATEAUなどのオープンデータとゲームエンジンだけでは、目的に合ったシミュレーション環境を構築できるとは限らない。例えば自動運転の学習結果を検証する場合、標識や信号機、路面表示などの位置情報を含む道路データやアセットモデルが必要だ。対象の地域によっては屋根や外壁のテクスチャーデータが存在しないこともあり得る。このようなデータの不足をどのように補うべきかという問題に加え、環境構築には各種データをゲームエンジンに正しく取り込むためのデータ変換や大規模なデータを軽快に表示するためのテクニックなども必要になる。
「用途によって、精細さ、リアルさが求められる部分は異なります。不足しているデータを補完し、高品質なビジュアルにする技術力も要求されます。いろいろな課題をクリアしてそれぞれの用途に合った3D都市空間のビジュアライゼーション環境を構築するには、3Dグラフィックスに相当精通していなければ困難です」とシリコンスタジオ 執行役員 テクノロジー事業本部 技術統括部 統括部長の神鳥泰章氏は語る。
シリコンスタジオは、3D CG技術で世界をリードした米Silicon Graphicsの日本法人である日本SGIの関連会社として1999年11月に設立された企業だ。その系譜から分かる通り、生まれながらにして3D CGに強みを持つ同社はゲーム/エンターテインメント分野で培ってきたリアルタイム3D CG技術をコアに、ゲームエンジンやクラウド技術を活用したビジュアライゼーション環境の構築などのソリューションを製造業や建築業などの産業分野に提供している。
シリコンスタジオの最大の特長は3D CGとゲームエンジンに熟知した高い技術力と、妥協のない再現性、美しい仕上がりを可能にする優れたデザイン力を兼ね備えている点にある。例えば、CADデータなどをゲームエンジンに取り込む際に情報の欠損をなくすための独自のデータ変換ツールを作るなど、ゲームエンジンを知り尽くしているからこそできる開発を行っている。デザイン力に関しては、プログラミングにも精通した同社の「テクニカルアーティスト」と呼ばれるデザイナーが、フォトリアルな3D都市空間を再現するのに不可欠な、高品質の市街地アセットモデル(信号機やガードレール、路面表示、自動車、人などのパーツ)を独自に作り込んでいる。「3D CGやゲームエンジンに関する高い技術だけでなく、デザイン力という+αの付加価値をご提供できるのが当社の強みだと自負しています」(神鳥氏)
3D都市モデルや点群データ、CADデータなどの各種データ、ゲームエンジン、高品質なアセットモデルを用いることで、実在の都市を完全再現することも不可能ではない。しかし、用途が自動運転の学習・検証用走行データの取得だとすると、建物のテクスチャーなどは低品質なものでも問題ないはずだ。「お客さまの用途に応じて、作り込む部分はとことん追求し、そうでない部分は使用に問題ないレベルに抑えるといった形で最適な3D都市空間ビジュアライゼーションを提供しています」と神鳥氏は説明する。シリコンスタジオはこの考えに基づき、さまざまな独自ツールも開発している。
オープンデータとして注目を集めるPLATEAUの都市モデルデータの場合、0〜4の5段階のLOD(Level Of Detail)が定義されている。テクスチャー情報が含まれているのはLOD2以上だ。街の中心部はLOD2で提供されていても、中心部から少し外れるとLOD1になってしまうことがある。LOD1のままでは、建物はただの白い箱でしか表せない。
シリコンスタジオは、PLATEAUのLOD1モデルに対して窓やドア、建物の色やテクスチャーを自動生成する独自開発ツール「Procedural PLATEAU」の整備を進めている。これは、街の俯瞰(ふかん)といった遠景として使用するケース(例えばドローンの飛行シミュレーション用途)に必要十分な品質の3D都市を表現するのに最適だ。
ある市街地をモデルにした自動車の走行シミュレーションならば、走行環境を再現する必要がある。PLATEAUのデータには標識などが含まれないため、シリコンスタジオは地図データをパートナー企業から入手して利用する。その際、地図データに含まれる道路付属物の位置情報に基づいて、実際の位置に標識などのアセットモデルを自動生成して配置する技術を独自開発している。
3D都市空間で使用する標識など、シリコンスタジオが独自に用意するアセットモデルは日本国内の道路で使用されているものが一通りそろっている。同じ標識でも形状ゆがみやさび、塗装の経年劣化まで再現できる他、信号機の点灯/点滅も行える。
シリコンスタジオはアセットモデルのさらなる拡張にも取り組んでおり、車道の自転車走行レーンを走る自転車や歩道を歩く人などを再現するアニメーション付きアセット、交通ルールにのっとって走行する自動車のアセットなどを開発している。神鳥氏は「アニメーションや決められたロジックに基づいて動くアセットモデルは、自動運転の学習用走行データの取得や学習結果の検証に役立つと考えています」と期待を寄せる。
3D都市モデルを活用したシミュレーション環境のユースケースの有力候補が自動車開発だ。特に、自動運転技術開発のための、さまざまな時間や天候などを加味した膨大な学習用走行データの取得や学習結果を踏まえた制御ロジックの検証での活用が見込まれる。
自動車以外のモビリティーとしては、実際に飛ばして検証するのが難しいドローンの飛行シミュレーションや建設機械のリスク検討、無人配送ロボットの走行シミュレーションなどもユースケースとして考えられる。
都市計画や景観シミュレーションといった、建築や不動産関連での利用も有力だ。街並みを可視化するだけでなく、消火設備や電柱が自動車や歩行者の妨げにならないかどうか、設置するデジタルサイネージがきちんと見えるかどうか、ビルからどのようなランドマークが見えるかなど、実物を作る前に確認できるのは3D都市モデルならではのメリットだ。
今後もシリコンスタジオは、3D都市空間ビジュアライゼーションのソリューションとしての価値をさらに高めていく考えだ。「そもそも一つのデータで全てそろうとは考えていません。特定の場所だけ自力でデータを集めることも含め、自動でできる技術と手動を組み合わせていかなければいけないと思っています」と神鳥氏。自動生成しているテクスチャーや素材感を表現する光の反射などの再現力を追求すると同時に、建物情報さえデータ化されていない山間部などについては広域の情報が得られる航空写真などを活用して対応エリアを広げることも視野に入れている。
3Dで都市空間をビジュアライズすることによって、見えてくるもの、気付かされることは想像以上に多い。安価に入手できるデータ、無料で使えるデータも増え、今まで図面を見て頭の中でイメージしていたことが仮想空間で見られる時代になっている。しかし、膨大な量のデータを扱い、足りない情報を付加して目的に合った質の高い3D都市モデルを構築するのは非常にハードルが高い。
「われわれは、技術とデザインの両方の力を備えています。これまで培ってきた技術力と、デザイナーの感性とこだわりによって、用途に応じた最適なソリューション+αの付加価値を作っていきたいと考えています。3D都市モデルの活用は大きな可能性を秘めています。思いも寄らない新しい使い方などを含め、さまざまな用途に応えていきます」(神鳥氏)
「3D都市モデルを活用したいがどうすればよいか分からない」という方や、「自社製品の開発や検証などに3D都市モデルを活用してみたい」という方は、シリコンスタジオに相談してみるといいだろう。
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提供:シリコンスタジオ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年11月24日