才能を引き付けるのは“情熱” 現代のグローバルリーダーに必要な人材育成の考え方雇用戦略と人材育成

テュフズードジャパンは創立30周年を記念したイベントで「人材育成の先にある成功」と題したパネルディスカッションを開催。企業の成長に寄与する人材育成において経営陣が果たすべき責務と意識改革について、登壇者が熱く語り合った。

» 2023年09月29日 10時00分 公開
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 人材育成はあらゆる企業にとって成長の要だ。特に、少子高齢化が進む日本においては限りある労働人口から有能な人材を雇用し、自社の成長に寄与するように育てることの重要性が増している。最近では、人材の多様性を確保しつつ育成する「ダイバーシティー&インクルージョン」の取り組みなども意識しなければならない。

 国際的な第三者認証機関であるテュフズードの日本法人であるテュフズードジャパンは、2023年8月30日に創立30周年を記念したイベント「Celebrating 30 years of People Power: NURTURING TALENT, INSPIRING SUCCESS(人材育成の先にある成功)」を開催した。4人のパネリストが雇用戦略やダイバーシティー&インクルージョンの取り組み、人材育成に関する課題とその解決策などについて意見を交換した。

当日のパネルディスカッションの様子 出所:テュフズードジャパン

“情熱”が人材を引き付ける

 パネルディスカッションは、在日ドイツ商工会議所 COO(最高執行責任者)のLucas Witoslawski氏をモデレーターとし、ドイツの大手鉄鋼メーカーであるティッセンクルップ 日本・韓国・オーストラリア代表のNikolaus Boltze氏、女性リーダー育成のコンサルティングなどを手掛けるInstitute of Women’s Leadership代表取締役 CEO(最高経営責任者)の川嶋治子氏、インフラ設備向けロボット開発を手掛けるハイボット 共同創業者兼CEOのMichele Guarnieri氏、テュフズード COOのIshan Palit氏がパネリストとして登壇した。

ティッセンクルップ 日本・韓国・オーストラリア代表のNikolaus Boltze氏

 最初にドイツと日本における人材採用の違いについて、日本企業での就業経験もあるBoltze氏が「われわれは、依然として日本で新卒の学生を直接採用することに抵抗があります」と語った。ドイツには大学在学中のインターンシップ制度があるなど、教育機関と産業界が可能な限り連携している。このため、学生は大学を卒業する頃には産業界について一定の知識を備えており、即戦力として活躍できるという。

 ドイツは産学連携の取り組みが活発だ。「働くこと」を学生に早くから意識、経験させる取り組みが多くある。Boltze氏は「日本も学術と産業がもう少し緊密になることで、より企業への貢献度が高い人材を育てられると思います」と述べた。

 次に議論は社員の雇用や人材開発の在り方に移った。Palit氏は自身の経験を踏まえて「経営陣が仕事を通して何を目的にしているのか、どのような情熱を持っているのかが重要です。それが人々を引き付け、また入社後に定着させる一番大きな要因となります」と強調した。

ハイボット 共同創業者兼CEOのMichele Guarnieri氏

 定着率向上には、社員に知的好奇心を与え続けることが欠かせないとも述べた。これらを踏まえてテュフズードは「次世代リーダー候補向けプログラム」や「エキスパート向けプログラム」など、独自の人材開発プログラムを展開していることも紹介した。

 “情熱”というワードに触発されて、Guarnieri氏は「経営陣のリーダーシップだけではなく、技術者の人材開発でも情熱は必要です」とコメントした。技術者を含め、ハイボットの新入社員には「会社は給料で働くだけではなく、情熱を持った人材がそろっている」「世に二つとない、世界の枠組みを変えるチャレンジができる」といったメッセージを積極的に伝えているという。

多様性に基づく地域の状況に応じた採用戦略が必要に

 中盤ではWitoslawski氏が、ダイバーシティー&インクルージョンの重要性に触れつつ、日本企業が長年にわたり社会における女性の可能性に目を向けていなかったことを指摘した。現在、日本企業における女性はリーダーシップを発揮しやすい環境にあるのか。これに対して川嶋氏は、日本の大半の企業はダイバーシティーにそこまで強くは着目しておらず、女性のエグゼクティブの数も限られていると指摘する。その上で、「意思決定プロセスの中で多様な人材が関わることによって、会社の変革やグローバルにおけるビジネスに寄与できます。日本企業にはもっと多くの女性リーダーが必要です」と考えを述べた。

Institute of Women’s Leadership代表取締役 CEOの川嶋治子氏

 川嶋氏は、性差だけでなく人種や国籍の違いなどマジョリティー/マイノリティーの構図が生まれやすい環境全般に共通する問題を指摘する。一般的にマジョリティーはマイノリティーより社会的に力を持ちやすく、特に組織内では多数派の方が重要な情報や機会を得るチャンスに恵まれやすい。ダイバーシティー&インクルージョンの実現はこれを前提にした上で考えていかなければならない。そのためにも「『国籍が違うならまずは相手の文化を知ろうとする』といったふうに、相手を積極的に理解しようとする姿勢がグローバルリーダーには大事になるでしょう」(川嶋氏)と述べた。

 この発言を受けてPalit氏は「国は違えども誰もが同じ目的意識やリスペクトを持って専門性のある仕事に取り組む。共通のパッションがあると、企業文化をまとめていきやすいと思います」と語った。Boltze氏は、日本では多くの知識や経験に基づくアイデアがあっても、それを社内でオープンに語りにくい風潮があると指摘した。誰もが話しやすいプラットフォームを作り、アイデアを褒め合うことで、個々人が発表するモチベーションを高めることが大切になる。

テュフズード COOのIshan Palit氏

 採用や社員の定着率を巡る問題の解決策についても意見交換が行われた。Palit氏は「全ての課題に当てはまる単一のソリューションはありません」と指摘した。多くの経験を積んだベテラン世代と新しい世代では考え方が異なり、また世界各地域の雇用マーケットも抱えている課題がそれぞれ違う。自社の事業課題をローカルベースで見極めつつ、各地で適した人材の採用戦略を練っていかなければならない。さらに同氏は、「雇用後も社員に対して、会社の目的を定期的に発信し続ける必要があると思います」と強調した。

 ディスカッションの最後にWitoslawski氏は全体を振り返り、「会社の目的を中心に据え、それを社員と共有しながら関係を構築することが重要です。人材を引き付けるのは、やりがいのある仕事です。クライアントに対してだけではなく、社会に対する価値提供や貢献も重要です。このような社会的な意義は、人材が仕事に求める大切な要素であると言えます」と締めくくった。

情熱と才能ある人材が集うテュフズード

 テュフズードはドイツに本社を置く世界的な第三者認証機関だ。創立時から「技術的なリスクによる影響を軽減し、人々、資産、環境を保護する」をビジョンとして掲げ、創業から150年以上たった現在も安全性、セキュリティ、サステナビリティーを事業の軸に据えている。

 その日本法人として1993年に設立されたテュフズードジャパンは、EU加盟各国当局から適合性評価実施の技術的能力と適格性を有していると判断された機関「Notified Body(NB):ノーティファイド・ボディ」の機能を有している。医療機器や産業機器、電気電子機器、食品、自動車などの幅広い業種に対し、各種試験や認証、監査、マネジメントシステム認証、トレーニングなど多様なサービスを展開する。

テュフズードCEOのJohannes Bussmann氏

 現在、社会全体でコネクテッドカーやAI(人工知能)、各種ロボットの導入が進んでいる。これらのテクノロジーの信頼性やサステナビリティー、社会受容性などを確実に保証していく必要がある。以前に増してサイバーテクノロジーのエキスパート人材が対応すべき分野が広がっているのだ。

 これについてオープニングスピーチに登壇したテュフズードCEOのJohannes Bussmann氏は、「テュフズードには高度な専門性と情熱を兼ね備えた、テクノロジーのエキスパート人材が数多く在籍しています。情熱を持って仕事をしているスタッフがどの国にもいる。このことを非常に誇りに思っています」と説明した。

テュフズードジャパン 代表取締役社長のAndrea Coscia氏

 こうした人材を率いるリーダーシップの重要性も指摘して、「リーダーが自社の人材に関して知識を深めると同時に、柔軟で良好なコミュニケーションを継続する必要があります」とも語った。自社の事業成功にとって、情熱を持って顧客に貢献できる専門人材、リーダーが重要な財産になることを強調した。

 テュフズードジャパン 代表取締役社長のAndrea Coscia氏も人材が同社にとって一番大切な要素だとした上で、特にリーダーシップの重要性を指摘した。

 「リーダーは才能ある人材を引き寄せます。言い換えれば、弱いリーダーシップの下に人材は集まりません。今日のリーダーは人々の才能を認識、発見、開発、維持する責任を負っており、持続可能な基盤を築いていかなければなりません。全ての人が才能を開花させる未来を積極的に形作っていかなければならないのです」(Coscia氏)

人材開発によって成長のエコシステムを生み出す

 テュフズードジャパンは2025年の戦略として「People growth and technical competences localization(人材の成長と技術的能力の現地化)」を掲げており、今後はより一層人材開発に尽力する。Coscia氏は「人材不足は私たちに変革を迫っています。既成概念を乗り越えて、人と組織が一丸となって成長のエコシステムを生み出す新たな道を切り開かなければなりません」と述べた。

 テクノロジーは今後も進化し続け、社会にさまざまな側面で影響を与え続ける。この中でテクノロジーの安全性を保証することの重要性はより高まるだろう。その中で、各地域の戦略に合わせて多様なプロフェッショナル人材を確保、育成する重要性を認識するテュフズードは今後さらに大きく成長していくに違いない。

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提供:テュフズードジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年10月24日