デル・テクノロジーズは「生産拠点の国内回帰に伴いデータマネジメント整備が再注目される理由」と題したオンラインセミナーを開催。本稿では、AIの活用を成果に結び付けているダイハツ工業の太古無限氏の講演などの内容を紹介する。
製造業では生産拠点の国内回帰が進みつつあるが、人手不足が深刻化する中で従来通りのモノづくりを国内に戻してもかつての競争力を得るのは難しい。そこで注目されているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。デル・テクノロジーズはオンラインセミナー「生産拠点の国内回帰に伴いデータマネジメント整備が再注目される理由 〜成功企業はなぜうまく成果を生み出し続けられるのか? 価値の生み出し方と仕組みの作り方〜」を2023年7月26日に開催した。
ダイハツ工業はAI活用をさまざまな形で進めている。その立役者であるダイハツ工業 DX推進室 データサイエンスグループ グループ長 兼 東京LABO データサイエンスグループ グループ長の太古無限氏が「現場主導の取り組みが企業を変える --- ダイハツ工業の事例に学ぶ、現場発AI活用の真価、そのポイントとは」をテーマに、ダイハツ工業におけるAI活用と成功に導くためのポイントを紹介した。
ダイハツ工業は2017年にAI活用の取り組みを始めた。当初は、組み込みエンジニアとして開発部に所属していた太古氏を含めた有志3人が、業務時間外にAIや機械学習について学ぶ非公式活動だった。この活動が広がったポイントとして、太古氏は「仲間を増やす」「テーマを集める」「事例を作る」の3点を挙げる。
「自発的なイベントを数多く企画し、面白そうだと思って集まってくるメンバーを仲間に招きました。そして仲間からテーマを集めて実際に実証する内容を決め、データ利活用事例を作るサイクルを回していきました。社内外の成功事例や失敗事例も共有し、それをフックに新たな仲間を募るという流れを作っていきました。多くの仲間を作って推進することで、競争力強化につながると信じて泥臭い地道な活動を続けてきました」と太古氏は当時を振り返る。
これらの地道な活動が実を結び、2020年10月には東京LABOデータサイエンスグループが設立され、2022年1月にはDX推進室が設置された。2023年にはダイハツ工業初のデジタル活用方針「DXビジョンハウス」なども発表され、ボトムアップとトップダウンの両輪でデジタル活用を進めることが示された。現在は太古氏の率いるデータサイエンスグループが触媒となってさまざまな部署のマインド変革を行い、各部門がデータとAIの活用を自走できるようにするための取り組みを進めている。
AIアイデア相談会やAI活用相談会、ヒアリングなどを社内で実施し、1000以上のテーマを収集して実証を進めている。AI活用によって解決できた事例としては「排水濁度予測」がある。工場から出る排水をきれいにする薬品の最適な量を機械学習で予測して投入できるようにするものだ。工場でのAI実装は既に50件以上になり、ノウハウも蓄積されてきたという。「こうした事例ができると、それをベースに新たな仲間が作れます。『DX活用事例共有会』や『ダイハツAIキャンプ』などを開催して、積極的にサイクルを回せるようにしています」(太古氏)
太古氏は「製造業では、デジタル活用以外の手段はほぼやり尽くしています。そうなると残されたDX領域の取り組みをやるのが必然的な流れです」と語る。これらを具体的に推進するのに重要なのが「データの使いやすさ」だとし、そのためにはデータ利活用ありきのデータ分析プラットフォームが必要だと訴える。「事例が増えてくると、データをいかに簡単に扱えるかが重要になります。そのためにはデータ分析基盤やデータマネジメントのコンセプトが必要になります」(太古氏)
ダイハツ工業がデータ活用を広げる上でデータ分析プラットフォームの重要性について訴えたように、デジタル化推進には膨大な量のデータをいかに適切に管理できるかが重要だ。そこで、ヴイエムウェア VMwareソリューションエンジニアの星野真知氏は「ついに時代が追い付いた!PostgresベースのDWH基盤 Greenplumの解剖」をテーマに、同社が提供するDWH(データウェアハウス)用途のデータベースサーバ「VMware Greenplum」とその価値を解説した。
星野氏は、製造業において品質管理や経営状況の把握などの改善施策が頭打ちに見えていても「その先がある」と主張。「データの粒度を上げることによってさらなる改善が見込める場面が数多く存在します。しかし、粒度をより細かくするとデータ量が飛躍的に増えるため、より『賢い、でかいバケツ』が必要です」と訴える。
その「賢い、でかいバケツ」に該当するソリューションとしてGreenplumを紹介。Greenplumは、もともとPivotal Software(ヴイエムウェアが2019年に買収)のソリューションで、「PostgreSQL」(ポスグレ)を元に開発された並列処理可能なRDB(リレーショナルデータベース)だ。複数のOSと仮想マシンで1つのクラスタを作り、「マスター」と超高速なネットワークスイッチでつないだ「セグメント」と呼ぶホストで構成される。
星野氏はGreenplumの「賢さ」を示すものとして、ソーシャルメディアのメッセージからネガティブなワードを含む文章を即座に探し出せる感情分析機能をデモで紹介。「Greenplumは『Apache MADlib』という機械学習、『GPText』という自然言語処理、Python、R、Javaなどでデータベースに実行させられる機能などを搭載しています。PythonやRといった汎用(はんよう)言語を使っているからこそ、立ち上げやすい開発体制を組むことができます」と強調する。
星野氏はGreenplumの「容量」についても言及し「シングルサーバもしくは旧来型のRDBは限界にきている」と指摘。「データ量が増えるとライセンスコストが高くなるという問題があるが、Greenplumはライセンスコストを一定に抑えつつ高いパフォーマンスを出せます。デル・テクノロジーズの『PowerFlex』や『VxRail』のようなハイパーコンバージドインフラですぐに使えるレファレンスアーキテクチャも用意しています。ソフトウェアでまず『賢い、でかいバケツ』を作り、ハードウェアでそれを固めるイメージで進めてもらいたいと考えています」と語る。
デル・テクノロジーズは、データマネジメント環境の整備におけるデータ統合の重要性を紹介。「実はデル・テクノロジーズも製造業です。国内企業が直面する課題とデル社内ITの事例から推察するデータマネジメント環境の改善ポイント」をテーマに、DCW(Data Centric Workload)ソリューション本部 Japan Country Leader 兼 Data Analytics Lead 堀田鋭二郎氏が「製造業としてのデル・テクノロジーズ」の取り組みなどを紹介した。
データマネジメントやデータ活用を効率的に行うためにはデータ統合環境の整備が必須だが、製造業ではそもそもデータを統合して管理する仕組みづくりが難しい。それを推進した事例として、堀田氏は自社のIT部隊「Dell Digital」の取り組みを紹介した。
デル・テクノロジーズのデータ統合は「ソースから効率良くデータを取り出して共有のデータ基盤を作り、マスターデータとうまく連携させて利用できるようにすることを目指しています。データをまず大きなバケツのデータレイクに入れて、VMware Greenplumのようなデータベース製品でスキーマを作り、データレイクからデータを取り出して分析する仕組みをつくっています」と堀田氏は説明する。
ただ、用途や環境などがバラバラの状態で最初から完璧なプラットフォームを構築すると逆にうまくいかなくなるケースも多い。推進のポイントとして堀田氏は「一つのプラットフォームで全て問題を解決しようとしないこと」「スケーラブルなインフラでスモールスタートすること」などを挙げた。
さらに、堀田氏はビジネスを支えるプラットフォームとしてPowerFlexを紹介した。「PowerFlexのユニークな点は、ストレージとコンピューティングを組み合わせて使い分けられるところです。コンピューティングとストレージ、ハイパーコンバージドを物理で分けて使うなど、柔軟に組み合わせて使えます」
「製造業においてデータ活用を進める中で特に重要なことは、まずは一歩を踏み出してみるということだと考えます。ぜひ、フレキシブルな基盤によってスモールスタートで始めてみてください」(堀田氏)
本セミナーの講演は以下のWebサイトでオンデマンド視聴できるので、興味があればぜひ確認してほしい。
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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年9月16日