組み込み開発はどうすればクラウドネイティブを取り込めるのか製造業DX

組み込み開発エンジニアにとって、Webアプリケーション開発で活用されているクラウドネイティブは畑違いとも言えるものだった。しかし、デジタル技術の進化とハードウェアの性能向上によって状況は変わりつつある。レッドハットとマクニカの担当者に、組み込み開発はどうすればクラウドネイティブを取り込めるのかについて語ってもらった。

» 2023年05月22日 10時00分 公開
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 これまで、製造業を中心とする組み込み開発とWebアプリケーションやITシステムの開発は、同じソフトウェア開発でも全く畑が異なると言っていい状況にあった。しかし近年は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったデジタル技術の登場にハードウェアの性能向上も相まって、Kubernetesなどのコンテナ技術に代表されるクラウドネイティブを組み込み開発に取り込む動きが出てきている。

 このトレンドはどこまで本格化するだろうか。レッドハット テクニカルセールス本部 クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部 スペシャリスト ソリューションアーキテクト Edge Strategy Tech Leadの小野佑大氏と、マクニカ クラビスカンパニー 第1技術統括部 技術第3部 部長代理の野本裕輔氏に語り合ってもらった。

AIに先行して取り組む企業はクラウドネイティブの重要性に気付いている

レッドハットの小野佑大氏 レッドハット テクニカルセールス本部 クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部 スペシャリスト ソリューションアーキテクト Edge Strategy Tech Leadの小野佑大氏

小野氏 製造業におけるクラウドネイティブの取り組みはまだこれからだとは思いますが、グローバルでは事例が増えてきているという印象です。モノづくりの現場であればMES(製造実行システム)のモダナイゼーションから発展して、組み込み開発と関わる制御のレイヤーを含めて柔軟にするためにクラウドネイティブに取り組んでいます。

 そもそもクラウドネイティブの本質は、アプリケーションを素早くリリースして多様化する顧客ニーズに柔軟に応えるためのベストプラクティスにあります。組み込み開発ではハードウェアの性能による制約が多いのですが、顧客のニーズにできるだけ素早く応えたいという思いもあって現在のトレンドが生まれてきているのではないでしょうか。

野本氏 組み込み開発でクラウドネイティブがあまり広まっていないことについて私も同意見です。マイコンを使うのが一般的な組み込み開発でクラウドネイティブに取り組んでいる方はまだ多くはないのが現状でしょう。

 ただし、AIなどの要素が入ってくるとシステムが大規模かつ複雑になり、定期的にファームウェアをアップデートする必要も出てきます。こうなってくると、組み込みソフトウェアを1個のアプリケーションとして開発するのではなく、機能を分割するマイクロサービス化によって必要なパーツだけをアップデートするという手法にメリットが出てきます。AIに先行して取り組んでいる企業はこの重要性に気付いています。

ソフトウェア中心のビジネスモデルにクラウドネイティブは最適

小野氏 実際にクラウドネイティブに取り組んでいる事例としては、産業機器関連メーカーが目立ちますね。大手企業が多いドイツの他、国内ではオムロンさまがレッドハットのソリューションを活用する取り組みを発表しています。また、北米は医療機器や防衛関連の企業が取り組みを進めています。小売り向けのPOSシステムのモダナイゼーションや電力プラント、宇宙開発関連などの事例も出ています。

マクニカの野本裕輔氏 マクニカ クラビスカンパニー 第1技術統括部 技術第3部 部長代理の野本裕輔氏

野本氏 組み込み機器でも、PoC(概念実証)におけるソフトウェア開発ではクラウドネイティブ的な手法が取り入れられつつあります。「Raspberry Pi」やNVIDIAの「Jetson」などの小型コンピュータボードを活用して新機能の追加を試行錯誤しているようです。当社のお客さまでも、IVA(インテリジェントビデオ分析)やリテール向けのAI関連ソフトウェアの開発で取り込みが始まっています。今後社会実装が進むロボットをはじめ関心は高く、問い合わせも多く頂いています。

小野氏 ハードウェア中心でなくソフトウェア中心のビジネスモデルを指向したい場合に、クラウドネイティブが最適です。ソフトウェア中心のビジネスモデルを指向する場合、アプリケーションの更新頻度が高まっても業務やサービスへ影響を与えない仕組みが重要になります。その解決策にソフトウェアを疎結合に分割して実装するマイクロサービスがありますが、組み込み機器のハードウェア性能が向上する中で、マイクロサービスの実装もやりやすくなっています。レッドハットが開発している軽量Kubernetesの「MicroShift」のエンタープライズサポートを提供する「Red Hat Device Edge」なども活用できるでしょう。

野本氏 定期的なアップデートが必要なAIモデルを活用するシステムではクラウドネイティブが最適です。小売り分野では店舗ごとにAIをファインチューニングする必要がありますが、これを自動化することも可能です。

「Jetson」はクラウドネイティブを試すのに最適

小野氏 ハードルが高いイメージのあるクラウドネイティブですが、少しずつ歩みを進めてメリットを共有していくことが重要です。CNCF(Cloud Native Computing Foundation)が公開している「Cloud Native Trail Map」が参考になるでしょう。まずはどんな形でもいいのでコンテナを体験してみるのがいいと思います。

野本氏 エッジAIボードとして知られるJetsonはコンテナを試すのに最適です。NVIDIAが無償提供しているソフトウェアやライブラリは「NVIDIA NGC」で入手できるので、そこでコンテナの使い勝手を体験してみるのがいいのではないでしょうか。

小野氏 レッドハットもエッジデバイスでクラウドネイティブを試すための教育コンテンツを拡充しており、Kubernetesのメリットを体験できる勉強会も開催しています。有償にはなりますがコンサルティングも行っているのでぜひ活用してほしいですね。また、2023年5月23日(現地時間)から米国のボストンで開催される「Red Hat Summit 2023」でもエッジコンピューティングに関するお客さまの事例や最新のアップデートが予定されていますので、ぜひご参加ください。

野本氏 最新のJetsonである「Jetson Orin」の開発者キットとレッドハットのコンテンツを併せて評価できる環境の実現を目指しています。「画像認識 AI Expo 2023」(2023年6月14〜16日、幕張メッセ)では両社で協力して、クラウドネイティブでエッジAIを活用する展示を披露する予定です。またエッジAIだけでなく、最新の「NVIDIA DGX システム」やAI本番稼働のためのエンドツーエンドオープンプラットフォームとなる「NVIDIA AI Enterprise」も併せてご紹介予定ですのでぜひご来場いただければと思います。

レッドハットの小野佑大氏(左)とマクニカの野本裕輔氏(右) レッドハットの小野佑大氏(左)とマクニカの野本裕輔氏(右)[クリックで拡大]

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年6月21日